新卒入社11年目で社長就任。
スタッフが求める働き方実現のためなら業界の垣根をも超える

保育・人材・介護サービスを提供するライクの完全子会社であるライクスタッフィングとライクワークスが2022年6月に吸収合併、ライクスタッフィングを存続会社とした。同時に、ライクスタッフィングは社長を交代。新社長は、新卒入社から11年でライクワークスの社長に上り詰めた宮郷剛士氏だ。宮郷新体制が目指す未来や吸収合併によるメリットなどについて同氏に聞いた。

「スタッフに必要な仕事がないならつくればいい」
その熱意が社長就任のきっかけに

この度はご就任おめでとうございます。改めてライクグループおよびライクスタッフィングの事業内容をお聞かせください。

ライクグループは保育、人材、介護サービス事業を展開しています。2022年6月に、人材サービスのライクスタッフィングが物流・製造特化型人材サービスのライクワークスを吸収合併、ライクスタッフィングに事業を集約しました。私は2018年6月のライクワークス設立時から同社の社長として経営に従事しており、この度の吸収合併でライクスタッフィングの代表となりました。

社長に抜擢された理由をどのようにお考えですか?

社長としては若い世代の自分が社内に勢いをつけ、新しい風を吹かせたいと考えています。グループ全体の社員平均年齢は34歳(2022年5月時点)と現時点でも若いですが、目まぐるしく変化する社会に迅速かつ柔軟に対応するため、早くから業界の垣根を超えた人材サービスに着目してきた私に、期待が持たれたのだと思います。また、新卒入社で11年目から社長という私の経歴が、若い世代に夢を持ってもらうきっかけになればと思っています。

物流・製造領域は宮郷さんが開拓したと聞きました。

私は2008年に新卒でライクグループに入社し、最初は携帯電話のイベントスタッフ派遣を担当していました。当時、携帯会社のイベントスタッフは多くが学生で、MCが上手だったり企画力が高かったりする人が大勢いました。また、学生が働ける日時はイベントの繁忙期と重なることが多く、とても助かる存在でした。スキルが高く繁忙期に働いてくれる学生は、当社としても手放したくありません。ですが、携帯イベントは土日がメインなので、平日も仕事がしたい学生さんたちは、飲食店などでも働きます。飲食店は土日も勤務があるため、おのずと当社イベントのシフトに入れなくなっていきます。そこで私は「学生スタッフたちが平日も働ける仕事をつくろう!」と思い、物流の軽作業を紹介できる道筋を立てました。

「必要な仕事なのに自社にはない。それなら、つくればいい」そう思った矢先に出合ったのが物流での軽作業だった、ということです。このとき契約した企業がファッション通販サイトの運営会社でした。その企業は、あっという間に巨大企業に成長し、弊社からの派遣スタッフも日を追うごとに増えました。1日に数十人~百人規模で派遣する日は、まとめ役が必要になります。そこで活躍したのが、携帯イベントを仕切っていたスタッフたちでした。彼らには本当に助けられました。また、物流スタッフとイベントスタッフの交流が生まれ、物流スタッフが土日はイベントで働きたいと申し出てくれる機会も増えました。この頃から、スタッフが複数領域で働けるようにしたいという思いを持ち始めました。

クライアント倉庫内に自社オフィスを設置。
スタッフとの密なコミュニケーションを実現

現場に担当営業が常駐することもありますか?

物流のように1日数十人~百人のスタッフを派遣する日は、基本的には現場社員というリーダー役を配置します。現場社員は、自ら作業しながら新人スタッフに現地までのバスの乗り方やハンディーの使い方などから教えます。

もちろん、担当営業が1日現場管理をするケースもあります。現場でスタッフとシフト調整したりコミュニケーションをとったりでき、クライアント側も派遣スタッフに気を配る必要がなくなるため、双方にとってメリットがあります。スタッフも、気軽に話せる自社の社員や先輩スタッフ、営業担当者がいたほうが心強いですし、心理的安全性が保たれます。

例えば、A工場のお弁当はおいしいとか、B倉庫はランチが食堂で温かいとか些細な話でも、週に何度も現場でご飯を食べるスタッフにとっては、モチベーションを左右します。私が長く現場を見てきた中で、コミュニケーションは本当に大事だと痛感しているので、現在は大型物流倉庫の中に弊社のオフィスを作り、担当営業が現場で業務できる環境も整え始めました。

順調だったライクワークスを2018年の設立からわずか4年で吸収合併した理由は?

当グループは、必要な事業を始動したり新会社を設立したりすることに柔軟で、ライクスタッフィングとライクワークスの吸収合併も、未来の社会に必要とされる企業であるための決断でした。ライクワークスの設立も、本来は領域外であった物流・製造を本格的にサービスとして運用していくためでした。

吸収合併でスタッフが働きやすい環境づくりを加速する

今後は物流以外の領域にも携わっていかれますが、どのようなシナジーを想定されますか?

一番の期待は、スタッフが多業界で働ける環境づくりです。また、高収入を目指す人がチャレンジできる仕事の提供も実現したいと考えています。物流の軽作業は、給料が高いとは言えません。一方で、働く人の中には社会経験豊富なスタッフが多数在籍しています。結婚や子育てなどをきっかけに、収入を上げたいと思うことがあるでしょう。そのとき、もっと高収入の職種で働ける仕組みがあれば、スタッフの人生はもっと豊かになります。ライクワークスがライクスタッフィングと合併したことで、その道に具体性が出てきたのではないかと思います。

社内バックオフィス面では、複数の業種や職種に携わることでDX化のメリットが増えますので、DX化も進めたいポイントの一つです。細かい点では、申請書やシフトの提出などのデジタル化を進め、スタッフ対応のガバナンス向上を目指し、業務をスムーズにしたいと考えています。

また、外国人材の採用にも積極的に取り組みます。今後は外国人材が業界問わず必要になります。当社は現在、特定技能外国人(在留資格保持者)の育成を進めています。介護士の育成や資格取得の機会を特定技能者として入国した外国人に提供しています。

外国人が長く気持ちよく働き続けるには、職の提供だけでなく生活面のサポートも重要です。プライベートが充実しないと仕事に身が入りません。言葉が通じなかったり、文化の違いに悩んだりすることで、働く意欲を損ねてしまいます。ゴミの分別一つにしても、日本人なら簡単に判断できても、分別文化がない国の人にとっては分別の基準が分かりません。このような小さな文化の違いについても、いつでも相談できる環境にしておくことで、外国人材に長く働いてもらえます。

中長期の目標や予定は?

数値目標としては、ライクグループ全体で売上1000億円が一つのラインです。  当グループは携帯業界がスタートですから、今後はIT領域にも注力したいと考えています。スマートフォンもコンピューターですし、キャリア各社はIT企業ですから親和性があります。携帯スタッフでプログラミングに興味がある人がIT領域でも働けるような流れを作りたい。物流のロボット化にも参入したいですが、物流システムは企業ごとにすべて異なるため、一元化したシステム構築は難しいのが現実です。在庫管理から発送までを自社で完結する企業もあれば、ショッピングモール系のように提携店から商品が送られてくるパターンもあるので、当社が貢献できることが何かを見極めたいと思います。

あわせて、2020年2月にリニューアルしたオフィスにカフェスペースがあるのですがコロナ禍により感染症対策の関係で活用できていないので、早くフル活用したいです。グループ各社が垣根なく打ち合わせできるスペースには、バーカウンターがあります。社員がバーテンダーになって即席バーを開店するなど、グループ社員同士のコミュニケーションの場が賑やかになる日を待ち望んでいます。