トランスフォーメーションがチャンスを呼ぶ。市場に合わせて意識・仕組みをいかに変えるか

エンジニア派遣を中心に、高度成長期から日本のモノづくり現場を支えてきた株式会社メイテック。新型コロナをはじめとした社会の変化や、技術革新が進む中、どのような戦略・方針を掲げているのか。また技術力をいかにアウトプットし、クライアントへのサービス価値に昇華させているのか。同社の國分社長に聞いた。

幅広い技術領域に対応できるエンジニアのプロ集団

まず御社のビジネス概要を教えてください。

メイテックは1974年に創業しました。クライアント企業の設計開発において、ハードウェアからソフトウェアまで、技術ソリューションサービスを提供しています。1970~1980年代、開発現場に部外者が入るのが希少だった時代から、メイテックエンジニアはクライアント先の社員と同様に、外部の部品メーカーとの打ち合わせなどもしてきました。2000年代、アウトソーシングの活用が企業の戦略のひとつとなってからは、開発プロジェクトのリーダーやマネジメントなどの重要なポジションを任されることも増えてきました。日本の製品・サービスの開発現場のほとんどに、弊社エンジニアが関わってきた、といっても過言ではないと思います。

掲げている「Engineering Firm at The Core」について、詳しくお聞かせください。

私たちは何者なのか、改めて定義して、社内外に伝えるために「Engineering Firm at The Core」と掲げています。意図は大きくふたつあります。ひとつは、私たちはプロフェッショナルのエンジニア集団であり、お客様に欠かせない存在として、アウトプットという価値提供ができること。もうひとつは、日本社会において、エンジニアのステータスや認知度を高めるような働き方を提供すること。このふたつを明確にし、邁進しています。

技術力にはどのような強みがあるのでしょうか?

メーカーの技術職は、基本的に配属される部署の仕事に従事し続けます。その製品の部位やユニットについてはスペシャリストです。弊社のエンジニアは、どちらかというとゼネラリスト。 例えば車の開発には、エンジンや駆動系、ソーラー、ボディ、内装などいろいろあります。それぞれの機械要素には共通のものが多く、弊社のエンジニアは技術をシフトさせて、幅広く対応できます。また自動車で培った技術を、医療や工学の分野に応用させられることも強みです。

世の中の変化に合わせて意識と仕組みを変える

世の中が求める技術は、どう変化していると感じますか?

コロナ禍の中で、非接触というの大きな制約が広まっています。打ち合わせもオンラインですし、キャッシュレスもそうです。コロナが収束した後も、非接触は続いていくでしょう。そこに追従していけるよう、さらに技術や経験を積む必要があると考えています。

逆にこういった環境の中では、トランスフォーメーションをすることは大きなチャンスになります。弊社でも、グループの中期経営計画の名称として「The Transformation」を掲げています。世の中の技術革新が激しい状況で、健全に危機意識を持ちながら、社会や市場の動向に合わせて変革していくという、意識と仕組みを変えることが目的です。

仕組みの面ではどのようなことを行っているのでしょう?

営業面では、お客様からオーダーをいただくケースがほとんどです。ただこれからは、待っているだけでは難しいでしょう。お客様の経営方針や技術開発戦略・計画に対して、提案とアウトプットをしていかないといけません。今後5年~10年、技術で日本の産業を支えるには、事業もエンジニアの働き方、思考、行動、業務プロセス、教育などすべての仕組みを見直す必要があると考えています。

モノづくり分野での人材派遣、市場のニーズはどう推移していますか?

2年ほど前から米中貿易摩擦で、クライアントの生産・製造現場に影響が出ています。各企業は生産拠点の移転やサプライチェーンの組み換えなど対応してきましたが、そこにコロナが加わり、消費や物流の低迷で生産性が下がってしまいました。

また非接触が広まり、開発現場に行くことが難しい状況です。テレワークをしようにも、開発業務は機密性が高く、高度なセキュリティが必要なため、環境整備に時間がかかります。それが昨年の4~6月でした。それ以降は環境整備が整い始めましたが、クライアントの業績にも影響はしています。ただ来期に向けての影響は小さくなるでしょう。

またニーズの変化の要因は、SDGsもあります。最たるものはカーボンニュートラル。海外では2030年に販売禁止、日本でも2050年までにゼロにする方針があります。発電、家電、農業機械などどの分野でも、対応していかないと厳しいと思います。

技術力×人間力で求められるアウトプットを可能に

エンジニア育成のために、どのような教育を行っているのでしょうか。

100名近くの現役エンジニアが講師を務め、既存のエンジニアと新入社員に教育を行っています。大事にしているのは、知識をどう応用して業務で役立てるか、ということ。さまざまな技術要素を組み合わせて、この開発にはこういう技術が必要だと、実務に近い研修を行っています。講師のエンジニアには、コーチングや傾聴、プレゼンなどの研修を受けてもらい、現場に戻った後も、身に付いたスキルを実務の場で役立ててもらっています。

新卒者には、ビジネスマナーを徹底的に行っています。技術力だけでなく、人間力もかけあわせることで、お客様にアウトプットできる力を育てています。

派遣事業で設定しているKPIや、顧客満足度を図る指標を教えてください。

営業プロセスとしてのKPIは、提案件数、受注件数などいろいろありますが、すべては「アウトプットをどう高めるか」に帰結します。その実現のため、クライアント様からいただいた対価を、社員にも公開しています。どういう分布か、自分がどこにいるか、などわからないと、課題解決の思考に至らないからです。評価制度も、個人の業績に連動してグレードが上がる仕組みにしています。

顧客満足度の調査は、クライアント様にアンケートを行い、定量・定性で評価いただいています。回答率は100%に近く、ありがたいお言葉をたくさん頂戴しておりますが、楽観的には受け止めないようにしています。

最後に今後の労働市場の推移をどう見ているかお聞かせください。

労働人口の減少は明確で、この先も変わらないでしょう。大事なのは、労働人口が減少する中、エンジニアがどういう役割を担っていくか。技術革新によって、生産や製造現場をはじめ、サービス業など幅広い分野で、自動化やロボティクスが進んでいます。それに伴い、人間の労働力を、クリエイティブな領域にどうシフトするか、考えていく必要があるでしょう。

弊社でも技術力をコアに置き、クリエイティブなニーズに対応することで、高付加価値サービスを提供していきます。