2021年1月、企業の倒産が相次ぐコロナ禍にメーカー特化型転職エージェントとしてギブクリエーション創業。同社の代表取締役社長、才花裕平氏は、創業の3カ月前まで同業企業で働いていたという。この記事では、会社創業までの経緯と、才花氏が構想するビジョン、人材ビジネスの未来について取材した。新時代を躍動させる熱量と実現を描写させるインタビューとなった。
商売の基本は人を喜ばすこと。「キャリアが好転するか」その一点のみが判断基準
最初に、才花様のキャリアをお聞かせください。
私は新卒で業界最大手の資産運用会社へ就職し、その後メーカー専門の転職エージェントへ転身しました。私のキャリアにおける志向は、新卒当時から仕事に貪欲で、「営業スキルを高めたい」「高インセンティブな仕事がしたい」「社長になりたい」という漠然とした強い願望がありました。ただ当時の私は、「何がしたいか」ではなく、ただ「社長」という責任あるポジションに身を置いて、世の中に影響力を与えるような仕事をすることだけを想像していました。
転職後の新たな職場では、大手エージェントで長くキャリアを積んで活躍してきた先輩たちが多く、組織というよりも個人商店の集いの側面が強く、仕組みや教育体制は皆無。新入社員が放置されている状態である種、まさに求めていた環境でした(笑)「毎月40件訪問する」という目標を自ら課して、テレアポと顧客訪問を1年間続けました。泥臭い仕事が功を奏し、対人スキルはもちろんのこと、さまざまな障害や課題を克服し、解決策を見つける能力が養われたと思います。当時、50名未満の会社から数兆円規模の会社へ出向き商談の日々を送る中で、「スピード」と「数」というビジネスで最も重要といえるスキルセットが身につきました。また、顧客からは信頼をいただき結果でリターンする、つまり説得力、交渉力を向上させ提案を受け入れてもらう必要がありましたが、高速でPDCAを回していると、戦略的にアプローチすることの重要性、つまり大前提でセンターピンをどこに定めるかが如何に重要なのかを知りました。こうして自身の思考力が発展していく毎に、「ビジネス」の中毒におかされていったと思います。誰よりも早く出社し誰よりも働くようになり、時にはサラリーマンながら猪突猛進し「孤独」を感じるようにもなりました。入社数年が経った頃、自身の成長に違和感があり、新たな知識、成長機会を得るため、グロービス経営大学院へ入学しました。在学中、「顧客への最適な提案とは何か?」を自問自答する中で、転職支援の本質である「求職者に添った支援」への概念が欠けていることに違和感を覚え、「根本から解決したい」という思いと、従来の「社長になりたい」という漠然とした思いは、「社長という仕事をやりたい」しいては、「国益に寄与し日本経済に貢献したい」と明確なビジョンへ進化し、強い意志へ昇華されました。そして、2021年1月にメーカー特化型の転職エージェントとして、ギブクリエーションを創業、ビジョンを実現するための第一歩を踏み出します。
御社が掲げる「顧客ファースト」への想いと具体的な内容について教えていただけますか?
大原則として、商売の基本は人を喜ばすこと、最も多くの人を喜ばせたものが、最も大きく栄えると考えています。何よりもまず「お客様第一主義」ですね。お客様に尽くす。私は前職が同業界ですので、独立の際はそれなりに摩擦があり、苦労をしました。その中で、私を信じてくださったお客様には、感謝してもしきれません。お客様も社員にも自分を信じてくれた人の期待を超えたい。だから時間も体力も全てを仕事についやしています。朝4時55分に起床し23時30分まで稼働する。常にお客様と社員のことだけを考え続ける。そんな思いから、「顧客ファースト」を掲げています。
例えば求職者様に対するアプローチにおいて、私たちコンサルタントは、求職者様が自身の内に潜む言語化できない、大義、目的を定義しコンサルティングを行います。「キャリアが好転するか」その一点のみを判断基準として、今の環境が人生の最適解であるときには、迷うことなく、留まることもすすめております。「クライアント、しいては転職希望者の方々のイシューを見つけ出し、深く問う。そして、根本的な解決をする」という考え方が私の仕事の原点となっています。同業者からは、「そのアプローチでは、限界がきて売上が上がらない」と言われることもありますが、私はそうは思いません。「人生を左右するかも知れない選択」を最高品質のサービスで対応すれば売上は比例すると確信しています。
孤独、憂鬱、怒り、それらを足してもはるかに上回る希望とビジョン
創業した2021年1月はすでにコロナ禍でしたが、なぜこのタイミングで起業されたのでしょうか?
自分の中で独立を決めた直後でした。平成時代が終わり元号も変わり令和時代が到来。新しい時代と共に起業した私自身に、さらなる進化を推し進めるかのようにコロナウイルスが世界に蔓延したのを今でも覚えています。新型コロナが猛威を振るう中、世界のマーケットは、先の見えない状況に右往左往している、そんな中の起業でしたので、疑いようのない常識は、もしかすると今日で終わり明日には正しいとは限らないと、昨日まで正しかったことを本気で疑うようになり、コロナは私が構造的に見落としているものを可視化させてくれました。
先程、「独立の際はそれなりに摩擦が」とありましたが、前職と同業界での独立は、困難もあったのではないでしょうか?
人材業界に限らず、どの業界でも若手に対して独立を禁止する会社はまだまだ日本では多いと思います。私の場合は、前職の会社が独立を察知したあと顧客への連絡を遮断され翌日に退職、また、当時の社内メンバーや、過去のお取引があった企業様へ事実無根のネガティブキャンペーンを受けました。よくある漫画とかで出てくるような分かりやすい手法で本当にこんなことがあるのかと(笑)。お客様の方から「才花さんに手伝ってほしい」という声を沢山いただくことができ今がありますが、コロナで先行きが見えない転職市場の中での起業、さらにこのような行為を受けていたので、当時は正直きつかったです。独立後の登竜門として受け入れるしかありませんでした。ただ、孤独、憂鬱、怒り、それを足してもはるかに上回る希望とビジョンがありました。「まだまだやれる、やるしかない」と。
「自分は営業よりも社長に向いている」と思ったタイミングはありましたか?
以前から、売上高は個人、チームだけでなく会社全体を見る習慣があり、また自身の一価値観で判断せず、組織の最適化を最優先し、自身が汚れ役を買うこともありました。いつでも軸にあったのは「会社」にとってどうか。理由は、その方がリターンも大きく会社としてのROIが大きいと思い、自分は営業よりも経営に向いてるのではと感じていました。そして実際に社長になったわけですが、私個人の価値観として「社長が一番働く会社」が伸びると確信しています。また、そうでなければなりません。成功した後の姿は煌びやかに見えますが、成功するまでの努力が成功した後の姿をつくりあげる訳ですから。休むと、寝ていると追い越せない、追い越される世界。立ち止まるか、前に進むか、どれだけ長く続けられるか。社長に労働基準法はなく、大きなビジョンを掲げた以上、社員へ最高の福利厚生を届けなければいけない。それは会社を成長させ続け「成長」を感じさせてあげることだと思っています。
仕事は効率、人材教育は非効率化。独自の戦略で会社を前進させる
今後のビジョンについて教えてください。
規模を拡大し、世の中に影響力を与え日本経済に貢献したいです。「日本を代表する会社を創る」ことがビジョン。言語化されたのは会社を立ち上げる前です。20代半ばの時、サイバーエージェント藤田晋社長の「渋谷ではたらく社長の告白」を読み、「超えたい」と感じたことと、やるならトップを目指したいと考えました。創業前から目指すものがブレたことは一度もないですね。夢は逃げない、いつも逃げるのは自分だと。まだまだ無我夢中に追いかけ、自分が第一に成長して会社をどんどんスケールしたいです。
壮大な目標ですが、才花さんならビジョンを達成される光景が浮かびます。
必ずやります。社会課題の解決という、「使命感」に似た想いがありますね。企業が成長していくためには、「人的資本経営」の実践が不可欠で、様々な会社が課題を感じておられます。産業構造の急激な変化、少子高齢化、個人のキャリア観の変化など、取り巻く環境が大きく変わっている中、事業ポートフォリオにあわせて、人材を適切にマネジメントする仕組みやマニュアル、自分たちの会社や事業の社会的意義を明確にすることがより重要になると考えています。
御社は、ベンチャーでありながら離職率が低いことも特徴かと思います。どのような取り組みをされてるのでしょうか
経験者採用、新卒採用の面接では、「私の考えと価値観」を伝えています。特に新卒では面接フローが5回あり、最終面接は社長と会食です。私のメッセージを発信することを常に意識し、今後どう行動すべきか、自分たちの会社や事業の社会的意義を明確にすることを心がけていますので、入社後のギャップは比較的少ないことが、低い離職率につながっていると思います。こうして採用したギブクリエーションの社員は、とにかく「良い奴」が多いですね。良い奴とは、表面的とか上辺ではなく、思考が本質的でとことん目の前の事象と向き合います。仕事はどんどん効率化していきますが、人材教育に効率を求めてはいけない。そこに打開策がある。とことん非効率に仲間と向き合っています。
上司と部下の関係性はあくまでビジネスパートナー。
互いに価値を提供し続けなければならない
才花さんが思う優秀なメンバー像は?
仕事の再現性がある人。その人でなければ出来ないような個人に依存した仕事ではなく、その人が培ったノウハウは誰でも再現可能で、組織的に活用できるものであるか、感覚的でなく、具体的に言語化できること。単なる「気合で頑張ろうぜ」というような漠然としたモチベーションではなく、成果を上げるフローを、言葉と実践で人に伝えられる能力を持つ人ですね。
確かに。「なんとなく」で進む教育が多い中、再現性や育成ノウハウが詰まっていることがわかりました。今後のギブクリエーションの発展のカギになりそうですね。
ありがとうございます。ギブクリエーションでは、社員の殆どが自責思考です。部下を変えたいなら、最短距離は自分が変わること。それを理解しているメンバーが多いと思いますよ。世の中では、相手を変えようとすることが多いと思いますが、それは違います。自身が変われば、何を伝えればよかったのかと考え話す内容が変わり、矢印は自分に向きます。学び続けることって、時間がとられて大変なのですが、それは一時的にバランスを崩しても、中長期的には前以上に安定したバランスを取れるようになるので、経験則を身につけてあげることを意識していますね。マネジメントは、部下を放任しすぎても手をかけすぎても、後から自分にツケが回ってきて追い込まれるので。多くのミドルが上手くいかない理由はここにあります。任せて任さず、適切なバランスと成果の最大化を追求することが求められるので、うちのマネジメント層には口酸っぱくいつも言い続けています。逆に部下にとっての自分も同じ。上司と部下の関係性はあくまでビジネスパートナーです。互いに価値を提供し続けなければならない。最終的には努力をしたかどうかではなく、結果に伴う努力ができたかどうか。また、求められることは結果です。「早起きをせずに時間がない」「スキルを磨かずに結果が出ない」、それはそうです。人生は、思いのほか行動した通りになることは、過去の先人が教えてくれています。先ずは行動、二に行動、兎に角アクションが物を言うと思っています。人間の時間軸は過去でも未来でもなく今、出来ないことの大半は継続できずやらなかったから。人生は長期戦、成功は短期戦、今ならまだ間に合う、積み重ねると不可能は可能になる。今日も全部やります。