候補者とアナログな信頼構築が
成約につながるリファラルを生み出す

公認会計士・税理士業界に特化し、人材紹介をはじめとした総合人材サービスを提供している株式会社レックスアドバイザーズ。設立以来、売上も組織規模も順調に拡大してきたが、新型コロナウイルス、競合他社の増加、専門人材の獲得など逆風も少なくない。そんな中で同社は、どのような施策や戦略で活路を見出そうとしているのだろうか。

公認会計士・税理士業界の特性とコロナの影響

まず御社のビジネスの概要を教えてください。

岡村 弊社は会計士・税理士業界に特化した人材ビジネスを行っています。監査法人や会計事務所、一般企業の税理財務部門などを対象に、人材紹介のほか人材派遣、求人メディア「アカナビ」など、あらゆるサービスラインを整えているのが特徴です。2002年に会社設立し、2004年に4名で人材ビジネスを開始。現在フロント営業は約60名で売り上げは約13億円に成長しました。

組織拡大に伴い、コンサルタントの採用や、教育はどのように行ってきたのでしょう?

橋本 採用は中途採用がメインでしたが2017年から新卒採用もスタートしました。業界未経験者も多いですが、経験者に負けず劣らず活躍している傾向があります。トップコンサルタントも決して人材業界経験者ではなく、接客販売・サービス・有形商材営業出身者も多い。ジャンル問わずに成功体験を持っている人は早期に順応できていますので、採用ではこのあたりを見極めています。未経験業務でもセルフマネジメントが上手く、PDCAをしっかり回せて且つやり切れる人は軒並み活躍しているよう感じます。また吉岡をはじめ、トップコンサルタント、マネージャーなど管理職に女性が多いのも当社の特徴です。ワークライフバランスなど家庭との両立が可能な労働環境の整備に加えて、専門領域で限られた業界に特化しているからこそ、目の前の業務に細かく丁寧に対する事が必要など、業務的な適性もあるかと思っています。

吉岡 教育ですが、新人に伝えているのは、「顧客の事業計画・成長計画と市場感を踏まえ、案件にメリハリをつけること」です。緊急性を踏まえ、スピード感を持って注力する求人と、中長期的に取り組む求人をいかに見極めるか、新人個々の成長を踏まえ、納得するまで併走しながら育成に努めています。

新型コロナウイルスで、求人にはどのような影響が出ていますか?

吉岡 会計事務所の求人は、繁忙期と閑散期があります。例年は同じような波があるのですが、2020年は繁忙期にもなかなか求人が伸びず、会計事務所も一般企業も求人が減りました。会計・税務業界は比較的不況に強い傾向があるのですが、求人数の減少には、間違いなくコロナが影響しています。ただ2021年になって、会計業界でもニューノーマルな働き方が徐々に実現出来てきたことに伴い、採用活動も盛り返してきています。

人材ビジネスを始めてから現在までの間に、クライアントの数や内訳、構成に変化はありましたか?

橋本 会計・税務業界の市場規模は、約1兆6000億円と言われています。業界トップの税理士法人でも売上は100億~150億円であり、市場におけるシェアは全体の1%にも満たない。市場のほとんどは、約3万社ある中小の会計事務所が占めております。当社としては創業時から業界トップの税理士法人はもちろん、中小の個人会計事務所にリーチしていたのが強みで、新規顧客開拓は継続して意識しており、中小の個人会計事務所数も増え続けています。現在、約3500の会計事務所とお取引をさせていただいております。

また会計事務所からのご紹介で、ベンチャー、IPO準備企業など当社独自の一般企業案件も増えてきました。今後はこういったご紹介による企業案件成約に力を入れていきたいと考えております。

リファラルの強化で専門人材を開拓

専門スキルを持った人材の開拓のために、どのような取り組みを行っているのか教えてください。

吉岡 今年3月に自社WEBサイトをリニューアルしました。コロナ禍の影響もあり、転職動向も変わっていることを踏まえ、ウェブ上でキャリア相談も出来るようなサイト作りを行い、弊社独自の専門人材の集客を行っています。

橋本 もうひとつ、注力しているのがリファラルです。弊社では成約した方に対して、入社2週間、1カ月、3カ月ごとに必ず連絡を取るようにしています。また単なる連絡のみではなく、時には一緒にランチ・会食をするなど、半分オフの状態でコミュニケーションを取ることで、より深くグリップできるようになり、友人を紹介していただけるケースが多くあります。クライアント、候補者とはマッチング時の一過性のやり取りではなく、長くお付き合いする姿勢を大事にしておりますので、当時の候補者が数年後に独立して、今後はクライアントとして、人材紹介サービスの他、人材派遣・アカナビ求人サイトを利用いただく、なんて展開になることも少なくありません。リレーションができているので、ほかに出ていない独自情報をいただけることもあり、サービスの質向上に繋がっていると感じます。世の中の集客トレンドはデジタルマーケティングですが、会計・税務業界は狭い世界なので、アナログな繋がりも大事にしています。

信頼関係を構築するために、面談時にはどのようなことを心掛けているのでしょう?

橋本 当社も株式会社であるからには当然に売上・利益は大事ですが、短期的な売上ばかりに捉われては、機械的な横流しマッチングになりがちです。候補者の印象にも残らずに短期的な繋がりで終わってしまいます。候補者のスキルや経験、希望を把握したうえで、無理やり成約を目指そうとせず、本人にとってどうするのがベストか、アドバイスすることを心掛けています。例えばまだ経験が浅い方には「時期尚早なので、入社が決まったとしても条件はあまり良くない。もう少し経験やスキルを磨いてはどうでしょう?」と、市場価値の高い方には「仕事内容、給与面含めて良い条件なので、この案件は早く決めた方が良いです」と背中を押したり。1年後の転職希望の方もまずはご相談に乗ります。

将来的に独立を希望している方には、「何年後に独立するか?」「事務所はどこに置くか?」「スタッフは何人採用するか?」「独立するのに足りないものは現時点で何か?」「では何をすべきか?」などを一緒に考え、ゴールまでの道のりを設計します。そのうえで転職支援を行うと、実際に独立するまで計画がぶれないことが多く、信頼関係も築けるので、仮に当社で成約できなかったとしても、友人を紹介してくれたり、将来的にクライアントとして戻ってきてくださることがあります。

吉岡 将来的なキャリアプラン設計からライフプラン・教育・自己啓発なども併せて面談でご相談に乗らせて頂く事で、候補者とのつながりが強くなります。

昨今は、皆さん転職に慎重になっており、「まずは相談だけでも乗ってほしい」、と連絡をいただくケースも増えてきています。そのときは、現在の市況や今後の業界の見通しをいくつかの視点で説明し、想定出来るキャリアの選択肢を複数提示したうえで、最終的にはご自分の意志で決めていただく。こういったことを常に心掛けることで確実に信頼関係を構築出来ていっています。

紹介と新たな層の顧客開拓に注力していく

アナログな取り組みに注力している一方、データ活用はどのように行っているのですか?

橋本 これまではExcelベースで数値管理をしており、基本的には管理職のみがメンバーごとの成果を見ていました。昨年から日々のマッチングからKPIまで把握できるシステムを導入し、あらゆるデータを管理して、全メンバーが見られるようになりました。コンサルタントにとっても自身の課題を数字で明確に見えるようになりましたので、データにもとづいて業務改善でき、高い確度で成約につなげられるようになりつつあります。

ありがとうございました。最後に今後のビジネス戦略についてお聞かせください。

岡村 弊社の中期経営計画の売り上げ目標は、来期が15億5000万円、再来年が18億円です。そのために社員も増やしていきますが、クライアントの開拓も必要になります。その為には一般企業の経理財務をはじめとした管理部門求人を更に増やしていきます。現在、クライアントの8割が会計事務所で、一般企業が2割なので、この比率を5:5に近づけていきたい。既存の会計事務所領域は更に深堀して、一般企業割合を増やしていきたいと思っています。

会計事務所の顧問先の多くは中小企業ですが、紹介であれば独占案件として成約しやすいため、顧問先への紹介促進キャンペーンを企画するなどして強化しています。また中小個人会計事務所の開拓は変わらず並行して行いますが、50~100名規模の、いわゆる中堅会計事務所の成約シェアの拡大もテーマの1つです。年間の採用人数は、大手税理士法人は約300名で、中堅だと10名~20名ですが、成約シェアを高める事で、顧客満足度も更に高まり、他サービスへの利用も増えてくると考えます。

また、求人メディアである「アカナビサイト」については、データベースを開放して、今後は代理店にも販売してもらい、事業として横展開していこうと考えています。候補者獲得においては「共同仕入れ」の考え方も必要になってきますので、同業界で仲間を作っていきたいですね。