コスト競争に勝てるものづくり企業が発展するため
品質、生産性向上など現場のあらゆるニーズを支援

大阪に本社を持ち、製造に特化した人材派遣・アウトソーシングを行っているフジアルテ。コンプライアンス経営を基本方針に掲げ、外国人やシニアや女性など、幅広い人材活用を行っている。また教育研修制度やキャリア形成支援のための人事制度など、人づくりの仕組み構築や、製造現場での品質や生産性向上など、幅広いものづくりのサポートも行っているのが特徴だ。顧客からもスタッフからも信頼・満足度の高い同社が、大事にしている経営理念や戦略に迫る。

30年前からグローバル人材の活用に着手

まず御社の事業概要について教えてください。

弊社は、製造業に特化した総合人材サービスを提供しています。特に請負契約の製造アウトソーシングに強みがあり、派遣契約でもリーダーや管理者が常駐するチーム派遣で、請負ノウハウを生かした生産マネジメントまで行うことがあります。

またブラジル現地法人を持ち、30年以上前から少子高齢化を見越して外国人材の雇用を始め、現在では日系ブラジル人だけではなく、アジア人材のベトナム人などグローバル人材の活用に力を入れています。さらに障がい者雇用の特例子会社フジアルテスタッフサポートセンターと本社では、多くの障がい者を雇用しています。障がい者のなかには、社労士資格を取得した方、システム開発ができるようになった方、国体で金メダルを取った方も。障がい者の方の個性や特徴を引き出し、多様な人材が活躍していただけるようサポートしています。

改正出入国管理法の施行もあり、外国人の活用に注目が集まっていますが、企業のニーズの変化はいかがでしょう。

世の中には「安価な労働力として外国人を活用したい」と考える企業は少なくありません。しかし弊社は、真面目で勤労意欲も高いグローバル人材が活躍することが、企業の活性化や生産性向上につながると考え、人材育成を通じて高付加価値サービスを提供してきました。外国人スタッフの待遇面においても日本人と同等か、実績と評価により待遇向上やキャリアアップすることを重視しているため、当社への評判も高まり、リピートや口コミで人が集まる。それが優秀な人材の確保と活躍、そして企業の活性化の好循環になっています。

実例として、あるクライアントでは、過疎化が進む地域で若年層の人材の確保に大きな課題がありました。そこで、外国人材の活用を提案し本格的に導入を決定され、計画的に安定した人材の確保とキャリアアップで管理監督者を育成し、アウトソーシング化を図ることができました。その結果、日本国内での設備投資拡大を図り、技術力と品質や生産性で、海外のコスト競争力に勝てるものづくり企業の成長に貢献できました。

さらに、そのクライアントのある地域の自治体は、この実績を踏まえ少子化・過疎化対策として積極的に外国人を受け入れる多文化共生プランを立てました。多くの自治体では高齢化による人口減少が続いていますが、そこでは人口増加と、若年層が増えさらに税収も増えるなど、地方創生で地域社会の活性化にも貢献できました。

品質や生産性向上などの課題も解決

「グローバルソリューションNo.1」企業を目指すと掲げています。詳しくお聞かせください。

弊社のクライアントには、世界トップクラスの製品を供給しグローバル展開をされている企業が多くあります。私たちがお客様のグローバル競争力強化のために、人や生産に関する問題点を解決するグローバルソリューションNo.1企業を目指しています。クライアントの人事戦略や生産革新活動さらに海外進出など、パートナーとして関わらせていただく機会もあります。

弊社には「ものづくり推進部」があり、ものづくり力強化のための改善ノウハウや成功事例があります。スタッフの早期育成のための作業標準書作成や、リーダーを配置したOJT教育体制、スキル評価表で能力の見える化と多能工化、資格取得支援やキャリアパス制度によるキャリア形成支援なども積極的に行っています。また、品質や生産性向上のために、ものづくりのプロ集団が、現状把握から要因分析を行い対策の立案、QCサークル活動(※)で改善計画をチームで問題解決に取り組み成果を出しています。クライアントの改善発表会で、チームリーダーが改善発表を行い、表彰されたことはこれまで多数あります。

また、クライアントの海外進出時に、弊社チームリーダーがサポートすることもあります。人材を派遣するだけでなく、顧客ニーズや目標を共有し潜在的な課題も発見し、PDCAサイクルで生産マネジメントを行い問題解決に取り組んできたことを、評価いただけていると感じます。その結果、主要取引先とは長年に渡り、継続してお取引をいただいております。

※小グループで自発的に行う品質管理活動

そのほか、顧客と接する上で大事にしていることは何でしょう。

コンプライアンスです。かつては製造派遣・請負業界では、法令順守や倫理観の欠如から、偽装請負や派遣切りなど大きく社会問題化しました。弊社では、その問題が起こる以前から「法務室」を設置し、法令順守のために社員教育を継続して行いコンプライアンス体制を構築、さらにクライアント向けのコンプライアンスセミナーも毎年開催しており、最近では、同一労働同一賃金の法改正の情報と対応策をいち早く提供することで好評を得ています。私自身も現在「一般社団法人 日本生産技能労務協会」の理事長を務め、コンプライアンスやCSR活動など、業界の健全化や社会的地位向上に強い使命感を持って取り組んでいます。

フィロソフィとアメーバ経営が戦略

創業の精神「現場第一主義で働く人とお客様を大切にする~人材には活躍の場を企業には優れた技術力を提供する~」についても教えてください。

弊社は1962年に私の父が創業し、個人事業からスタートし2020年に創業58年目を迎えました。創業当時は鉄工請負業として高い技術力を誇り、造船、鉄工から自動車産業に人材と技術を提供、日本の高度経済成長と共に成長し、その後、エレクトロニクス産業へと展開を図り、現場第一主義で働く人とお客様を大切にしてきました。私が1995年に二代目社長として事業を継承してからは、営業拠点の拡大や海外法人の設立、新規事業やM&Aなどを行う際は、この創業の精神と新たに制定した経営理念を大切に、人材には活躍の場を企業には優れた技術力を提供することに取り組んできました。

派遣・請負事業を行う上で、どのような戦略を取っているのでしょう。

京セラ創業者稲盛和夫氏が主催する「盛和塾」の塾生になり、フィロソフィとアメーバ経営の両輪で経営することを学びました。

全社員には、経営理念を実践するための行動指針をまとめた「フィロソフィ手帳」を配布し、毎朝朝礼で輪読。階層別フィロソフィ研修や月一回の部門毎の勉強会での共有など。外国籍社員に対しても、フィロソフィを翻訳したテキストを配布し、全社員で考え方や価値観を共有し実践するように努めています。

また、アメーバ経営を導入してからは、全員参加の経営で経営者意識を持った人材の育成に大きな効果がありました。営業スタイルにも変化がありました。導入前は個人単位で営業活動していたのが、営業拠点長や新規営業担当、既存営業フォロー担当、現場常駐の管理者、採用コーディネーター、ものづくり推進などチームで一体感を持って連携し、顧客の課題に対して、戦略を立て計画的に提案に取り組んでいます。

また、派遣スタッフでも、正社員として活躍することを目指すためのキャリアパス人事制度も導入した結果、正社員を目指す人が増えました。実際、社員の3割以上が派遣スタッフ出身。国籍も関係なく、公平に活躍できるようなキャリアパスを提示しています。お客様の経営ビジョン実現と弊社の経営ビジョンそして個人のキャリアビジョンが連動した人事戦略で、共に成長できることを意識しています。

コスト競争に負けない体制づくりを支援

御社は国内三社、ブラジルに一社、関連会社があります。グループ間でどのようなシナジーがありますか。

2010年から三社、中小の派遣会社をM&Aでグループ化しました。まずは就業規則や規定整備やマネジメントの仕組みを作り組織体制を構築、その後に経営理念とフィロソフィを浸透させていき、価値観や考えの共有を図りました。アメーバ経営も導入し、ガラス張りの経営で会社の業績公開もすることで健全な経営、人事評価制度も導入し、利益は全社員を公平に評価し分配。これまで創業から50年以上培ってきた経営や事業ノウハウを早期に取り入れることで、グループ入りした会社と共に成長や喜びを分かち合うことができました。

グループのシナジーとして、企業の持っているノウハウから、私たちが学ぶこともたくさんありました。また、これまで営業をしてもお取引に至らなかった企業とすでに口座があることや、営業拠点の展開も経営統合によって実現しました。

今後、派遣市場はどう変化していくと思われますか。また、どのように対策していくのか教えてください。

この先、企業のグローバル化とデジタル化は加速していくでしょう。国際的な政治リスクや経済変動もある中で外部環境の変化に対応し、いかに技術力を高めIoTやAIを有効に活用していくのか、海外とのコスト競争に勝てるかが大きな課題です。また少子高齢化で生産人口が減少し、多様な人材を活用するダイバーシティが推進され、女性や高齢者や外国人の受け入れが拡大していきます。それに伴った人材活用の対応と生産性向上が重要となります。そのためには、未来につながる先進事例を創り出し付加価値を高めるための提案をしていくべきですが、まだ制度や活用が不十分です。

かつて製造現場では殆どが男性職場で若い方が中心でしたが、弊社では現状の人材不足から労働市場や雇用マーケットデータに基づき、新たに女性やシニアや外国人材の提案をし、環境整備や教育やフォローを行いました。女性が活躍できるよう、女性更衣室やロッカーの設置や作業環境の整備など提案し一緒に取り組んだことで、男性だけの職場から女性比率が五割に増えた事例もありました。また、外国人が働きやすい環境を整備するために、作業標準書などの翻訳や通訳者を配置し、言葉の問題を解消し教育も行い、安心して働ける職場環境を構築しています。

これからも事業を通じて多様な人材に活躍の場を提供し、企業には高付加価値サービスを提供することで、世界の人々が豊かに生活できる社会創りに貢献して参ります。