あらゆる企業に欠かせない、会計や人事労務などのバックオフィス業務。業務効率化を目指して、様々なクラウドシステムの導入を進める企業も増えている。その一方で、導入前に全体を見通した要件定義が出来ておらず、部分部分で個別機能型システムを導入してしまい、それぞれの連携がうまく行かず結果的に業務が煩雑化してしまう…などの課題を抱える企業も少なくない。
統合型クラウドERPの提供を通じ、企業のバックオフィスが抱える課題解決を支援しているfreee。人材業界の成長企業に共通するバックオフィスのあり方を、同社はどのように考えているのだろう。

人材ビジネスとシステムの高い親和性

最初に御社の事業について教えてください。

弊社は統合型クラウドERPの開発・提供をしている会社です。会計freee(財務会計・管理会計・ワークフロー)からスタートして、人事労務freee(人事・勤怠・給与・労務)、プロジェクト管理freee(プロジェクト別収支管理・工数管理)や福利厚生freee(社宅制度の導入・管理)などをご提供しています。

従来は様々なシステム・EXCEL・紙に分散していた業務を、弊社の統合型クラウドERPでは網羅的にカバーしており、バックオフィス業務を一気通貫で対応することが可能です。その特性を活かして、これまで多くの企業様のバックオフィス業務の生産性向上を支援してきました。

新型コロナウイルスによって、リモートワークを余儀なくされた企業も増えました。管理部門の業務や働き方は変化していますか?

今回のコロナ禍で、オンプレミス(自社運用)システムの利用や紙・EXCELでの業務運用が、テレワークの障壁になるということを認識された会社も多くありました。特にバックオフィスの社員の方は影響が大きく、出社をしないとそもそも業務が出来ず、結果的に全社で一番出社をしていた…などの声も伺います。

電子帳簿保存法の改正もあり、クラウド化やペーパーレス化に注目が集まっていましたが、コロナウイルスの影響を受けて一気に加速したように思います。「脱はんこ」などの動きもこの間に一気に増えましたよね。これを機にクラウド化を実現して生産性を向上していきたいと考える企業様からのご相談も弊社にも入ってきています。

弊社でも3月1日から全社員が在宅勤務になりましたが、会計freeeや人事労務freeを社内でも活用しており、周辺システムのクラウド化が出来ていたため、月次決算や監査対応までほぼテレワークのみで対応できたと聞いています。

近年は人材業界で、御社システムの導入が進んでいるとのこと。その理由をどう見ていますか?

人材業界はマーケットの変革スピードの早さが特徴です。近年も働き方改革法案の施行や、同一労働同一賃金に向けた動きがありましたよね。またクラウドソーシングなどITテクノロジーを活用したサービスが拡大し、"ジョブ型雇用"が浸透してきたことでフリーランスや副業などの人材活用も広がり、社員エンゲージメント向上を支援するサービスなども好調です。人材業界発の新たなサービスが多く誕生し、業界全体が多角化してきました。

弊社のサービスは、新規事業に積極的だったり、今までの事業構成比率を見直していきたいとお考えだったり…経営戦略・事業戦略の転換期にいらっしゃる企業様に評価いただくことが多いんです。また複数事業・複数拠点がある企業様との親和性もが高く、まさに人材業界が該当します。弊社システムで解決できる課題が、人材業界の経理・人事労務などの皆さんが抱える業務課題と一致する部分も多く、導入社数の拡大に繋がっているのではと思います。

コロナ禍で重要性を増すバックオフィスのあり方

人材業界のバックオフィスが抱える課題とは、具体的にどのようなことでしょう?

『生産性の向上』と『戦略的な業務に時間を割ける体制の構築』が中々進んでこなかったことが挙げられます。

今まで、派遣・紹介を中心とした人材業界の企業は、売上実績や派遣の稼働率・単価など、営業数字のみで経営分析や意思決定を行うことが主でした。そんな中で、昨今のコロナウイルスの影響を受けた事業戦略の見直しや、中長期的なマーケティングなどの募集戦略の見直しなど、これからはマーケット変化に対応するべく、より多角的な観点での経営判断をスピーディに行う必要があります。そうするとバックオフィスとしても、財務会計・管理会計・人事情報などのデータを収集・分析し、経営層に報告することが求められます。そのスピードもよくある翌月中旬以降などの月次単位から週次単位などに転換し、更にはリアルタイムなレポート共有も重要になっていくでしょう。

その一方で人材業界の経理業務のうち72%がルーティンワークだと言われています。事業成長や組織拡大に比例して、そもそものルーティンワークにかかる工数が足りなくなってしまい、経理人員を増やしてきた…などのお話もよくよく伺います。そうすると固定費になる人件費も増える一方ですので、経営者の方からも優秀なバックオフィス社員の方にもっと戦略的な業務に関わってほしいとの要望をいただきます。 これから人材業界のバックオフィスとしては、ルーティンワークに掛かる工数を出来る限り削減しつつ、その分の工数を、経営層の意思決定のスピードアップを支援するための戦略的な業務…例えば経営分析や予実管理などに転換していくことが重要だと思います。

人材業界のバックオフィスの多くで、戦略的な業務に時間を割けないのには、何か原因があるのでしょうか?

ボトルネックになってくるのが、業務フローの分断です。人材業界のバックオフィスでは、財務会計や管理会計、給与計算、人事労務、販売管理などのシステムが異なり、業務が煩雑化していることも少なくありません。それぞれのシステム上のデータが連携しておらず、Excelや手入力で連携させることも多くあります。すると、その都度人の手を介することになるのでミスも起きやすくなります。また、色々なところにデータが散らばっているので、経営層へのレポートを作成するにも、データを集めて、またEXCELなどで作業する必要があります。
つまり業務が個別に分断していることで工数が肥大化し、決算を締めるにも時間が掛かってしまい、多角的なデータの収集・分析を行う障壁にもなっています。
まずは全体最適な業務フロー整備することで生産性を向上し、月次決算の早期化などスピーディに財務会計・管理会計データを確認できる体制を構築して、多角的なデータの収集・分析に繫げていくことが重要です。

人材会社がfreeeを導入するメリット

一般的な会計システムとfreeeは、大きくどのような違いがあるのでしょう。

弊社の統合型クラウドERPでは、財務会計・管理会計・勤怠・給与計算・人事労務などのバックオフィスのコア業務が一気通貫で行えるため、「抜本的に生産性を向上することができた」「さまざまな業務がfreeeで完結するので、経営データをリアルタイムに確認出来るようになった」と多くの企業様から評価いただいています。

一例を挙げると、会計システムの振替伝票では、仕訳を借方と貸方に入力するのが一般的です。例えば顧客に請求書を送付すると、そのデータをもとに会計システムでは借方に「売掛金」、貸方に「売上高」として入力しますよね。それとは別に売掛台帳をEXCELなどで作成して、「いつ」「どの取引先から」「金額がいくら」入金されるか管理する必要があります。そしてインターネットバンキングなどで入金明細を確認すると、一件一件目視で突合をして、売掛台帳の消込を行います。更に会計システム上では借方に「現金」、貸方に「売掛金」として入力します。人材業界では取引先も多いため、この請求金額確定後の業務も非常に煩雑になりやすいです。

それがfreeeの場合ですと、WEB請求書を発行すると、自動的に仕訳が計上され、売掛台帳(入金管理レポート)も自動作成されます。そしてインターネットバンキングの入出金明細をリアルタイムに取り込み、入金管理レポートと自動的に突合もしてます。消込・仕訳計上もまとめて対応出来るため、目視で一件一件の入金明細を確認する必要ありません。

先ほど管理会計の重要性についてのお話も出ましたが、freeeではどのような効果があるのでしょうか?

主に二つあります。一つ目は、経営層が見たい数字を”楽に”見られる体制を構築すること。一般的に、各経理担当者が月次決算を締めた後に、経理や経営企画の方が、事業別・事業所別などその会社が見たいセグメント別のPLをEXCELで作成して、経営層にレポートしています。freeeでは、業務の過程でさまざまな経営レポートを、ボタンをクリックするだけで確認できます。また、事業別・事業所別など、人材業界でよくご希望いただくセグメント分析も得意としています。そのためEXCEL加工を行わなくても、事業別・事業所別などの損益や予実・資金繰りのシミュレーションなどを、リアルタイムで確認できます。またfreeeは権限も柔軟に付与することができるため、経営層にレポートの閲覧権限だけ付与することで、PCやスマートフォンからすぐにデータを確認いただけます。

二つ目は、原因分析などを行う際のデータの確認作業の効率化です。月次決算を締めた後、あるいは経営会議の場でデータを見ながら違和感を持った際には、経理が一度持ち帰って、そのデータの元になる仕訳や証憑・経緯を確認することがもあります。そうすると、せっかくレポートを出しても、意思決定できるのは確認後、翌週の経営会議……ということもお伺いし多く聞きます。それがfreeeでは、クラウド上から1つの画面から、レポート⇒仕訳⇒請求書・領収書などの証憑⇒支払依頼や経費精算ワークフロー内容と申請・承認の履歴⇒事前稟議の内容と申請・承認の履歴を、その場でリアルタイムに確認できます。

他社の販売管理システムなどとの提携も可能ですか?

はい。freeeではオープンプラットフォームという思想を持っており、APIを無償で公開しています。会計・人事労務システムでAPIを無償で一般公開しているのは珍しいようで、その点をご評価いただくこともあります。
例えば販売管理システムでは、salesforceやkintoneなどとも様々なAPI連携をご提供しています。販売管理システムの売上データをfreeeに自動連携し、WEB請求書発行や債権管理・消込、そして仕訳計上を行うこともできます。freeeの試算表データを販売管理システムに返すことで、会計データと非会計データを合わせた分析に活用される企業様もいらっしゃいます。

そのほかにもたくさんのメリットがありそうです。

会計freeeの中でもワークフロー機能を拡充していたり、人事労務freee・プロジェクト管理freeeなどもご提供しています。会計freeeとワークフローを同じシステムのインターフェースで対応できる点もご評価いただくことが多いですね。人材業界では営業経費も多いと思いますが、領収書をOCRで読み込み、その証憑データを添付して、経費精算のワークフローで申請・承認できます。そのままシームレスに仕訳計上をして、給与振り込みと一緒に支払いまで行えます。

また人事労務freeeについても導入が進んでいます。例えば人事関連システムの多くは、勤怠・給与計算・労務と同シリーズであっても、インターフェースやマスタが分かれています。人事労務freeeでは人事マスタを統合し、勤怠・給与・労務・年末調整などの業務を一気通貫で行うことも可能です。

ワークフローや人事労務freeeなどは従業員の方もご利用いただくことが多いですが、弊社システムはUI/UXにも非常にこだわっており、スマートフォン対応も充実しているため、従業員の方から「分かりやすく使いやすい」との声を多くいただきます。

実際にfreeeを導入されて、成果につながった事例を教えてください。

ある上場企業様は、freee導入のタイミングで業務の見直しを行ったところ、業務時間が月70時間も短縮されたそうです。またこのコロナウイルス以降の月次決算や監査対応も、全てテレワークにて対応されたと伺っています。監査対応の度に紙を出して確認する作業もなくなった、という評価もいただいています。

別の企業様からは、販売管理システムとfreeeをAPIで自動連携させることで、債権管理~消込にかかる時間が9割も削減できたとのお声も頂戴しています。

また、ある人材業界の企業様では、月次決算の大幅な早期化を実現されました。その企業様は元々、月ごとの試算表を出すのに3~4週間かかっていました。経営陣からの「90%の確度でいいから早く数値を出してほしい」という要望があり、最初は手入力で作業されていたのですが、どうしてもヒューマンエラーも起きてしまいます。そこでfreeeを導入されたところ、手入力やEXCELでの作業が大幅に削減できたことでヒューマンエラーもなくなり、月が明けて第5営業日までに提出できるようになったと伺っています。

ありがとうございました。最後にバックオフィス業務を見直したいと考えている人材ビジネス企業に、メッセージをお願いします。

今後の事業成長のためにシステム導入を検討している企業様も、個別でバラバラとシステムを導入することで逆に手間が増えてしまったり、大規模なEPRを導入するにも費用対効果に見合わなかったりすることも多くあるかと思います。。freeeは導入もしやすく、会社の組織拡大に合わせて、柔軟に拡張できることが強みです。実は2020年上半期にマザーズに上場承認された企業のうち、32.1%が弊社システムを利用してくださっています。そして人材業界の企業様からも、有難いことに沢山の御引き合いをいただいております。

アイデアやパッションやスキルがあればだれでも、ビジネスを強くスマートに育てられる。弊社はそんなプラットフォームの実現を目指して、企業のバックオフィス改革を支援し続けていきます。