派遣スタッフが不安なく働ける環境づくりを徹底し
「派遣会社満足度1位」受賞

「はたらいて、笑おう。」をパーソルグループのビジョンに掲げ人材派遣・アウトソーシング事業を展開するパーソルテンプスタッフ。そのグループビジョンを具現化し『派遣スタッフが選ぶ!派遣会社満足度ランキング2021』※では、3年連続で総合満足度第1位を獲得した。受賞理由や今後の経営戦略について、代表取締役社長の木村和成氏を取材したところ、そこには経営理念の社内浸透に奮闘する木村氏の姿があった。

※エン・ジャパン運営「派遣ビジネスと派遣労働者のキャリア形成を調査・研究する専門組織『派遣の働き方研究所』2021年12月22日発表。

クライアントのさまざまな課題を解決する企業でありたい

御社の主力である人材派遣やアウトソーシングの事業展開について、現時点での注力ポイントをお聞かせください。

創業以来、人材派遣業の軸は現在も変わりません。その中で、社会の変化やクライアントのニーズ、働き方の多様化に対応するサービスの進化は必至です。クライアントへの営業は、派遣ありきではなく、先方が抱える業務課題解決を目的とした提案をし、解決の選択肢として派遣やBPO(Business Process Outsourcing/ビジネス・プロセス・アウトソーシング)があるといった「課題解決型サービス」に注力しています。ときにはグループの垣根を超え、例えばDX分野に強いグループ企業と協力してクライアントのDX課題に取り組むこともあります。

人材派遣業は「人さえ派遣すればいい」という考え方では、スタッフやクライアントとの信頼関係は築けません。クライアントの業務や人事の課題が解決し、派遣スタッフがクライアントから感謝されることで、担当営業は次のモチベーションになる。そして、働くすべての人の笑顔につながる。これこそが人材派遣業の役割であり、パーソルグループのビジョン「はたらいて、笑おう。」の実現につながります。

最近は官公庁からの受託事業も増加していると聞いています。

当社のBPO事業が、雇用環境の変化や官公庁のニーズに合ったのだと思います。コロナ禍で助成金やワクチン対応などにより受付窓口業務や事務処理を行うバックオフィス業務が一気に増えたことも影響しています。受託事業の専門部隊を2011年に設置し、ここ数年で規模が拡大しました。

まずは自らが「人」として従業員と向き合いたい

2023年で創業50周年となられます。節目に向けて何か取り組まれていますか?

1973年の創業以来変わらぬ経営理念「雇用の創造」「人々の成長」「社会貢献」を今後も私たちのブレない軸として持続していくため、改めて経営理念の浸透に取り組んでいます。事業規模が大きくなると、利益第一でサービスがシステマティックになったり、派遣の工程がオペレーティブになってしまいがちですが、我々の原点は「人」。物売りではなく人生を預かる仕事です。求職者の人生に影響する仕事という重みを感じ、よりよい生活をともに目指し、真心を込めてサービスを提供する。このマインド構築を強化しています。

そのためには、代表である私が、何度も何度も繰り返し、語りかけ続けることが大事だと考えています。例えば、全国に約300人いるマネージャーを10人ずつ集めて直接話す対話会を実施しています。古臭い手法ですが、人を大事にする会社というなら、代表の私がまず人として、従業員と向き合いたいのです。

この先の中長期な計画を教えてください。

中長期計画としては、スタッフの方々に当社のファンになってもらう「ファンづくり」を始めました。2020年7月にサービスを開始した、登録スタッフとアプリのスタンプで簡単にコミュニケーションがとれる「テンプアプリ」も、ファンづくりの一環です。契約確認や有給休暇の申請手続きの簡略化などの基本機能に加え、「SKD(最近どうですか?/SaiKin Doudesuka?)」という機能を付け、日ごろ感じているささいな困りごとや小さな不安なども伝えてもらえるようにしました。これにより、営業担当は素早く登録スタッフとより密接なコミュニケーションがとれ、問題が小さなうちに解決できるようになりました。

「派遣会社満足度1位」受賞後に、社員発案でスタッフAwardを実施

『派遣スタッフが選ぶ!派遣会社満足度ランキング2021』は、3年連続で総合満足度第1位を受賞されました。要因をどのようにお考えですか?

「はたらいて、笑おう。」のグループビジョンの実現を目指して、コロナ禍でとにかくスタッフの皆さまが不安なく働ける環境づくりに取り組んできたことが伝わったと考えています。スタッフの皆さまがいてこその我々のビジネスであることを、改めて強く感じました。同じ思いを持った従業員の一人から「ファンアワードをやりたい!」と声が上がり、21年に第一回を実施しました。全スタッフの中から、長く働いてくださっている人やクライアント評価が高い人をテンプ(102)にちなんで102名選出し、感謝の言葉とともに表彰させていただきました。受賞者の中には「派遣を辞めようと思っていたが、これからもテンプスタッフで働きます!」という声もあるなど、このイベントには働く人を元気で笑顔にする効果があると感じましたので、今後も開催予定です。

コロナ禍は働き方を大きく変えました。どのような対応をされていますか?

確かに、コロナによるリモートワーク化は働く場所と時間の概念を大きく変えました。当社の求人における検索ワードの現在のトップは「在宅」です。類似の求人で、在宅有りと無しでは、応募数に約4倍の差がでます。フルリモートでなくても、週1回でも在宅可であれば、実際は在宅せず出勤したとしても、在宅を選択できるという安心感が求職者から求められていると感じます。最近では、クライアントの出社割合が増加傾向にありますが、働く方の意向は変わりません。この点はクライアントとも共有しており、人材不足感が増していく中で、各企業と相談しながら対応しています。

在宅勤務が可能になると、育児や介護などで出社勤務ができなかった人が、すきま時間で働けるようになります。中には、高いスキルがあるにも関わらず働けなかった人材も多くいます。我々は、そのスキルを生かしたいと考えています。現在、フルタイム勤務を求めるクライアントに掛け合い、ハイスキルで短時間勤務の複数人をワークシェアで働いてもらうといった提案も行っています。クライアントとしては、フルタイム1名のほうがいいですよね。そこへ切り込むには、求職者の具体的なスキルを担当者が詳しく把握し、クライアントに価値を伝える必要があります。営業事務であっても、納期調整ができるか営業サポート経験者かでスキルは異なりますので、スタッフごとの経験やスキルを把握してクライアントの課題を解決できることをお伝えするようにしています。こうしたひと手間、ひと工夫の積み重ねで、家庭の事情などで短時間しか働けない人に一人でも多く活躍してもらうことは、働く人の幸せや、労働力不足の日本の課題解決につながりますので、グループビジョンの実現や社会への貢献として、今後も積極的に進めていきます。

今後、日本の労働力不足は加速し、主婦・シニア・外国人の活用が急務になります。ジョブ型雇用のパイオニアである人材派遣業が社会をリードし、多様化する働き方に対応した雇用の創造をしていくことが使命だと考えています。

スタッフの「なりたい」を叶える派遣会社であり続ける

ハイスキル人材の活用という点では、無期雇用派遣にも力を入れています。バイオ系など特定分野のエンジニアや研究開発人材などを育成し、派遣として働きながらキャリアアップしてもらう方法です。求職者から見れば、正社員で企業に入社するとジョブローテーションで、配置転換が定期的に行われますが、無期雇用派遣(正社員)として派遣会社に入社すれば、さまざまな派遣先企業において自分の好きな仕事や追及した領域で仕事を続けられるメリットがあります。

またクライアントから派遣スタッフを直接雇用したいと要望があり、スタッフも直接雇用されたいと希望した場合は、直接雇用大歓迎です。派遣スタッフの中には、正社員になれなくて不本意ながら派遣を始めた人が少なからず存在します。彼らの「なりたい」を叶えること、不本意を本位にすることが、我々の仕事です。スタッフが企業に直接雇用されると、派遣の売り上げは減少します。ですが、それは短期的なこと。当社が目指すものは働く人たちの幸せですから、この点に異論がある人がいるとするなら、働く人の幸せが我々の幸せであることを、何度でも伝えます。