強みは「育成」。学びから就労までをトータルサポート。成長産業への労働力移動を下支えする存在に

教育事業からスタートしたヒューマングループの中核事業会社で、総合人材カンパニーとして事業拡大を続けるヒューマンリソシア。 事業の軸は、昔も今も「教育」だという。 教育を軸にした「育成型」派遣・紹介サービスにこだわる意味や、日本企業が抱える労働人口問題への対策などについて、代表取締役の御旅屋 貢氏に聞いた。

30年前からリスキリングによる育成型人材派遣に着手

最初に、御旅屋様のご経歴をお聞かせください。

1995年にヒューマンリソシアの前身であるヒューマン・タッチ株式会社に入社しました。営業部門で部長職などを経験後、2つの支社の立ち上げなどを経て、09年に西日本事業部長、10年に首都圏営業本部長を務め、12年から代表取締役となりました。思えば、ゼロからの立ち上げが私の役割でした。

御社は人材業界の中でも特に教育に注力していらっしゃるイメージがあります。

ありがとうございます。ヒューマングループは、教育事業からスタートした会社です。ヒューマンリソシアが創業した当時、世の中にCAD(computer-aided design/コンピューター支援設計)という画期的なツールが登場しました。これまで手書きで製図し、間違えたら消しゴムで時間をかけてていねいに消していた作業が、CADならササっと書いたり消したりできるわけです。ところが、新ツールがゆえに操作できる人がいませんでした。そこで社会人教育を行うヒューマンアカデミーがCADオペレーターを育成し、卒業後の働き口をヒューマンリソシアが支援する流れを作りました。これが、教育した人材を社会に送り出す「育成型」派遣の始まりでした。

派遣業界全体の動きとして、これから教育支援を進めようとする勢いを感じますが、御社は創業当初から育成を軸にしてこられたのですね。

そうですね。ヒューマングループのビジネスモデルは、時代に必要な人材を育成し、学んだスキルを発揮できる働く場を提供していくことです。こうした意味では、30年以上前から、育成やリスキリングをベースに人材事業を続けてきましたね。

危機的人材不足のいまこそ大規模改革のチャンス

御旅屋様が考える、日本企業の労働課題を教えてください。

数々ありますが、最大の課題は、少子高齢化による労働力人口減少です。今後も労働力人口は一過性ではなく継続的に減り続けます。こうした中で、経済を維持し続けるためには、生産性の向上が必要です。幸いなことに技術革新が急速に進んでいますので、DXの活用1つの選択肢だと考えています。DX活用力次第で、企業の業績が大きく左右される時代になるでしょう。

もう一つの選択肢は、海外人材の活用です。世界に目を向けると、人口は増加していますし、アニメやマンガなど日本のポップカルチャーをきっかけに、日本に興味を持つ海外の方も多くいます。私たちはこうした、日本で生活してみたい、日本企業で働きたい、キャリアアップを図りたいと希望する海外人材の活用を、国内の企業に提案しています。世界各国から採用したITエンジニアや、建設系のCADやBIM/CIM(*1)エンジニアは、1千名を超えました。ビジネスのグローバル化やボーダレス化は進んでいますから、グローバルな競争力を高める意味でも、海外人材を積極的に活用していくべきではないでしょうか。

これまでにないスピードで社会は変化しています。これまで同様の人材派遣、人材紹介のみでは、企業のお役に立てないでしょう。私たち人材会社も、サービスの見直しを図る必要があると考えています。ヒューマンリソシアとしては、「労働力確保」に向け、DXと海外人材活用、この2つを軸に、人材派遣・人材紹介・受託サービス、そしてDX活用を組み合わせたサービスを提案していく考えです。

*1 BIM・CIM(Building Information Modeling・Construction Information Modeling/コンピューター上に立体モデルを構築し、設計や施工、維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行い効率化・高度化を図るためのソリューションおよびワークフロー)

御社はDXツールの販売も手掛けていらっしゃいますね。

RPA(Robotic Process Automation/事務処理などの定型業務を自動化するシステム)の販売から始め、いまではSaaS商材や生成AI活用プラットフォームなど、約30種類のDXツールを手掛けています。おかげさまで、RPAツール「WinActor®」の販売実績は、 NTTデータ社の販売特約店のうち、5年連続で販売力部門第1位(*2)として表彰されました。

*2 株式会社NTTデータ主催「NTT DATA RPA Partner AWARD 2022-2023」

素晴らしいご実績です。5年連続1位に選ばれた理由をどのようにお考えですか?

DXツールを販売する企業の多くは、システム系の会社です。そうした中、人材サービス会社である当社ならではの販売方法を考え、ツールの利活用支援に力点を置きました。どんなに便利なツールでも、使いこなせなければ意味がありません。そこで、全国9か所にRPAトレーニングセンターを作り、ツールを使いこなせるまでサポートする体制を整えました。

トレーニングセンターでは、導入企業のユーザー向けに、RPAを使いこなすための研修を行っています。またRPA導入時には、システムを動かすシナリオを作る必要がありますし、稼働後はシナリオのチューニング作業も必要です。こうしたサポートを、当社のエンジニアに加え、RPAスキルトレーニングを受けた派遣スタッフに担当してもらっています。オフィスワークの経験がある派遣スタッフの方にRPAスキルを身に付けていただき、RPA派遣エンジニアとして活躍していただくのです。

このように、「教育」を軸とした支援策を提供し、ツールの利活用までをサポートしていく取り組みが、お客様にご評価いただいたと自負しています。

海外人材の活用についてはいかがでしょうか。

ITや建設系企業を中心に、海外人材の需要が高まっています。特にIT人材は国内では枯渇していますし、領域によっては海外のほうが技術が進んでいますので、海外のIT人材に目を向ける企業も増えています。とはいえ、「ビジネスレベルの日本語ができないと……」と日本企業の多くの方はおっしゃいます。そこで私たちは、海外でエンジニアを採用し、日本語力を育成して、国内企業に派遣する仕組みを作りました。来日までに、現地で日本語を学んでもらうのです。実はこの日本語教育も、グループの教育ノウハウを基にしています。30年以上日本語学校を運営していますから、日本語コミュニケーション力を短期間で引き上げることが可能なのです。

しかし世界では、人材獲得競争が激化しています。日本企業が海外人材に選ばれ続けるためには、「日本語ができないと」と言っている場合ではありません。日本企業のマネジメント層も意識を変える必要があるでしょう。ダイバーシティ経営を進める中で、日本企業の人材採用競争力を上げていくことが、日本経済の活性化にもつながります。私たちの海外人材サービスを活用いただくことで、ダイバーシティ推進にも寄与できればと考えています。

人材不足のいまこそ大規模改革のチャンス

今後の数値目標や展望を教えてください。

現在の売上が約500億円ですから、1,000億円は視野に入れたいですね。おのずと就労いただく派遣スタッフも、倍の人数が必要となります。社会は、テクノロジーの進化や少子高齢化、働きかたの変化など大きく様変わりしていますから、求人に対して人材を募集し提案する従来通りの人材ビジネスでは賄いきれないでしょう。安定的かつ継続的に人材を提案し続けるために、「育成」を軸に人材の価値をあげることに注力する方針です。働く個人に対しては、スキルトレーニングにより、新たな職種や領域で活躍し、自身の働く価値を上げていただく、そして企業には、「育成」により付加価値の高い人材をご活用いただく、こうした「育成型」モデルを強化していきます。

育成面で強化する予定の取り組みはありますか?

これまでも、スキル保持者がいない成長産業で人材の育成体制を整え、プロフェッショナルを輩出してきました。これからも、成長産業に着目していきます。技術は日々進化していますから、新しい技術やツールを使いこなせるスキル保有者が次々と必要とされてきます。こうしたスキルを学べる場と働く場を作っていくことで、成長産業への労働力移動を下支えする存在となることを目指しています。

先行き不透明な時代においては、これまでのビジネスモデルや業界の概念にとらわれないサービスへと成長していくことが必要です。人材不足が危機的状況であるときこそ、大規模な改革ができるときでもあり、チャンスでもあります。海外やシニアなど幅広い層の人材、テレワークをはじめとする柔軟な働き方、派遣や紹介、有期や無期などのさまざまな雇用形態、さらにはDX活用と、多様なソリューションを掛け合わせ、新たな人材サービスを提案していく。これからの新しい未来にワクワクしている自分がいます。