即戦力人材、若手の教育役の宝庫。
今、企業がシニア人材を求める理由

2025年には、人口の半分が50歳以上を迎えると言われている、超高齢化社会の日本。深刻な社会問題に直面しているが、そんな中でも人材ビジネスを通じて、豊かな国づくりや経済発展に貢献しているのが株式会社シニアジョブだ。シニアならではの人材ビジネスの進め方や注意点、さらに拡大するであろう市場や可能性について、同社の中島社長に聞いた。

即戦力を求める企業から高まるニーズ

まず御社の事業概要について教えてください。

50歳以上のシニアに特化した人材ビジネスを行っています。正社員やフルタイムで働きたい方には人材紹介で就労支援を行い、売り上げの約7割を占めています。健康寿命が延び、年金の受給額の減少や受給開始年齢の引き上げもあって、フルタイムで働きたい人材が多いことが、7割という数字につながっているのかと思います。紹介料は相場よりやや安めに設定しています。

一方、短時間勤務や負担の少ない働き方を希望する方、シーズン中だけ人手が欲しいスキー場など、労働期間が限られている業種・職種は人材派遣で対応しています。いきなり正社員として雇用するのはお互い不安があるので、まず派遣から始めて、紹介に切り替えるケースもあります。人材紹介と人材派遣の割合は、シニア求職者のニーズと比例しています。

日本は世界一の高齢化社会で、人材会社も多いのに、シニアに特化したところはない。人々のニーズに応えられ、なおかつ市場規模も大きいと予測して、2016年にこの事業を始めました。

クライアントがシニア人材を雇用したいと思うのには、どのような背景があるのでしょうか。

大きいのは、人手不足によって、これまで考えていなかったシニア人材に採用枠を広げたことです。シニアの方は、体力は衰えていても、蓄積してきた技術やノウハウがあるので、すぐに現場で活躍できる方が多い。そのため、即戦力を求めている企業からのニーズが高まっています。特に傾向が強いのは、国家資格や専門技術が必要な職種。例えば施工管理で、現場を見て「この窓枠は気温の変化で材質が縮まってしまうので、もう3ミリ狭めた方がいい」と、業界歴が浅い人ではなかなか気づけないので、シニアの方が重宝される傾向にあるのです。また、お持ちの経験やノウハウを、若手への教育に活用したいというニーズもあります。

求職者は、どのような思いや経緯で登録されている方が多いのでしょう。

定年を迎えたけれどまだ働きたい方と、定年を前にしてもう少し長く働ける職場を探したい方が半々くらいです。そのため求職者の層も、61~62歳がボリュームゾーンです。傾向として、50代後半はまだまだ稼ぎたい、70代は働くことで社会とつながっていたい、という思いの方が多いです。

76歳で成約になった事例も

専門領域での求人が比較的多いとのことですが、一般的な事務や営業などの職種では、シニア人材へのニーズはあるのですか。

ハウスメーカーの営業など、単価が高く、専門知識が求められる職種では、経験豊富なシニアが「いいですよ」と勧めた方が説得力はありますが、それ以外の営業・事務の募集は、現時点ではあまり多くありません。ただ経理のような、専門職と一般職の中間にあるような職種では、2016年にほぼ0件だったのが、月3~4件に増えており、シニアの雇用枠が広がっている実感はあります。また、テレアポや電話営業でも、ニーズが高まっています。さらに3~4年経てば、事務や営業でもシニアが求められていくと想定しています。

年間の決定数や、求人数、登録者数はどのくらいでしょう。

求人は、最も多かったのが2019年で、1万4500社の登録がありました。コロナで若干減りましたが、新規は増えており、登録企業は延べ5万8000社超です。若年層よりも、シニア人材の提案の方が難しいため、企業開拓には特に力を入れています。求職者は延べ6万500人で、2020年には年間2万2000人以上増えました。これはコロナの影響で、解雇になってしまったり、職場自体がなくなってしまったりした方のケースが多いです。

これまでで、特にうまくマッチングした事例を教えてください。

67歳で建設業から不動産業に転職した方がいます。転職先は、建物をリノベーションして物件の価値を上げ、販売している企業。そこでは改修の費用や、物件の価値を適切に見極める人材を探しており、マッチングしたのです。建設業は年配の人が多く、不動産業は若い人が多い。敬遠するシニアの方もいるのですが、その方は新たなチャレンジととらえて、入社後も若手社員と一緒に宅建の勉強をしているそうです。若い世代へのいい影響にもなり、その企業はシニアをもう一名採用したいと言っています。異業種への転職はあまり多くないのですが、近しい業界で、本人のチャレンジ意欲が高かったこともあり、うまくいったのだと思います。ほかにも、弊社の最高齢で、76歳で成約になった電気設備士の方や、74歳の歯科医師の方などもいます。

「MVP取ったことがある」は逆効果?

シニアの方をマッチングする際、どんなことを心がけていますか。

履歴書や職務経歴書などの書類は私たちが作成しています。シニアの就職支援で、最も難しいのは書類選考なんです。理由として、採用における年齢は比重が重いため、それでも入社してほしいと思わる経歴でないと通過しない。また、一社でずっと働いてきた方も多く、書類の書き方がわからない方もいるため、担当が個別にヒアリングして作成しています。多い失敗例が、「全社でMVPを取った」などアピールが強い内容。実際そうであっても、書かない方がいい。シニアの方は、そもそも使いづらそうというバイアスがあるため、過去の栄光にすがっていない見せ方を意識しています。

シニア特有のところでは、例えば求職者が62歳の場合、採用担当者は「65歳まで3年くらい働きたいのかな」と考えます。けれど実際は、75歳や80歳まで働きたかったりする。その認識の差を埋めるための項目を、履歴書に用意しています。またオンライン面談が増えたので、セッティング方法や注意点などをセミナーで伝えていきました。こういったサポートを始めてから、決定率は上がりましたね。

求職者の獲得はどのように行っているのでしょう。

95%は自社運営の転職サイト「シニアジョブ」経由です。以前は媒体も使っていましたが、今は広告やSEOなど、自社で運用・コントロールできる方法を採用しています。当初は新聞広告やチラシ配りなど、アナログで行っていたのですが、応募者がスマートフォンやタブレットを普通に使っていたため、ネットに切り替えたところ応募者も増えました。

知識欲は制限せず、健康面は気を遣う

企業がシニア人材を採用する場合、気を付けた方がいいことがあれば教えてください。

シニア扱いしないことが重要です。例えば、システムやグループチャットは使わなくていい、といった特例を作らず、ほかの社員と同様にITも使ってもらう。そうしないと、必ず壁ができてしまうからです。シニアが若い世代の中で仕事をするのは、そもそも心理的ハードルが高いので、そこを低くすることが求められます。また、新しいことを積極的に覚えたいシニアの方も多いので、知識欲は制限しない。覚えるのに時間がかかるだろうと、妨げてしまうと、モチベーションが低下し、離職につながりかねないからです。

一方で、健康面に関してはシニア扱いをして、業務量を調整したり、フルタイム希望でも少し時短にしたり、休憩を多く取ってもらったりしています。これが最後の転職だと考えて、頑張り過ぎてしまう方もいるので、そこは先回りしてケアしています。

採用後の定着支援はしているのでしょうか。

シニアの方を2名以上採用すると、心理的ハードルが下がって定着しやすくなります。1人だけだと高い確率で離職しがちです。また弊社は、シニア人材の労務に関する全般を行う、社労士事務所をグループとして設立しました。顧客からのニーズも大きく、「定年を何歳に設定するのがうちの会社はいい?」「再雇用の際の契約はこれで大丈夫?」などの相談に乗ることで、シニアの方の労働環境の整備を支援しています。多いのは、シニア人材を採用した際の、助成金の申請支援。「65歳超継続雇用促進コース」という制度では、65歳以上の方を雇用すると、一人につき平均70~80万円が支給されるので、紹介料が実質ゼロになることもあるんです。

ありがとうございました。最後に今後のビジョンを教えてください。

現在は提供できていない職種の求人やシニア人材の方に対応するため、シニアの就業支援に関する様々な新規事業を計画しています。また、シニアの就業支援はシニアジョブ1社のみで成し遂げられるものとは考えておらず、他の人材会社との連携も進めていきたいと考えています。そうすることで、弊社以外にも多くの人材会社がシニア就業支援に取り組み、日本全国のシニアの雇用促進にもつながるからです。中長期的には、シニアを軸に、婚活やオンライン教育や宿泊予約など、サービスを多様化していきます。