医療現場で需要拡大中の職業
――まず御社の医療関連受託事業の特徴を教えてください。
玉井 当社は、全国1400以上の医療機関で医事関連業務や、病院経営支援事業務を、業務委託および人材派遣によって行っています。現在、特に注力しているのは、医師事務作業補助と看護助手の派遣業務です。医師事務作業補助の業務内容はカルテの代行入力、診断書の作成、学会の資料作りなどで医療の専門知識や用語をある程度理解している必要があるため、キャリアセンターに模擬クリニックを設け、未経験者~稼働中の経験者まで医師事務作業補助者向けのトレーニングを行っています。私は社員たちに「当社にとって最も重要なことはが3つある。ひとつ教育、ふたつ教育、みっつ教育」と言っています。それくらい弊社は社員教育に力を入れており、トレーニング(教育)を一つの事業戦略として活用しています。また、もうひとつの特徴として、派遣社員をすべて無期雇用としていることが挙げられます。
――医師事務作業補助者や派遣看護助手に注力しているのは、市場のニーズが大きいからでしょうか?
玉井 そうです。2008年の診療報酬改定で、医師事務作業補助体制加算が新設されてから、毎年需要が拡大してきました。そして2020年度の診療報酬改定の大きなテーマは医師の働き方改革でした。医師の仕事は診療以外に、事務的な仕事もたくさんあります。医師の負担を減らすために、医師事務作業補助者の活用が推進され、さらに需要が拡大したのです。
――全ての派遣社員が無期雇用なのも、珍しいと感じます。
玉井 2015年の労働者派遣法の改正で、無期雇用の派遣社員の期間制限が廃止されました。弊社は派遣より、業務委託の方が事業規模は大きいので、無期雇用の業務委託の社員を派遣に回すことで、派遣ビジネスが急成長しております。2009年からの民主党政権時代、派遣の規制強化によって売り上げが減った時期もありましたが派遣法改正が追い風になって再び成長しております。
――新型コロナによる派遣事業への影響はありますか?
玉井 売上が大きく減少しているということはありません。弊社の派遣先である医療機関は、コロナ禍であっても通常業務をしなければいけないので、大きな影響が出ていないのだと思います。実は、恐怖感から退職者が増えるかと予想もしましたが、実際には医療従事者としての使命感からか、離職者も非常に少ないです。逆に、求職者数は増えています。
2日間かかっていた作業がほぼゼロに
――それでは、PORTERSの導入の経緯についてお聞かせください。
野口 派遣事業を拡大させるために、派遣の契約の可視化が必要でした。以前はExcelで作成した契約書をプリントアウトし、支社で保管していました。どの病院に何名を派遣しているか、契約期間はいつまでか、などを知りたいとき、その都度アナログで確認していたのです。派遣社員の人数が少なければ、その方法でも問題が無かったのですが、支社の社員数が急拡大したため、全国の派遣契約を推進するために基幹システムを導入することにしました。
――PORTERSを選んだのはどういった理由なのでしょう?
野口 数社のベンダーと比較したのですが、PORTERSを選んだ理由は大きく3つあります。一つ目はカスタマイズ可能なこと。弊社の派遣ビジネスは、契約形態や給与の支払いなどが複雑です。そこに合わせて改修するにしても、コストを抑えたい。その点、PORTERSはカスタマイズ性の高さが魅力でした。二つ目は、フロントシステムとしての機能がずば抜けて高いこと。業務委託から派遣に注力していく上で、ここは重要でした。三つ目は、ポーターズ社の営業担当者のレスポンスが早いことです。
――導入後は実際の事業所の業務にはどのような効果がありましたか?
本田 契約情報をシステムに集約したことで、検索がしやすくなりました。契約更新の際など、該当の契約書を探す手間がなくなったのです。また更新のたびに契約書も新たに作成し、製本、押印、郵送などしていたのが、PORTERS上で契約書の日付のみ変更し、ユーザーや社員へメール送付することで完結するように。非常に効率的になりました。
――月末月初処理などの作業は効率化されましたか?
本田 PORTERSの導入に合わせて勤怠管理もDIGIsheet*に変更しました。PORTERSと連携したことで、給与計算が非常にスムーズになりました。これまでは月末に、派遣スタッフたちの紙のタイムシートを担当者が電卓で確認し、所定のフォーマットに手入力していました。その作業を2名で、翌月3日までに終えなければいけなかったのです。現在は、PORTERSで管理している契約単価と、DIGIsheetで管理している稼働時間を連携させ、給与データをインポートして、確認するだけで済んでいます。2人で2日間かかっていた作業が、ほぼゼロになりました。
*Digisheet:株式会社アスペックス社のWEB勤怠システム
導入時の苦労を減らすサポート体制
――導入時に苦労はありましたか?
野口 私を含めて、システムのカスタムをしたことがある者はいませんでした。そのため月に2~3回、ポーターズ社の営業担当者に質問し、レクチャーを受けました。具体的には、PORTERSとDIGIsheetのデータ連携の方法や、効率化を実現した他社の実例など。無料でここまで対応してもらうのは申し訳ない、というくらいたくさん質問させてもらいました(笑)。おかげ様で苦労を最小限にすることができました。
――今後はどのようにして、PORTERSをより浸透させていこうと考えていますか?
野口 全国の支社にも活用してもらおうとPORTERSの運用方法の説明を、2時間かけて行いました。またグループチャットを作成し、来た質問に随時回答しています。今後は運用マニュアルを作成するなどして、より浸透させていきたいと考えています。
――ありがとうございました。最後に御社の今後の展望についてお聞かせください。
玉井 弊社は、社員がアカウンタブルであり、主体的であること。自ら考え、学び、行動するが徹底されています。ICT活用についても積極的で、かつ社員の特性をプラスすることで持続的なイノベーション創出を目指しています。
2020年4月にBPR(業務プロセス全体の最適化)で、全国各支社に配置していた事務社員の多くを本社に集約し、支社の事務ゼロ化を推進しています。また、主な派遣先である病院での業務に、いかにICTを導入して活用するか、プロジェクトを立ち上げました。今後は勤怠システムを全面的に改修するなどして、人+ICTによるビジネスモデルの確立を進めていきます。同時に介護分野でもシステム化を進め、より事業拡大を目指していきます。
株式会社ソラスト
株式会社ソラスト
東京都港区港南1-7-18 A-PLACE品川東6F
TEL : 03-3450-2610(代表)
1965年、日本初の医療事務教育機関として創業。医療機関の受付・会計など医事業務全般の受託から、介護、保育分野へと事業範囲を拡大し、全国で27,000人以上の社員(約90%が女性)が医療事務、介護、保育の仕事に携わっている。
取材日2020年10月7日
※掲載内容(所属、役職名等)は取材時のものです