社会変化を見据えたキャリア支援を拡充。
誰もがより良い「働く」に出会える社会へ

数ある派遣会社の中でも、これほど幅広い職種やエリアに対応し、未経験者が多く活躍している企業は多くないだろう。誰もが良い「働く」に出会える社会を願い、圧倒的な強み・特長を活かし、「一人ひとりの働こうという想いや状況、希望をくみ取り働く機会をつなぐこと」を実現し続けているスタッフサービスグループ。創業40周年を迎える今年、刷新した経営理念に込めた想いや、コロナ禍での取り組み、そして派遣業界の今後と目指す社会の姿など、同社の平井氏に聞いた。

専門領域でも未経験者が活躍

まず貴グループの事業概要について教えてください。

弊社は人材派遣を中心に、人材紹介、業務請負などを行っている人材総合サービスグループです。人材派遣では現在約8.6万人の派遣契約があり、最も多いのは事務職で全体の5~6割を占めます。そのほか、技術者・ITエンジニア、医療・介護、製造があります。これら領域を5つにわけ、それぞれ独立したブランドでサービス提供しています。

幅広い業界・職種で人材派遣を行っていますが、同業他社と比べてどのような特徴がありますか?

大きな特徴の一つにエリアの広さがあります。派遣事業は日本全国を網羅しているので、どこに住んでいる方でも弊社サービスを利用して働くことができます。

未経験者や経験が浅い登録者が多いことも特徴です。一般的に人材派遣はジョブ型で、スキルマッチングした方を派遣するスタイルですが、弊社はそれに加えて、未経験や経験の浅い方にも就業機会をつくっています。例えば、技術者・ITエンジニアや医療・介護領域では、二人に一人が未経験。事務職の常用型派遣でも、約5000名のうち7割は経験ゼロからスタートしています。理由として、労働人口が減少する中、特にエンジニアや介護人材は圧倒的に人手不足です。そのため即戦力人材だけではなく、未経験者を育成して派遣するビジネスモデルを重要視しています。職種、エリア、経験でここまで門戸を広げている人材サービス会社は他になかなかないと思います。

御社は2021年11月に創業40周年を迎えます。経営理念「チャンスを。」に、ビジョン、ミッション、バリューズを新たに制定した背景を教えてください。

40周年という区切りの中で、私たちは社会で何をすべきか、どんな存在であるべきか改めて向き合い、「チャンスを。」という経営理念に、新たにビジョン、ミッション、バリューズを設けました。そしてビジョンを「いつからでも、どこにいても、誰もがより良い『働く』に出会える社会へ」、ミッションを「人の可能性を信じ、一人ひとりの働こうという想いと、働く機会を最も多くつなぎ続ける」としました。

弊社には20代から80代まで、さまざまな年齢やライフステージ、居住地の方が就業しています。働く目的も経験もさまざまです。そんな中で、年齢や状況や経験や住む場所に関係なく、誰もが活躍できる社会を実現したい、という思いをビジョン・ミッションに込めています。

先の読めない時代だからこそ教育が重要

職種ごとに5つのブランドを展開されていますが、どんなシナジーが生まれているのでしょう?

ジョブチェンジを希望するスタッフには、他の事業部やグループと連携してマッチングするケースもあります。例えば、事務職として働いていた女性スタッフが、手に職を付けたいとCAD(製図システム)を勉強していました。基礎的なスキルは身につけたので、仕事でも活かしたいけれど、事務部門では未経験OKの求人がなかったんです。そこでエンジニア部門に籍を異動し、実務経験がなくても働ける企業にCADオペレーターとして配属することができました。そして7~8年後には複雑な設計まで行うようになりました。

日本では約7割の方が転職の経験があります。転職が当たり前になっている中、キャリアパスを自らつかみ取るために、派遣はとてもよい働き方だと考えています。特に地方では、希望に合う案件が少なくなりがちですので、弊社も他部門やグループ内で連携してマッチングするスタンスが強くなっています。

コロナ禍で新しく始めた取り組みはありますか?

派遣スタッフの研修、教育により力を入れています。テレワークに切り替わり、通勤時間がなくなった派遣スタッフが多くいます。ただ、リクルート社の調査によると、生活の変化に伴ってできた時間を、自己学習に充てた人はコロナ前からさほど増えていません。もちろんプライベートに充てるのもよいですが、時代の大きな過渡期なので、できれば自分を高めることに費やしていただきたい。そんな想いから、これまでの何倍も力を入れてキャリア支援を行っています。

事務職の派遣スタッフには「資格取得応援キャンペーン」として、英語や簿記やMicrosoft office系の資格取得をした際、1資格につき最大25,000円を支給しています。常用型派遣のエンジニアなど技術者には、プログラミングやCADなどを学ぶためのスクールの費用を全て弊社が負担し、スキルアップの支援をしています。また近年では製造領域や医療・介護領域にも支援を拡大させています。

5~10年後、社会がどう変化しているか見えない中で、信じられるのは自分を成長させることです。それを体現できる派遣スタッフを増やしていかないと、テクノロジー化された世界についていけない恐れがある。一方で一人ひとりが成長できれば、就業先にも価値提供でき、派遣スタッフも長いキャリアを積める大事な要素になります。そのため今のうちに、私たちが学ぶ機会を提供していくことが大事だと考えています。

拡大する市場、変化する派遣の形

どのような体制で派遣スタッフのスキルアップ支援をしているのか教えてください。

どの派遣会社でも派遣スタッフに営業担当が一人ついていますが、弊社では常用型派遣のスタッフに、営業の他にカウンセラーもつけています。2名体制で、今の仕事の目標や、これからしたいことをヒアリングし、キャリア支援を行っています。

このときに使用しているのがWill-Can-Must(目標管理)シート。中長期のキャリアビジョンと短期の業務目標を設定し、「Will(どうなりたいか)」「Can(そのために何ができるようになる必要があるか)」「Must(すべきことは何か)」を明確にして、派遣先の育成環境をお借りしながらキャリア構築をしています。

今後はキャリア支援の質を上げ、より派遣スタッフ一人ひとりのキャリアや就業スタイルに合ったキャリア支援が行えることを目指しています。そのための取り組みの一つとして、今年は営業担当やカウンセラーを対象として、キャリアコンサルタント資格の取得支援にチャレンジしました。

ありがとうございました。最後に人材派遣業界の今後の見通しと、御社が目指していくことをお聞かせください。

人材派遣の市場は、これから拡大していくと思います。ただ、派遣でずっと働くだけではなく、派遣先の直接雇用に切り替わるなど、派遣の先にいろいろな選択肢がある形に変わっていくでしょう。弊社には、常用型派遣のスタッフが事務職とエンジニアで約1.5万人います。数年前なら、この業界では派遣先からの引き抜きには応じない風潮がありましたが、今は派遣スタッフ本人が希望すれば、意向を尊重して、直接雇用への切り替えにも柔軟に対応しています。

 ほかにも、「派遣で働きながらキャリアアップしたい」「社会復帰の第一歩としてまず派遣で働きたい」「自分のライフスタイルに合わせて派遣の仕事をしたい」など、働こうという想いは一人ひとり違います。出産や介護の事情があるなど、希望の働き方も人それぞれです。そこに向き合い、いろいろな働き方を私たちが作り、働く機会をつなげていくことがこれからのチャレンジです。

ただ社会には、働くことに関する「不」がまだたくさんあります。ある男性の派遣スタッフが、育休を取得したいと派遣先に相談したところ、難色を示されたことがあったそうです。まだそういう考えの企業や人は少なくありません。そこに対し、私たちは「お願いできませんか?」とお伺いを立てるのではなく、声を挙げて変えていく必要がある。そして、誰もが「より良い働く」に出会えるよう、多様な働く機会を作り続けていきます。