第二新卒・既卒に特化した就職支援をおこなう就活エージェントUZUZ(ウズウズ)。2012年の設立後、独自戦略を次々と打ち出し、22年には従業員90人、2支店、関連企業2社を持つまでに成長した。独自戦略が生まれる経緯や第二新卒・既卒に特化する理由、今後の展望などを、代表取締役社長の岡本啓毅氏に詳しく聞いた。

第二新卒・既卒者の人材紹介で定着率96.8%!

御社の事業内容をお聞かせください。

第二新卒や既卒に特化した人材紹介をしています。社会では、能力が高くても第二新卒や既卒というだけで「使えない」「根性がない」と思われ、採用されにくくなる傾向があります。確かに、就職先が思っていた仕事と違ったり、高い目標に耐えきれなかったりして短期離職する新卒はいます。事実、新卒(大学卒)の3割は3年以内に辞めるというデータがありますし、私自身も短期離職の経験があります。

新卒入社は一般的にファーストキャリアで、ほとんどの人は社会人経験がありません。経験のない世界を想像しながら就活するため、時には想像と現実が乖離してしまうこともあります。そういった事実をふまえて、私たちは就職後に「こんなはずじゃなかった……」とならない就活支援の提供を心がけています。カウンセリングや面接対策の際「企業で働くとはどういうことか」「従業員の役割は何か」などを社会人の目線で伝え、求職者の方に納得してもらった上でサポートするようにしています。

合わせて、ITを中心としたオリジナルスクール「UZUZ COLLEGE(ウズウズカレッジ)」も運営中です。これは「第二新卒や既卒者があらかじめキャリア教育を受けて就職すれば、ミスマッチを減らせるのではないか」という考えから、16年に開設しました。スキルと社会人感覚を身に着けて就職できるスクールということで、おかげさまで弊社が紹介した人材の入社半年後の定着率は96.8% と、業界トップクラスです。現在は同カレッジのコンテンツを、自治体のDX事業や都が運営する就職トレーニングなどに提供しています。

SESの問題点をクリアしエンジニア業界を魅力的に

また、子会社のESES(イーエス)では「よいSES(システムエンジニアリングサービス)事業」を展開しています。

「よい」SESとは?

SESの問題を解決し、エンジニアが働きやすい環境の提供を目指すという意味です。社名も「よいSES=E(イー)- SES」という思いを込めています。

SESの働き方には3つの問題があります。1. 評価が曖昧、2. 案件が選べない(同じキャリアやスキルの積み上げができない)、3. 会社のマージンが高く従業員への報酬が低い、という点です。これらの問題点が、SES全体のイメージを悪くし就業希望者の減少にもつながっていると考えています。

ESESでは、単価や評価指標を明示し、案件を選べるようにしています。報酬は現在73%還元しており、30年までに80%還元を目指しています。

就活サポート動画配信で毎月300人前後の求職者を獲得

第二新卒や既卒は新卒よりも就職が難しいですが、それでも勝算があると思った理由は?

UZUZは、第二新卒特化の就活サイトを買収し設立した会社です。元々のコンセプトをそのまま踏襲したので、勝算ありきではないんです。勝算だけなら、当時から新卒のほうが確実でした。ただそれでも私としては第二新卒・既卒が抱える「就職しにくい」という問題を解決したい思いが強く、それが今日に至るまで会社の事業の根幹となっています。今後は新卒や他の領域の支援サービスも加わると思いますが、第二新卒・既卒をサポートしたい思いは、これからも変わりません。

求職者はどのように集めていますか?

創業以来ずっと、SEO対策やSNSやYouTubeなどの手法で集客しています。外部に依存しない集客体制により、一般的な人材紹介会社と比べると広告費を1/3ほどに抑えられています。創業時の弊社は、本当にお金がありませんでした。その中で、どうやって求職者に弊社を知ってもらうか考え、始めたことが、SEO対策とWeb上での情報発信です。当時はSNSや動画で集客する競合がいなかったので、発信さえ続けていれば求職者が集まるブルーオーシャンでした。といっても、社内にWebスキルがある人はいなかったため、ネットで詳しそうな人を探してはレクチャーしてもらい、自力でノウハウを蓄積しました。

YouTubeに関しては、いまも自社で企画から台本作成、撮影を行っています。外注する考え方もあると思いますが、必要なコンテンツや伝えたいメッセージが分かるのは自分たちだけです。正直な話とても大変な作業なので、集客できると分かっていても作り続けられる人は少ないと思います。でもだからこそ、続けていれば勝てるんですよね。YouTubeから月200~300人の求職者が来ますが、動画の再生回数300~400万回から考えると、まだまだ人数を延ばせる可能性はあると思っています。

人事や人材会社向けのサービスも展開していると聞きました。

HRの悩みやマーケ情報をなんでも相談・共有できるクローズドコミュニティ「採用マーケ知恵袋※」を21年から始めました。採用・集客・マーケなどは、会社にとって重要な項目であるにも関わらず、明確な答えを探すのが難しいものでもあります。事実、私自身もUZUZのマーケティング業務に携わる上で、数多くの失敗をしながら手探りで進めてきました。そういった経験からも、人事や経営者が採用周りの悩みを気兼ねなく相談でき、ほしい情報をちゃんと得られる場所があるといいなと思ったのが始まりです。

現在は採用やマーケに関する情報提供はもちろん、優秀な人材に自社を選んでもらうためのハウツーなども提供し、採用の参考にしてもらっています。

参加費が月額500円と格安なので利益度外視での運営ですが、“生”の情報を得られる場所や具体的なノウハウを学べる場所は少ないため、参加者からの満足度は非常に高く、すでに会員数は130名を超えています。

※採用マーケ知恵袋
https://uzuz.jp/saiyo-marketing-chiebukuro/

御社スタッフの採用基準にもこだわりがあるそうですね。

現在は新卒採用を行わず、第二新卒や既卒就活の経験がある人のみ採用しています。これは第二新卒や既卒経験者であれば、弊社を利用してくださる求職者の苦労や気持ちが分かると思ったからです。ただ、教育事業や新卒支援などにも事業領域が広がっていることなどから、今後は第二新卒や既卒にこだわらず、自社にマッチしている方は採用していく予定です。。

既存の事業を拡大しつつ、外国人人材が「日本で働きたい」と思える環境を整えたい

今後の展望は?

外国人人材向けの日本語学校を作りたいと思い、現在自治体に働きかけています。日本はこれから労働力不足となる一方ですが、日本で働きたいと思ってくれている外国人に対して、日本社会は働きやすい土壌を提供できていません。今はまだ、日本より賃金が安い国から労働者が来てくれますが、それらの国も、いずれは賃金が上昇して日本で働く必要がなくなります。そうなる前に「日本で働きたい」と思ってもらえる環境を整えたいと思っています。

具体的な流れはこうです。まずは日本語学校を作り、現地で採用した優秀な人材に学んでもらう。次にITや介護などの専門学校を作り、専門性を磨いてもらう。このスキームができれば、就職後もちゃんと活躍できる人材としてを社会に送り出していけると考えています。

こうした新たな取り組みに力を入れつつ、既存の就業支援もさらにパワーアップさせていく予定です。先ほども少し触れましたが、今後は後期新卒の就活支援にも注力していきます。

既卒の支援をしていたからこそ感じる部分としては、新卒時の方が職業選択肢が圧倒的に広い、という点です。新卒の就活市場においては、就活前半戦ではエージェントの介在価値はそこまで高くないでしょう。しかし就活に苦戦している後期新卒生に対してであれば、UZUZが今まで培ってきたノウハウが役に立つのではないかと感じています。

これらの計画は、いずれも実現に向けて動いていますが、明確な期限や目標は立てていません。私自身は高い目標を持つとやる気がみなぎるタイプですが、そうでないスタッフも少なからずいます。目標や期限がストレスになっては意味がないので、それよりも「求職者やクライアント企業が抱える問題を解決する」という使命に向き合って地道に活動していくことが大切だと思います。そのほうが、ダメだったときに「じゃあ別の方法に変えよう!」と軌道修正しやすいですしね。