リクルーティングを軸に
人材戦略パートナー企業への進化を目指す

2001年の設立以来、グローバルのハイクラス人材紹介会社として第一線を走ってきたヘイズ・ジャパンが、2022年7月にリブランディングの意味を込めロゴを刷新した。リブランディングを実施した背景には、自社の強みの認知拡大と、人材に関する課題解決を広く提供する経営のパートナーを目指す宣言だ。マネージング・ディレクターのグラント・トレンズ氏に詳しく聞いた。

働き方は「在宅」か「出勤」の二択ではなくなった

事業内容をお聞かせください。

ヘイズ・ジャパン(ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン株式会社)は、2001年に設立した外資系ハイクラス人材紹介会社です。ヘイズ本社は英国にあり、世界32カ国254拠点、全従業員12,100人のネットワークを持つ日本最大規模の外資系人材サービスを提供しています。日本国内では、東京・横浜・大阪の3拠点を構えています。IT、デジタル、経理・財務、金融、人事など15分野への人材紹介業務を始め、RPO(採用アウトソーシング)や業務委託のサービスも展開しています。

業種では、近年の弊社の成長を支えているテクノロジー、最近ますます活況を呈しているライフサイエンス、そして製造業の三大産業を柱に、銀行、金融、不動産、保険など幅広い分野にサービスを提供しています。特にテクノロジーは、今年の成長を担う分野として注力していきます。職種では、財務・会計がもっとも多く、次いで営業やマーケティング、テクノロジーが主になります。

コロナ禍で経営に変化はありましたか?

最大の変化、そして課題になった点は、海外人材の活用が困難になったことです。日本が抱える少子高齢化という課題を解決する策の一つとして海外人材の活用が考えられますが、コロナ禍により、一気にできなくなりました。その間は、国内企業へ優秀な人材を紹介することに注力し、国内の人材発掘や紹介業務を粛々と継続しました。

コロナ禍でおきた最大のパラダイムシフトは、テレワークやリモートワーク、在宅勤務への理解や実施の高まりです。また、在宅勤務への移行初期は、出勤か在宅かの選択肢が主でしたが、最近は出勤か好きな場所で働くかの選択肢に変わってきたように感じます。採用側は働き方の変化に対応した勤務制度を提供することが、人材確保において重要なポイントになっています。

「どこで働くか」ではなく、「どこで働いてもいい」社風

貴社も勤務場所はフレキシブルですか?

もちろん、当社も好きな場所で働けます。実際には、東京オフィス約250名のうち90%が出社していますが、みな希望して出社しています。育児や介護をしながらフルリモートで働く従業員もいます。大切なのは、どこで働くかではなく「どこで働いてもいい」という社内風土をつくることです。

そのためのデジタル投資もしました。コロナ禍で全世界12,100人の従業員がリモートワークを余儀なくされましたが、当社のIT部門が懸命に頑張ってくれたおかげで、わずか3日でリモートワークが可能になりました。全社員にデジタル環境を揃えるところからのスタートでしたが、今は誰でも、自分のコンピューターから業務をすることができますし、セキュリティ対策も万全です。

コロナ禍で求職者が求める企業像は大きく変化した

同時に、日本の市場、幅広い産業においてテクノロジーの進展がありました。求職者側も、最新テクノロジーを提供する企業かどうかをチェックしています。例えば、リモートワークに必要なデバイスやクラウドサービスの提供および投資をしているかどうかです。

求職者は、コロナ禍の約2年間にわたり在宅勤務をする中で、増えた自分の時間を使って将来の仕事やキャリアを考える余裕が出てきました。なぜ自分はこの業界で働くのか、企業の存在意義は何かまで考えるようになっています。

これらの変化は、採用側にも同じことが言えます。デジタルへの投資を進め、従業員にも新しい分野で才能を発揮して欲しいと期待するようになりました。

他に、パンデミックの影響で政府がハンコ(押印)の廃止を始めとするデジタル化を促進させた点も、勇気づけられる変化でした。

人材戦略パートナーを目指したリブランディング

ロゴとタグラインが新しくなりましたが、どのような思いから変更されたのでしょうか。

ステークホルダーの皆さまに、私たちのサービス全体をもっと知っていただくためのリブランディングの一つとして、ロゴを変更しました。当社はこれまでリクルーティング会社としてニーズに応えてきましたが、人と人をつなげるだけでなく、経営戦略や人材育成コンサルティングなどを通じ、企業の課題をともに解決することにも力を入れてきました。自社のソリューションを活用したRPOやMSP(派遣管理デスク)を提供したり、オンラインでの教育や人材育成といった製品を一部無料で提供したりしています。現在も、人材育成の新プラットフォームを作っている最中です。このように、リクルーティングを軸に幅広いサービスを提供している人材戦略パートナーであることをメッセージとして伝えるため、リブランディングしました。

リブランディングのコンセプトは、―Working for your tomorrow―です。〝you〟は、求職者であり、クライアントであり、私たちヘイズの社員でもあります。また、〝Tomorrow〟は、終わりが見えている明日ではありません。常に明日へ向かって継続的に支援して行きますという意味です。

人材戦略パートナーとして、クライアントの要望にどう応えていかれますか? 例えば、新卒採用なども貴社が支援されるのでしょうか。

世界を見れば、例えばマレーシアやオーストラリアでは新卒や若手、一般職へのニーズはありますが、日本では高度な技術を持つ専門職へのニーズが高いです。人材戦略パートナーとしては、人材育成に関するサービス提供などでジュニアをターゲットにすることはありますが、人材紹介においては、今後も従来の専門職・ハイクラスが中心です。

日系企業には新卒・第二新卒の人材紹介サービスが存在し、成功報酬型ではなく固定給が主です。さらに大企業は、独自の一括採用システムを持っています。私たちは、成功報酬型で働く海外の優秀な人材が日本で働きたいと思える環境づくりを目指し、人材戦略パートナーとして、新しい報酬体系を生み出せるかもしれないと考えています。

人材ビジネスは、人と人とが直接接点を持つダイレクトなコミュニケーションが主要になります。一方で世界は急激にデジタル化しており、デジタル技術はより多くの人へのリーチを可能にしています。私たちは、オンライン上の教育プラットフォームの開発提供に取り組んでいます。テクノロジーを活用すべきところで広くご利用いただけるようなサービスを提供し、ダイレクトコミュニケーションが必要なところは深く関わりながら、人材領域における企業課題のソリューションを提供していきます。

今企業に求められる4つのポイント

日本は経済成長が鈍化しており、労働力不足も問題視されています。今後、日本の企業や労働者がどのように変化していくことが求められるとお考えですか?

日本の経済規模は大きく、成長率1%は、他国では数%相当に換算されるほどです。パーセンテージの増減だけで日本経済がよくないとは評価できないと思っています。労働人口不足に関しては、日本の完全失業率は2.6%ですが(2022年3月現在)、「働けない」ではなく「働きたくない」人も一定数います。その人たちを除いた中から候補者を探すのは難易度が高く課題ですが、同時にチャレンジでもあると考えています。

いまの求職者は、企業に4点の明確化を求める傾向があります。1点目は、企業のパーパスで、企業の存在意義や社会的な使命を掲げ、発信していくこと、2点目はEVP(Employee Value Proposition/従業員価値提案)従業員をビジネスの中心に置く経営姿勢です。3点目は、変化への柔軟な対応です。どこでも働ける環境やデジタル投資の実施など。そして4点目は、従業員への投資です。金銭の待遇以外の点も整備しなければ、優秀な人材を失うことになるでしょう。従業員のスキルアップや再教育も最重要課題です。業務のオートメーション化が進む中で従業員に新たな活躍の場をつくるための教育は大事だと思います。  それに加えて、外国人採用などを含むダイバーシティも重要です。私たちは人材戦略パートナーとして、これら4つのポイントの実現へ向けたコンサルティングも進めたいと思います。

求職者の皆さまには、プロフェッショナルとして責任を持つことをメッセージとして伝えたいと思います。国や企業がどんなに素晴らしい労働環境整備をしても、それをどう生かすかは自分次第です。また、社内、社外を問わずコミュニティをどんどん活用して欲しいです。興味がある他部署の従業員に話を聞いたり業務体験したり、異動するためのアドバイスをもらったりするアクションも有意義だと思います。そして、方法が見つからないときは、どうぞ我々に頼ってください。