「働く」を求める人へ幅広く「働く」を提供する
企業の採用力を底上げする総合人材サービスへ

2023年1月に発表されたオリコン顧客満足度®調査「人材派遣会社」部門で5年連続総合第1位を獲得した、東京海上日動キャリアサービス。同社は22年7月に代表取締役社長が交代し、新社長に五十嵐逸郎氏が就任した。社長交代の意味や、五十嵐新社長が思い描く事業の展望などについて詳しく聞いた。

「人」から生まれる信頼は保険会社も人材サービスも同じ

社長ご就任、おめでとうございます。あらためて、御社の事業内容を教えてください。

当社は人材派遣を中心に、人材紹介や請負、採用コンサルティング、転職支援サービスなどをおこなう、東京海上グループの総合人材サービス企業です。1984年に東京海上キャリアサービスの名称で設立し、当初はグループの事務派遣がメインでしたが、徐々にグループ外への派遣や紹介、採用コンサルティングを手掛けながら、現在も事業拡大を続けています。

2022年の社長交代は、どのような経緯があったのでしょうか。

私は84年に東京海上火災保険に入社し、37年間、保険ビジネスに携わってきました。保険ビジネスは形のない商品を扱いますので、人が紡ぎ出す信頼がすべてのベースであり、People’s Businessと呼ばれています。業界は異なりますが「人」に関わる人材サービスという仕事に携わることになったのは何かご縁のようなものを感じます。
東京海上に入社後、まず営業部門に配属され、その後長年にわたり商品開発の仕事に携わってきました。執行役員就任後、17年からITやDX関連部署も担当しましたが、DXの流れが加速する中、これらの経験は今後、当社の事業を展開していくうえでとても役に立つのではないかと考えています。
 当社では数年前から働き方改革の一環でオフィスイノベーションを行なうとともにテレワークやペーパーレスの推進、Web会議やRPAの積極活用等、デジタル化を進めてきました。働き方の自由度が上がり、より創造力豊かに仕事ができる環境になってきていると思います。
 東京海上グループは保険事業で創業し、人と人とのつながりをとても大切にしてきたグループです。人のつながりから生まれる信頼の大切さは、人材サービスでも同じであり、このグループの強みを活かして、さらなる顧客満足につなげていきたいと考えています。

一人ひとりに合った「働く」を提供したい

御社は、シングルマザーやシニアなどの就労支援にも注力されています。直近ではどのような活動がありますでしょうか。

20年に始めた、経験と知識が豊富なシニアを中心としたプロフェッショナル人材(以下プロ人材)の活躍を目指す「PRODOR(プロドア)」は、プロ人材が企業の課題解決に向けて、コンサルティングに加えて実務も担当する「実働伴走型」の支援サービスです。プロ人材にもそれぞれのバックグラウンドがあるため、支援内容や頻度をクライアント企業様と相談しながら決定し、プロジェクトを遂行していただいています。
 20年12月にはパブリックリソース財団様と協働し、「働く力応援基金」を設立しました。同基金は、様々な理由で働くことが困難な人を働きがいのある就労につなげ、インクルーシブな世界の実現を目指しています。21年、22年の2年間でシングルマザーや障害者、生活困窮者、引きこもり、児童養護施設出身者などをサポートする全国の16団体に助成をおこなっております。当社の存在意義は、〝「働く」を求める人へ幅広く「働く」を提供する〟ことにあります。同基金を通じて、一人ひとりに合った「働く」を提供し続けると共に、活動を広げていきたいと考えています。

グループ協働の取り組みもあるのですか?

東京海上グループでは地方創生、地域活性化の支援に継続的に取り組んでいます。現在、東京海上日動社では約130の自治体と包括連携協定を締結しており、この協定に基づき地域の防災や健康、子育て、教育、中小企業支援など、行政が取り組んでいる様々な施策をグループを挙げて支援しています。例えば、ある自治体ではひとり親世帯の支援を行っていますが、当社はキャリアアップ研修やキャリアカウンセリング、就職先の紹介などを通じて自治体の取組みをサポートしています。

ちなみに、五十嵐社長個人にとっての「働く」への思いは?

新入社員の頃、父に「お前と会ってくれるお客様は、お前が東京海上の名刺を持っているから信用して会ってくれるんだぞ。まだまだお前個人が信頼されている訳ではない」と言われたことがあり、そのとき私は「五十嵐だから頼む、と言われるビジネスパーソンになりたい」、そう決意した記憶があります。それから月日が経ち、課長や部長といった管理職の立場になると、自分が頼られることより部署のメンバーが頼られたり褒められたりする姿を見ることが何倍も嬉しく感じるようになりました。現在は当社の社員や派遣スタッフの皆さんが活き活きと働き、クライアント企業様から頼られ、褒められる姿を見る瞬間に、自身の「働く」の意義を感じています。

保険会社ならではの意識が顧客満足度1位につながった

オリコンの顧客満足度調査で、御社は「人材派遣会社」部門で5年連続総合第1位を獲得していらっしゃいます。「登録・契約のしやすさ」においては7年連続1位です。

どの競合他社様も顧客満足度向上に尽力されてますので、当社が特別優れているといった認識は全くありません。強いていえば、当社は東京海上グループの会社で、人と人とのつながりが何よりの財産という意識が高く、それが人材サービスにも活きている点は当社ならではと言えるかもしれません。
 当社は『ひとりひとりの「働き方」に寄り添う力。』というブランドプロミスを掲げています。これは、多様な個性、多様な働き方に寄り添い、最適なソリューションを提供することを意味しています。先ほどお話したシングルマザーやシニアなどの「働く」をサポートしたり、派遣登録や契約がしやすい環境づくりといった取組みはブランドプロミスを体現したものだと思います。当社の派遣登録者は、育児や介護などで一時期仕事を離れていた40歳以上の女性も多く、インターネットでの登録や契約が苦手な人も少なくありません。そこで当社のサイトは、インターネットが苦手な人でも登録しやすいように改良を重ねてきました。それでも登録方法がよく分からない場合は、当社スタッフが丁寧に説明をしています。この点が、登録・契約のしやすさの評価につながっているのかもしれません。
 また、ライフステージの変化やデジタル化に伴う職種の変化を余儀なくされた派遣スタッフの方々に対するキャリアコンサルティングも強化しています。コロナをきっかけにオンライン研修の機会を増やしたり、オンデマンドで提供したりして利便性を高めたことで、受講率は上向きになってきています。
 社内では、派遣スタッフやクライアント企業様の声を業務改善につなげるための「業務品質向上サイクル検討会」を隔月開催しています。毎回20~30件届く声を一つひとつ共有し、当社対応の妥当性の検証や再発防止策の検討を行っています。社内の人間だけでは偏った見方になるおそれもあるので、弁護士など外部有識者にも参加してもらっています。1件1件は小さな声かもしれませんが、地道にスタッフさんやクライアント企業様の不満や疑問を取り除いていくことが、安心や信頼につながっているのではないかと思います。
 また、スマホで手軽に閲覧できるデジタル社内報では「私にとってのブランドプロミス」等、様々な企画を実施し、社員同士が各自の取組みをシェアし合うことで、常にブランドプロミスを意識できる環境を整えています。

蓄積した知見を企業の採用力アップ支援に活かす

今後注力していく予定の事業や展望はありますか?

当社には、クライアント企業様の要望に応じてスタッフを派遣するだけでなく、その企業自体の採用力を高めるための支援を行う、採用コンサルティングの専門部署があります。同部署では、企業の強みや理念を深く理解して採用力向上につながる採用スキームを構築・提案するとともに、採用市場で価値ある企業であることを認知していただくためのブランディングをサポートすることもあります。採用市場は常に変化し、採用企業の課題も千差万別です。当社は売上の約9割が派遣事業ですが、今後は派遣以外の採用支援やコンサルティング事業にも注力し、お客様のニーズに合った最適な提案ができる総合人材サービス企業になりたいと考えています。