求人メディア運営や採用支援、人材紹介など様々なHRビジネスを展開するインターワークス。人材紹介においては、幅広い業界でのミドル~エグゼクティブ層に強みを持っている。そんな同社は昨年10月から、人材紹介の業務プロセスや組織づくりなどの変革に取り組んでいる。その経緯と具体的な成果、人材紹介事業者としての目指すべき姿など、工藤氏に聞いた。

採用ニーズが高い業界・人物像

まず御社の会社概要と、人材紹介事業の特徴について教えてください。

弊社は『人と企業の可能性を具現化し、幸せを追求する。』をミッションに、三つの事業を行っています。一つ目は工場・製造業に特化した求人メディア「工場ワークス」の運営。二つ目は採用ノウハウとHR Techを活用した、生産性の高い採用支援サービス。三つ目が人材紹介です。人材紹介の特徴として、ミドル~エグゼクティブ層に強みを持っています。上場企業ならではの信頼やコーポレートガバナンスのほか、小回りの利くサービスが特徴です。

コンサルタントは両面型で、チームは①不動産、建設、再生エネルギー、②IT、コンサルティング、消費財、ヘルスケア、③メーカー系、自動車、電気、化学の3つに分けています。それに加え、分野を横断して人事・経営企画を専門に行うチームや、業界問わずエグゼクティブ層を担当するプロフェッショナルチームがあります。

新型コロナの影響で、人材紹介事業で特に変化の大きかった分野や、求人ニーズの動向をどう感じていますか?

昨年は停滞していたメーカー・製造系が、今年は活性化しているのが大きな変化です。またIT分野と、不動産の中でもアセットマネジメントなど金融系は、企業からの人材の問い合わせが止まりません。求められる人物像としては、これまでは辞めてしまった責任者の代わりなど、穴埋めのニーズが大きかったのが、現在は企業が変革するための人材に変わっています。コロナ以前からあったDX化などへのニーズが、より色濃く出てきている印象です。

工藤さんは昨年10月、人材紹介事業部の責任者としてジョインされましたが、入社後はどのような課題があると感じ、解決のためにどんな取り組みをしてきましたか?

当時は業界ごとにチームを2部体制に分けていました。ただし、専門性を持たせるというより、ただカテゴリーを分けていただけでした。そこで、コンサルタントが担当分野やマーケットについてより深い知識を持ち、企業との接触濃度を強化していったのが昨年10月です。

顧客とのコミュニケーションの量と関係性は比例すると思っています。求人票をいただいて市場に展開するという、メッセンジャーのような役割ではなく、コンサルタントとしての介在価値をいかに高めるかを意識してきました。コロナの影響もあり、なかなか訪問まで至らないこともありますが、オンラインやメールなどあらゆる通信手段を使って、企業の本音をより引き出すことに力を入れています。

また顧客とどれだけ接点を持って、ニーズに応えられる人材を紹介できているか。それを可視化するために、半年に一回CS調査を行い、コンサルタントやサービスの品質、マッチングの精度などを定量化すると同時に、顧客の生の意見をいただいて、少しずつオペレーションに反映させています。

書類通過率を206%改善させたKPI

顧客との接触濃度やコミュニケーションを増やすために、具体的にどのようなことを行ってきたのでしょう?

求人案件がなかったとしても、「何かありませんか?」と聞くだけでなく、同業他社に動きがあれば「どうお考えですか?」と連絡するなどして、コミュニケーションの数や密度を増やしています。また業界知識は、顧客からヒアリングをする一方、コンサルタント自身が勉強したり、オンラインでの学会に参加したりして、積極的にインプットしています。若いコンサルタントにありがちなのですが、業界のことは把握していても、個々の企業の歴史は知らないことが多い。するとミスマッチになりやすいので、企業の歴史も調べるように伝えています。

結果、企業との接触機会がかなり増えています。接点が増えることで、独自の情報も多く入手できるようになり、案件数も増えていく。それが一番のメリットで、結果にも表れているのかなと思います。

KPIなど行動指針も変えたのでしょうか?

両面型の人材紹介に、KPIマネジメントは不向きだと思っています。企業のニーズを誰より理解し、最適な人材を探すことが最も大事であり、プロセスは関係ありません。ただし、弊社にはジュニアのコンサルタントもいます。彼ら彼女らが次のステップに進むために、KPIマネジメントは強化しました。

KPIで最重視しているのは、初回面談から推薦への展開率です。また業界ごとに違いはありますが、部門や担当や案件ごとに展開率を区切り、ポイントを明確にして改善していきました。例えば書類審査はなかなか通らないけれど、一次面接に進めば入社に至りやすい業界もあります。そういった業界ごとの特性を理解した上で、実際のアベレージとのギャップや、コンサルタントの行動を常に見直しています。ミスマッチも減り、成約率も上がりましたが、特に成果が大きいのは書類通過率で、約206%改善しました。

新規の求人・人材開拓では、どのような工夫をしているのでしょう?

ターゲットリストを作って営業もかけていますが、既存の企業からの紹介が多いのも特徴です。業界内での人事担当のネットワークから紹介を受けたり、転職した人事担当から新しい企業での相談をしていただけたりすることもあります。顧客満足度を高め、より良い求人や企業を開拓し続けるのは私たちのプロとしての責任だと考えています。

候補者開拓は、独自のデータベースを有しておりますが、スカウト媒体も有効に活用しています。同時にSNSやリファーラルでの開拓も強化しています。

コンサルタントを成長させる定量マネジメント

コンサルタントの採用や評価の方針について教えてください。

育成枠での採用は、業界未経験の方が中心です。今期は既に多くの増員を図っておりますが、採用は引き続き行っていきます。評価は成果を最も重視した上で、そこに至るまでのプロセスも含め、コンサルタントにとって納得感のある評価をしています。候補者とのやり取りや、マーケット情報をいかにインプットしているかなど、いろいろな評価軸を設けています。そのためか、離職者がほぼいなくなりました。

またプロフェッショナルのコンサルタントには、最大で粗利の45%という、業界でもトップクラスのインセンティブで報いています。プロフェッショナルは現在3名なので、今後採用を強化してまいります。

コンサルタントのスキルアップのために行っていることはありますか。

人材紹介業のインサイドセールスにおいて、多くの企業はトークの品質を、定性的かつ感覚的に見ていることが多いと思います。弊社ではトークの基準を10項目設け、レーダーチャートで数値化して、一人ひとりの課題を明確にしています。例えば、パソコンの画面を見ながら電話で話すと、声がこもりがちになるので、上を向いて話すだけで全く変わります。品質マネジメントを定性から定量に変え、地味な改善の積み重ねによって、大きな改善を目指しています。

またチームをまたいで、成約事例をSlackで共有しています。全ての案件にストーリーがありますので、成約したコンサルタントにも、「どういう苦労があったか」「候補者はどう見つけたのか」などコメントを必ずもらい、それに対し他のメンバーが称賛しあう文化を大事にしています。目標と現在の位置が明確で、決めたことをやりきるのは基本ですが、競争が強くなりすぎてもいけないので、協調性も持たせ、共に成長し合える組織が理想だと考えています。

コロナの影響で、コンサルタントと顔を合わせる機会が減っているかと思いますが、コミュニケーションで重視していることはありますか?

弊社は現在、ほぼテレワークでフレックス勤務です。リアルなコミュニケーションは取りづらい状況ですが、Slackなどで業務の進捗や、私なりのメッセージを毎日送るようにしています。また、たまに顔を合わせたり、ちょっとしたミーティングをしたりする際の、何気ない雑談も大事にしています。これまでは無駄とされていたことが、密度の濃い関係性を築くために、無駄ではなかったと実感しています。

ありがとうございました。最後に今後のビジョンについてお聞かせください。

人材紹介業の市場は現在、業界ごとに区切られています。ですがこの先、クロスインダストリーの流れが出てくるでしょう。マーケットの変化に速やかに対応できる柔軟性がより求められるので、私たちも常に変わり続けていく必要があると考えています。