事業の奥行きと幅を同時に拡大し、更なる成長を目指す
2022年12月19日、対面型人材サービス会社として知られるマイナビワークスの代表取締役社長が交代した。新社長の意気込み、未来の展望などについて、マイナビワークス新社長の河原輝篤氏に聞いた。
まさに青天の霹靂(へきれき)。突然の社長内示
社長ご就任おめでとうございます。最初に、御社の事業内容と河原さんのご経歴についてお聞かせください。
ありがとうございます。マイナビワークスは、人材派遣をはじめ、20代の若年層やクリエイターの人材紹介を中心に事業を展開している対面型人材ビジネス会社で、マイナビのグループ企業です。私は、1992年4月に当時の毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)へ新卒で入社し、九州支社に配属となりました。入社当初は、福岡県・長崎県を中心に、新卒採用を検討されている法人企業に対するコンサルティング営業に従事していました。電話帳のような重く分厚い大学生向けの就職情報誌を見本紙として持ち歩き、様々な企業へ訪問していたのは、今でも本当に良い思い出です。
1997年に現在のマイナビワークスの前身となる人材派遣事業部が東京で新設され、1999年10月に九州支社でも人材派遣事業を開始することが決まりました。その際、立ち上げメンバーとして異動し、そこから23年以上、人材派遣を中心とした対面型人材ビジネスに携わることとなりました。2011年にマイナビエージェントの大阪支社長、2012年にマイナビの派遣事業部長、2016年の分社化後は、マイナビワークス取締役、2020年に同社常務取締役を経て、2022年12月に代表取締役社長へ就任しました。
内示を受けた時も含め、代表取締役社長へ就任した率直な気持ちをお聞かせください。
2022年10月下旬に、前社長(現取締役会長)の滝口と一緒に喫茶店へ行った際、何の前触れもなく、「12月の取締役会で、河原に社長を交代するから」と突然言われ、とにかくビックリして言葉が出なかったのを、今でもはっきり覚えています。まさに青天の霹靂でした。
1997年に人材派遣事業を開始して以来、長らく事業を担ってきた滝口の後を受ける形だったため、少なからずプレッシャーは感じました。しかしそれ以上に、マイナビワークスの新たなステージを創っていけるというやりがいと喜びを感じました。また同時に、我々のサービスを通じて、今まで以上に新たな雇用創出や求職者のキャリア形成、企業の人材戦略など、企業と求職者のニーズに貢献できるよう、尽力したいと考えております。
「企業と求職者のニーズに応える」がキーワード
御社の現在までのビジネス展開について、教えてください。
1997年にマイナビの一事業として人材派遣サービスを立ち上げました。しかしながら、我々は同業他社の中では後発の派遣会社だったため、同業他社と同じ切り口ではなかなか成長しないと考えました。そこでマイナビの新卒採用領域で様々な印刷会社や制作会社と取引があったことや、Macintoshが出始めた時期だったため、クリエイティブ系の職種に強みを持つ派遣会社を目指しました。その後、人材派遣サービスで一番ニーズの高いオフィスワーク系職種も強化し、着実に人材派遣事業を成長させていきました。
しかし人材派遣サービスだけでは、企業や求職者のニーズに応えることができないと感じたことに加え、日本社会における少子高齢化も鑑み、2011年12月に20代に特化した人材紹介サービス「マイナビジョブ20’s」を、2013年4月には今までの人材派遣の強みを活かして、クリエイティブ系の人材紹介サービス「マイナビクリエイター」を立ち上げ、人材紹介サービスの強化を図りました。
また2015年の派遣法改正などをうけ、派遣スタッフのキャリア形成、キャリアビジョンを今まで以上に考え、2016年12月に派遣期間の制限がない無期雇用派遣サービス「マイナビキャリレーション」を開始しました。2017年3月には、人材派遣、人材紹介だけでなく、WEBを中心とした制作関連業務に関して、制作請負、常駐(SES)にも対応できるよう、総合制作アウトソーシングサービス「マイナビクリエイティブファクトリー」を立ち上げ、今まで以上に企業や求職者のニーズに応えられる体制を整備してきました。
「企業と求職者のニーズに応える」というのがキーワードのようですが、その他にこのキーワードに関連して新たに生まれたサービスはございますか?
2018年3月に誰でも無料で簡単にクオリティの高いポートフォリオ(制作作品集)を作成できる「MATCHBOX(マッチボックス)」というツールを開発しました。これも企業や求職者のニーズに応えたいという想いがきっかけで、誕生しました。
取引先である求人企業へクリエイティブ職種の求職者を紹介する際、どのような経験を積んで、どのような制作に携わってきたかをできるだけ正確に伝えるためにポートフォリオを提出することが一般的です。しかし、クオリティを追及したポートフォリオを作成したいと考える求職者は多いものの、働きながらだと作成する時間が取れず、推薦時までにポートフォリオが完成していないということが多くありました。結果、ポートフォリオを求人企業へ提出することができず、求職者の正確なスキルを伝えられないことが、人材紹介会社として懸念点となっておりました。実際、「マイナビクリエイター」で調査を行ったところ、クリエイティブ職種の求職者の約8割がポートフォリオとして自身のスキルや経験を情報化できていないということが判明しました。そこで短時間でクオリティの高いポートフォリオを簡単に作成できるツールがあれば、企業・求職者双方にメリットがあると考え、協力会社と共に、「MATCHBOX」を開発しました。また2022年4月には、「MATCHBOX」にクリエイティブ人材と企業を繋げるマッチングサービスの機能も追加し、求人企業の採用担当者が「MATCHBOX」に登録している求職者へ直接面接のオファーができるスカウトサービスをリリースしました。それにより、今まで以上により良いマッチングが可能になりました。
その他、スキルや経験が浅く、希望するクリエイティブ職種の業務に従事できない求職者を、短期間当社で雇用し、研修だけでなく社内で実務経験を積ませた後、我々が展開しているサービスを通じて、人材派遣、人材紹介、SES、社内制作スタッフのいずれかで就業の機会を与える「WEB系人材育成プロジェクト」を進め、クリエイティブ人材の雇用の場を創出しました。また、企業の採用担当者の目線に立って、簡単に短期間で採用サイトを作成したい企業向けに月額2万円のサブスクリプション型採用ツールパッケージ「de-connect(ディーコネクト)」を新サービスとして開発しました。
働き手の「困った」をスピード解決する点は、一瞬のチャンスを逃さない営業の視点によるところかと思うのですが。
そうかもしれません。当社は私も、前社長も営業経験者です。また役職者にも営業経験者が多く、スピード感の重要性を共通認識として持っています。商談の成立や新企画立案の際、絶好のチャンスを逃さないために、例えば企画書や稟議書の決裁もできるだけスピード感をもって対応できるよう心掛けています。現場の意向に対して意思決定をスピーディーにし、しっかりとフローの構築などを行い実装する、という一連の流れでチャンスを逃さないようにしています。
中規模企業ならではの「丁寧・小回り・スピード」を大切に
御社は「対面」を大切にされている点が特徴的です。その理由を教えていただけますか。
今後、様々な形でDX化を推し進め効率化を図っていく予定ですが、一方、求職者や取引先のニーズをもとに私たちが求職者としっかりと向き合い、それぞれが活きる働き方や秘めた可能性を見出し、取引先へ送り出す方が求職者と取引先双方にとってプラスにはたらくとも考えています。そのため、できるだけ対面で面接や面談をすることに注力しています。特に「マイナビキャリレーション」は、若年層の社会人経験や事務経験の浅い求職者を当社で無期雇用者として雇い入れ、派遣先にて就業いただく育成型のサービスとなりますが、採用選考では、2回の面接と共に、外部講師を招いたビジネスコミュニケーションやマナー研修を経て、当社で採用の可否を決定しています。また採用後も、PC研修はもちろんのこと、営業とCAがそれぞれ担当につき、就業開始後のフォローなども丁寧に行っていく体制となっています。
育成型のサービスのため、スタッフには事務経験を積んでもらうと共に、自分自身の今後のキャリアについて、CAや営業と伴奏しながら形成させています。また、「無期雇用者」として安定的に働くことができる環境を整えることで、スタッフの活動の場も広がり、派遣先で責任のある仕事を任されたいという前向きな気持ちが強くなり、頑張ってくれている方も多いと感じています。細やかなフォローを大切にしているからこそ、スタッフとCA・営業との関係性が構築されているのだと思います。
派遣先に、キャリレーションの研修内容を伝えると驚かれることが多いです。取引先として当社を選んでいただく際に、中規模企業だからこそできる「丁寧・小回り・スピード」の質が活きてくるのだと考えています。そのため当社では、対面での対応を大切に考え、サービスの質の向上に努めています。
様々な企業と求職者の課題解決やニーズに応えられるよう、グループの連携を強化
様々なサービスや取り組みを積極的に展開されていますが、最後に今後の展望をお聞かせください。
少子高齢化が進む中、生産年齢人口(15~64歳)の減少は、今後ますます加速することは明白です。その中で、女性やシニア層をはじめ、介護や子育てなどにより労働時間に制限のある求職者たちが、今以上に労働市場で活躍できる環境を作ることがひとつの対策になると考えます。そのためテレワークなど多様な働き方を推進し、より多くの求職者が今までの経験やキャリアを活かし活躍できる場を提供できるよう、推し進めたいと考えています。
また派遣スタッフのキャリア形成を考えたコンサルティング力や、働き方のニーズに合ったサービス・取り組みを強化することにより、「派遣で働く魅力」を今以上に求職者へ訴求し、「求職者(派遣スタッフ)に選ばれる派遣会社」になりたいとも考えています。
最後に、今まではマイナビワークスとして、領域やサービスの種類ごとに縦割りにして奥行きをだし、知識や情報を深掘りし、より高品質なサービスを提供することに注力してきました。結果、とてもいい成果が生まれましたが、今後は奥行きに加え、親会社であるマイナビを含めたグループの横の連携を今まで以上に強化し、マイナビグループの総力を結集して、ワンストップで様々な企業や求職者の課題解決やニーズに応えられるよう、社の垣根を超えた提案やサービスを提供できるようにしていきたいと考えています。