東北・北陸企業に合わせた地域密着コンサルティングを強みに年商10億を目指す

東北・北陸地方を中心に人材紹介・派遣をおこなう広済堂ビジネスサポートは、官民一体で学習の機会を創出する「日本リスキリングコンソーシアム」への参画や、特定技能外国人雇用の手続きを簡単にする「タレントアジアシステム」の開発など、採用周りの取り組みにも積極的だ。取り組みの経緯や意図を取材したところ、東北・北陸地方ならではの採用活性化が軸にあると分かった。2022年7月に代表取締役に就任した、正尺俊樹氏に詳しく聞いた。

求人誌掲載企業が実際に採用できるまでサポートを

最初に、御社の事業内容をお聞かせいただけますか。

広済堂ビジネスサポートは、東北・北陸地方を中心に事業展開する人材紹介・派遣会社です。広済堂ホールディングスの子会社として2011年に設立しました。クライアント企業は東北・北陸地方が中心ですが、応募者や求職者は関東が60%、東北・北陸が40%で、他にベトナムなど海外の求職者もサポートしています。

なぜ、東北・北陸地方にフォーカスするのでしょうか。

広済堂は1949年に印刷会社として創業し、長きにわたり印刷・出版物に携わってきました。中でも、事業の一環である東北・北陸地方向け求人媒体「Workin(ワーキン)」の発行は40年以上の歴史があり、何年、何十年と出稿いただいている会社もあります(現在は広済堂HRソリューションズ運営)。出稿社との付き合いを深めるうち、「掲載して終わりではなく、採用が実現するまでをサポートしたい」という思いが高まり、東北・北陸地方を中心とした人材紹介・派遣サービスを開始するとともに、当社を設立しました。

広済堂ホールディングスの本社は東京ですが、求人媒体の発行エリアを東北・北陸にした理由は?

求人媒体の競合他社に勝つ、もしくはすみ分けをする策を探していたときに、東北・北陸地方の求人事情や媒体に開拓の余地を感じたのがきっかけです。関東とは就職事情も企業文化も違いますので、地域に寄り添った媒体を作ろうという理由からでした。

働く人のスキルアップ支援で東北・北陸企業を活性化

東北・北陸地方ならではの営業の特徴がありましたら教えてください。

東北・北陸地方は地場産業が多く、地域に根付いた文化を大事にする企業がいまも多くあります。そこに新しい視点を取り込めば、飛躍的に事業展開できるポテンシャルも秘めています。しかしながら、新しい何かを取り入れるときには不安や疑問、反対意見が付きまといます。我々は、お客様が賛同してくださるまで何度でも足を運び、顔を突き合わせて説明をします。泥臭くアナログな手法ですが、お客様との信頼関係は足でかせぐのが基本だと私は考えます。幸い、東北・北陸地方は電話や対面でのやりとりを好まれる企業が比較的多いので、なるべく直接会うようにしています。また、東北・北陸地方の企業の採用は経営者が担当することが多く、直接お会いするとその場で話がまとまりやすい点も特徴です。

ゆくゆくは全国展開も視野に入れているのでしょうか。

将来的にあるかもしれませんが、東北・北陸地方の企業、求職者の課題はまだ多く存在しますので、まずは課題解決の支援をしたいと思います。東北・北陸地方の企業には、デジタル化が進まずインターネットやリモート操作の業務経験がない従業員が、一定数います。この方々がデジタルツールを使えるようになるだけで作業効率が上がり、ともすれば新規雇用が不要になる可能性すらあります。また、デジタルツールに対応できるようになった従業員は転職しやすくなるので、人材流動化につながります。我々は、地元で働く人たちのスキルアップの機会を提供し、人材の流動性を高め、東北・北陸企業の活性化をサポートしたいと考えています。一方で、東北・北陸地方の人材などのデータは全国にニーズがありますので、データ活用に関しては全国展開を視野に入れています。

スキルアップ支援に関わる点は、御社が「日本リスキリングコンソーシアム」に参画されたことも関係しますか?

そうですね。「日本リスキリングコンソーシアム」は官民一体となって日本国民のスキルアップを目指す活動で、2022年6月に発足しました。我々は、グループ会社の広済堂HRソリューションズと共同で、ジョブマッチングパートナーとして就労支援をします。シングルマザーにエンジニアスキルを学ぶ場を提供するなどし、東北・北陸地方を中心に人手不足解消に努めます。

グループ企業とデータ共有し事業領域を拡大

正尺さんは2022年7月に代表取締役に就任されましたが、その前のご経歴をお聞かせいただけますか。

私は福岡県の6年制大学を中退して上京し、東京の大学の法学部に入り直し、卒業しました。その後、アルバイトをしながら司法試験を3度受験しましたが合格できず、そのまま34歳までアルバイトをしながら生活しました。

34歳のある日、さすがに「きちんと働かないといけない」と焦り始め、見つけた仕事の窓口は派遣会社でした。その仕事で派遣社員として働くうち、派遣先の業務委託会社から社員雇用の話があり、2011年に正社員となりました。そこで人材派遣・人材紹介事業の構築に携わった後、2016年に広済堂へ入社しました。

入社後は、人材ソリューション部の部長として不動産・建築業界の人材紹介に携わるとともに、グループ会社の広済堂ネクスト(情報ソリューション)や広済堂HRソリューションズ(人材サービス・BPO)と連携した事業展開の舵をとりました。

入社6年目の正尺さんが代表取締役に指名された理由を、ご自身ではどのようにお考えですか?

会社として東北・北陸地方の課題を本気で解決するために人材紹介に力を入れていきたい思いがあり、私のプレイヤーとしての実績が評価されたこともあるかと思いますが、グループ企業のシナジーを生み出すために必要とされた点は大きいと思います。私はかねてより、グループ会社ごとの取引先情報や人材データなどを一括管理し、分析、活用する道を模索してきました。グループで取引先や求職者のデータを共有できれば、仮に当社とは取引休止中の企業でも、グループ会社の顧客になりえる可能性などが見いだせます。それにより各法人の守備範囲が広がり、紹介できる人材も増やせます。現在はポーターズのシステムで情報共有する段階までは進んでいますが、今後は分析にも活用していこうと考えています。

年商10億を目指し未経験者・外国人雇用を促進

最後に、今後の展開をお聞かせください。

直近の目標として、2023年までに年商10億を目指します。現在の倍です。そのための取り組みの一つとして、製造現場で働く人材の派遣・紹介・育成を促進します。東北・北陸は半導体などの製造工場が多く、製造現場の人材ニーズがとても高いエリアです。一方で、製造現場で働く人は慢性的に不足しています。そんな中で即戦力の経験者を求人しても集まらないのが現状。未経験者を採用し、現場で育てることも必要になります。現場で技術を習得しながら働いてもらうことを視野に入れれば、働き手は増やせます。この点をクライアント企業に説明し、採用の間口を広げてもらうためには、やはり何度も足を運び、地道に、丁寧に説明することが大切です。それと同時に、我々はグループ企業で共有する人材データを使い、もっとも適した人材を紹介・派遣できるようにしていく予定です。

合わせて、特定技能外国人雇用のシェアを全体の7%にしたいと考えています。特定技能外国人の雇用は少しずつ浸透してきましたが、課題の一つに手続きの煩雑さがありました。この点を簡単にできれば外国人雇用が加速すると考え、特定技能外国人雇用の負担を大幅に軽減する総合支援システム 「タレントアジア(TalentAsia)システム」を当社からリリースしました。これにより、外部に委託することなく、自社で簡単に書類作成・申請・届出・支援ができるようになりました。当社試算では、管理コスト60%減、支援業務の工数50%以上減が可能になります。さらに、求人媒体「ワーキン」の運営を担当する広済堂HRソリューションズと共同で、求人がうまく進まない企業の採用サポート事業も進めていきます。