営業・販売支援企業として25期目を迎えたセレブリックスが2022年11月、営業パーソンに特化した転職・キャリア支援サービス「SQiL Career Agent」を開始した。同社にあるべくして生まれたサービスではあるものの、その背景には、新規事業開発室ゼネラルマネージャー・梅田翔五氏のキャリアと営業職への思いなくしては語れない誕生秘話があった。
1万2,000以上の商品営業経験を活かした営業特化型の転職サービスを開始
最初に、御社の事業内容をお聞かせください。
セレブリックスは、1992年に創業した営業コンサルティングおよび営業代行サービス会社です。事業は、大きく営業支援と人材支援に分かれています。営業支援事業は、営業コンサルティング、営業研修、営業代行など、法人営業や新規開拓営業を中心とした支援サービスです。これまで1万2千以上の商品やサービスの営業支援を実施しており、「お客様の買わない理由をなくすメソッド」を核に、クライアント企業の発展をお手伝いしています。
私が現在事業責任者を務めている、営業パーソンに特化した転職・キャリア支援サービス「SQiL Career Agent」(スキルキャリアエージェント)は、2022年11月にローンチした新規事業です。
人材支援事業は、販売員派遣やリアルプロモーション、フィールドマーケティング、人材採用などの支援をしています。
「SQiL Career Agent」は、人材支援ではなく営業支援のカンパニーに属するのですね。なぜ人材ではなく営業支援事業なのですか?
営業パーソンの転職支援は、営業支援事業の延長線上にあり、営業を支援するクライアント企業のさらなるサポート・サービスの側面があるからです。当社の営業スキルとノウハウがあれば、営業経験者はもちろん、企業が求めるスキルを持つ営業パーソンを育成してからご紹介することも可能と考えています。
営業と一口に言っても、有形と無形ではその方法がまったく違います。また、販売先が個人か企業かでも異なりますし、業界によっても求められる知識やスキルが変わります。当社はこれまで1万2千以上の商材の営業を支援してきましたので、それぞれの営業の違いを解像度高く理解しています。さらに現在、約8,000人のアンケート調査から営業スキルをデータ化しており、各企業が求めるスキルや、求職者ごとの必要なスキルを可視化できるようになってきています。
また、カッツ理論(米国の経営学者ロバート・カッツが提唱したビジネススキルと人材の関係理論)で挙げられる、テクニカル・ヒューマン・コンセプチュアルの3スキルを求職者ごとに分析し、より精度の高いマッチングにつなげるなど、更なる「営業スキルの可視化」も検討中です。
営業職は希望ある仕事だと伝えたい
「Be The HOPE」をパーパスに掲げた経緯をお聞かせください。
営業職はときに敬遠されがちな仕事で、学生からは不人気職種として語られることもありますが営業職がいなければ売上はつくれません。多くの企業にとって、営業はなくてはならない存在です。また、営業職は、未経験から始められる間口の広さを持ちながら、その後の幅広いキャリアシフトをも可能にします。広報やマーケター、採用人事などは、営業職から転身された方も多いでしょう。私は、そんな営業は、希望ある仕事だと伝えていきたいと思っています。
そして世の中の営業の人達にとって「CEREBRIXが希望になる」という意味もこのパーパスに込められています。
梅田さんはもともと営業職だったのですか?
はい。私は新卒で大日本住友製薬(現住友ファーマ)に入社し、医師や薬剤師などに営業するMRという仕事を4年半続けました。ただ当時、私は働きながらブレイクダンスをしていまして、27歳のときに日本大会出場を経験したのを機に、会社を辞めてブレイクダンススタジオや大規模イベントを立ち上げました。人生一度きりなんだから、好きな仕事をしてみたい!という思いが強まった結果です。若気の至りですね(笑)
しかしながら、ダンスをビジネスにして生活をしていくのはやはり難しく、わずか1年半でその道を断念。ダンススタジオをたたみ、再び民間企業に就職することにしました。ところが、いちど会社員としてのキャリアを捨ててブレイクダンスを選んだ私の転職活動は、そう簡単ではありませんでした。学生時代の就活では面接がとても得意で、20件連続で面接が通過したり、大手の最終選考も10社以上保有していたこともありました。ですが、この時の転職活動では、一次面接でいきなり1社お見送り。書類が通らない企業も複数あり、社会の厳しさを目の当たりにしました。
そんな私に転職のヒントをくれたのが、当時たまたま知り合った転職エージェントの方でした。その方の真摯な対応やご支援をきっかけに私は、人のキャリアを支援する人材業界に興味を持ち、人材サービス企業のキャリアデザインセンターに転職しました。どうやら人材業界は自分に合っていたらしく、入社後早い段階で成果を上げることができ、ほぼ最速に近い形でマネジャーに昇進できました。
求職者ファーストのサービスを実現するため転職
未経験の人材サービスにおいてなぜ成果を出せたのでしょうか?
もともと人の話をじっくり聞いたり、ビジネスに関する勉強が好きだったというのは大きいと思います。キャリアアドバイザーは専門的知識を根拠として、求職者をご支援していく仕事なので、勉強をすればするほど、ご支援の幅が広がり、質も高まります。
また、僕自身が好きなことを仕事にして失敗したり、転職活動に少し苦戦したこともあり、求職者心理の理解度が高かったというのも要因の1つだと考えています。
マネージャーとして業務に従事をしていく中で変化はありましたか?
2つの変化がありました。一つ目は、顧客ファーストで迷いなく仕事に従事したいという気持ちが以前よりも強まったこと。二つ目は、決定して終わりではなく、継続利用や導入後の顧客の成功にコミットできるビジネスへの興味が生まれたことです。
そんな思いを持つ中、当時業界的にも注目が集まり出した従業員のメンタルヘルスのSaaS*ビジネスを展開する企業とご縁があり、人材育成と継続利用にコミットできるビジネスに携われる機会を得て転職しました。その後、友人であった当社執行役員CMOの今井晶也氏の誘いがあり、新規事業の立ち上げをミッションに当社へ入社しました。
今井さんは、人材事業を立ち上げるために梅田さんに声を掛けたのですか?
いえ。私は別事業の立ち上げメンバーとして入社しました。当時の私にとって、今井からの誘いはもう二度とないかもしれないチャンスに思えました。次に転職するときは、事業開発しかないと自分の中で決めていたからです。
しかし、入社直後に任された事業は数か月で方針を見直しすることになりました。そこから会社として成長するための新たな方向性を探っていくうち、セレブリックスと、私自身の既存のアセットを活用する、営業パーソン特化の転職支援サービスがもっとも当社に合っていて、成功の形が見えやすく、かつ私の理想であった求職者ファーストのビジネス展開を実現できると思い、今日に至ります。
ビジネスの成功は求職者の納得感で決まる
梅田さんにとって「成功の形」とは?
求職者ファーストの人材サービス提供をし、求職者が納得感を得られたときが真の成功だと考えています。
そのためには、面談などの工数は増えますし、CA(キャリアアドバイザー)の教育が重要で、人数はまずは少数精鋭という形になるでしょう。サービスの質を保つためには、CAの人数はおそらく20名程度までがしばらくは望ましいと考えます。新規事業ですので、会社に売上や利益で貢献する必要がありますが、その一方私は、むやみに事業を大きくすることだけが正解だと思っていません。我々のパーパス「Be The HOPE」を体現することが何よりも大切であり、売上至上主義で求職者に対する支援の質が落ちることは悪だと考えています。当事業は、納得感ある転職を実現してもらえるサービスの質が保てる範囲での限界を目指します。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
当社の強みである、営業パーソンの育成を強化する予定です。営業職としてキャリア形成をしたい方々に、スキルと実務経験を提供し、その後の転職やキャリアの支援まで行う一気通貫型の人材サービスです。
おそらくこれは我々以外の企業ではなかなかできません。また、営業スキルの可視化を進め、多くの営業パーソンが活躍できる社会形成の一助になりたいと考えています