グローバル視点で見るこれからの人材ビジネス。
紹介、派遣、RPO、全てが成長市場

エン・ジャパン株式会社のグループとして独自のデータベースやネットワークを駆使し、バイリンガルの高度人材に特化した紹介・派遣サービスを展開。入社後の定着にもリソースや知見を結集させている。そんな同社のディオール社長に、コロナ禍での変化やコンサルタントの育成、今後の人材ビジネス市場の見通しなど幅広く聞いた。

定着支援にも重点を置いたサポート

エンワールド・ジャパンの事業内容について教えてください。

元々は日本に拠点を置く多国籍企業に対し、バイリンガル人材に特化した紹介会社としてスタートしました。この領域を中心に、現在は多くの日系企業にもサービス提供しています。特徴として、バイリンガルを「日本語も英語も話せる人」ではなく「グローバルに活躍できる人」と定義。エグゼクティブを含むミドル~ハイクラスの紹介を、リテインドサーチプロジェクトで行っています。

高度なスキルを持つ人材の派遣ビジネスも、「コントラクト・プロフェッショナルズ」という名称で展開しています。ここには派遣契約のほか、契約社員や業務委託など、永続的でない雇用関係全般が含まれます。領域は財務・会計、マーケティング、人事、サプライチェーンマネジメントなど。近年はライフサイエンス、医薬品、医療機器など、より専門性の高い分野も開拓しています。

そのほか、採用業務の一部あるいは全部を請け負うRPO(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)「enPower」も行っています。

プロフェッショナル人材の開拓は各社が試行錯誤しているかと思いますが、御社はどのように行っているのですか?

弊社には、20年以上にわたって開拓した候補者のデータベースとネットワークがあります。また、高度なプロジェクトなどは契約の性質上、無期限でないことがよくあります。プロジェクトが終了したとき、派遣契約も終了しますが、候補者を次のクライアントやプロジェクトに紹介できるオプションを設けています。

御社は定着支援にも力を入れていますが、入社後はどのようなことに重点を置いてサポートしているのでしょう?

コンサルタントは、少なくとも入社後の数カ月、理想的には長期にわたって、企業と候補者の関係を維持するためのサポートやアドバイスを行っています。方法としては、私たちの親会社が提供している適性検査や能力開発のツール、トレーニングなどを活用しています。また候補者にフォローアップ調査を実施。仕事ぶりをフィードバックしてもらうほか、もし退職することになった場合、その理由などを情報データとして集め、それを参考にコンサルティングやマッチング能力を向上させています。

もう一つは、広報チームが市場の情報を調査し、データとしてクライアントに提供しています。正しく活用すれば採用や定着など、タレントマネジメントプロセスに影響を与えることができるのです。候補者にも、弊社が用意したホワイトペーパーに無料でアクセスできるようにしています。

コロナ禍でも人材ニーズが減らない

新型コロナで、ビジネスにはどのような変化がありましたか?

多くの企業が採用を凍結し、私たちのビジネスにもマイナスの影響がありました。しかし、日本が人材不足である状況は変わりません。楽天やAmazonやNetflixなど、コロナでビジネスが拡大した企業をはじめ、オフィスや工場に出社する必要がないビジネスモデルを持つ企業は積極的に雇用を増やしていきました。結果、最初の1カ月が過ぎると、私たちの事業もすぐに回復しました。

もうひとつの大きな変化は、働き方です。リモートなど、フレキシブルな労働環境を認める企業が劇的に増加しました。弊社もその一つ。パンデミックが始まった当初、私たちはすでにリモートワークの環境を計画しており、機器も導入していたので、在宅勤務に切り替えるのは難しくありませんでした。人材管理のCRMシステムや、RPOで使用する採用管理システムも準備し、すべてリモートアクセスが可能で、ITセキュリティ・ポリシーも設けています。

またMicrosoft Teamsなどを使って、社員同士がミーティングを行えるようにしました。トレーニングやオンボーディング、新入社員教育、面接をはじめとする選考過程もオンラインで対処。以前は候補者と会わずに採用を決めることはほぼありませんでしたが、今は当たり前になっています。

御社はベトナムとインドにもグループ会社がありますが、ビジネスで連携はしているのでしょうか?

インド拠点(New Era India Consultancy Pvt. Ltd.)の主な事業は、IT専門職の契約社員の派遣です。インド拠点の人材を必要としている弊社のクライアントを紹介し、リモートで働ける機会があれば、提携を考えていきたいと考えています。現在は新型コロナの影響で、海外渡航やビザの発給、国から国への移動が進んでいませんが、解消されたら将来的にはよりチャンスになると考えています。

ベトナム拠点(Navigos Search)とは、人材紹介事業の分野でノウハウの共有などを行っています。今後はさらにビジネスで連携し、協力しあえる部分が出てくると思っています。

少子高齢化で人材会社が直面すること

コンサルタントへの教育はどのように行っているのか教えてください。

未経験の場合、入社後はまずマーケットについて学び、アソシエイト・コンサルタントとして6~18カ月、コンサルタントのサポートをしてもらいます。その間、トレーニングや能力開発はもちろん、コンサルタントに同行して知識や経験を積んでいくのが自然な流れです。

コンサルタントは両面型。またキャンディデイト・アドバイザーと呼ばれる、候補者のフォローやサーチのサポートを専門で行っている者もいます。

日本は高齢化による労働人口の減少という課題を抱えています。今後、御社のビジネスにどのような影響があると考えていますか?

労働力の縮小は、全ての企業が対処しなければならない問題です。解決方法は主に3つあると思います。一つ目は外国人の雇用を増やすこと。日本では多くの場合、言葉の壁や文化的な要因で、高度なスキルを持った外国人を大量に受け入れるのは難しい状況があります。微々たるものかもしれませんが、コロナが終息した後、外国人の労働者は増加していくでしょう。

二つ目は女性の労働力を増やすこと。ホワイトカラーや管理職として働きたい女性が増え、企業も受け入れるようになれば、新たな労働人口へアクセスできるようになります。弊社でも女性の活躍支援には力を入れて取り組んでいます。

三つ目は高齢者がより長く働き続けること。定年を過ぎても健康で、働き続けたい方はたくさんいます。豊富な経験とスキルを持っている方も多く、企業は適切な賃金で活用できるのです。

しかし、日本の人材不足を埋めることまでは恐らくできません。そのため、人材獲得にかける価値が高まるという意味で、私たちの市場ニーズは拡大し続けるでしょう。私たちも弊社のビジネスはすべて成長市場だと考えており、各ビジネスユニットが協力して、シナジーを生み出せる方法を模索していきます。またこれまでに培った知識やノウハウ、候補者やネットワーク、データなどを活用して新しいサービスを立ち上げることも検討しています。そして、さらなる事業拡大を目指していきます。