人材紹介のプロフェッショナル集団として世界No.1を目指す

英国創業の人材紹介グローバル企業、ジェイ エイ シー リクルートメント。設立から48年が経過したいま、同グループは人材紹介のプロフェッショナル集団として、 世界No.1を目指している。具体的な経営戦略について、ジェイ エイ シー リクルートメント常務取締役・事業本部長の山田広記氏に話を聞いた。

人の介在価値を求めて人材業界へ

最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

ジェイ エイ シー リクルートメントは1975年に英国で創業し、日本では1988年に設立されました。スペシャリストや管理職人材の紹介に特化し、コンサルテーション型の人材紹介会社としては、国内最大クラスの東証プライム市場上場企業です。国際ビジネス経験をもつ人材紹介が強みで、日本国内では外資系企業や日系企業の海外事業などのグローバル領域の採用を多数支援しています。

山田様のご経歴を教えてください。

私は新卒でキヤノンマーケティングジャパンへ入社し、直販営業を経験しました。若かった私は、当時「営業は代理店の販路のほうが効率的ではないか」と思いながら仕事をしていました。その気持ちを見透かした上司からの「メーカー本体がface to faceで商談することに価値がある」というアドバイスに衝撃を受け、自分が置かれた環境や与えられた仕事に誇りを持つようになりました。

キヤノンで働いた後、楽天へ転職しました。未来を見据えた会社で働きがいがありましたが、ソリューションやプロダクトを機能やクオリティだけで提案するより、自分を信頼して相談してくれるお客様との触れ合い、手触り感が好きだと改めて気づきました。手触り感があるface to faceの仕事がしたい、人の介在価値を突き詰めたいと思った私は、再び転職活動をして人材業界の道を選び、以降20年ほど従事しています。

分業型から両面型に移行しミドルエグゼクティブを中心に

人材業界は20年でどのように変化しましたか?

明らかに変わった点は、ハイレイヤーの流動化が盛んになったことです。私が業界に入ったころは、多くの企業が35才未満の採用をメインとしていましたが、08年のリーマンショックを境に、様子が変わり始めました。これまで社内の人材にこだわり、新規事業の立ち上げ時も社内人員の異動によって対応していた企業が、新規事業に必要な専門スキルを持った人材を社外から入れるようになり、自社の強みの選択と集中に重きを置く時代になりました。事業スピードの速さと人手不足が企業課題のひとつでもあり、知識と経験が豊富なミドルエグゼクティブがおのずと求められるようになりました。

変化の中で、御社はどのような戦略を取りましたか?

リーマンショック後、当社は企業と求職者をそれぞれ別のコンサルタントが担当する分業型から、設立当初から培った両面型に戻しました。両面型とは、1人のコンサルタントが企業と求職者の両方を担当するものです。エグゼクティブクラスの人材は専門性の奥行きが深くバリエーションがあり、未経験者のように可能性を秘めた未知数の人材ではないので、コンサルタントには的確な紹介先を見極める能力と、そのための専門知識と経験が求められます。企業の方針によって分業型か両面型かどちらが適しているかは変わりますが、ミドルエグゼクティブに特化した当社は、領域の専門性を高めながら企業と求職者の双方を深く理解することで、採用の視点を広げることを推し進めました。

分業型から両面型に変更するのは難しい印象があります。

とても難しいチャレンジでした。一般的に、社員が40~50人を超えると分業型のほうがオペレーションは効率的だと考えられます。当社は現在、企業ごとに担当がおりますが、求職者は全社で共有しているため、自分が面談をしたとしても、求人紹介は別の担当者が行うこともあります。情報共有など難しい点もありますが、一人でサポートするより、担当企業を深く理解しているコンサルタントが求職者を支援するほうが、求職者にとっても企業にとってもベストであり、求人紹介の幅も広がります。また、当社社員自身も担当する業界、職種における専門性が高まり、スキルアップにもつながります。現在、社内には業界やセグメント別に150ほどの専門チームが並走していますが、1人の求職者について領域を超えた情報共有・求人紹介は当社ではごく普通の流れになっています。

大手競合他社とは異なる戦略で、自社の強みにフォーカスされていますね。

当社はもともと両面型でしたが、事業拡大戦略にともない分業型に変えた時期があります。しかし、ミドルエグゼクティブに特化していくのであれば専門性が重要であると考え、両面型に戻しました。

また、AI化が進む現代、5年後に当社の社員がどうあるべきかを考えたとき、デジタルにはできない能力を備えておくべきと判断しました。エグゼクティブクラスの方は、専門性が高く、知識も豊富です。自分にはない知識を持つエグゼクティブクラスの方々と、どう面談していくか、この点もクリアしなければなりません。

実際に、どうクリアしていますか?

その道のプロフェッショナルである求職者から学ぶことは多いです。もちろん、我々が各専門性を持つことが前提ですが、補えていない情報は求職者と話す中で吸収します。

また、企業の経営者や管理職層とのface to faceでのコミュニケーションを続けることで、業界の最新情報をキャッチし、個々の専門性を高め続けています。求職者と企業経営者・管理職層双方とのコミュニケーションの中で知識を増やし、専門性を高めているのです。このコンサルタントの専門性と企業との関係性により、企業や求職者に信頼をいただき、クライアントのご担当者が自身の転職を検討される際にご連絡いただくケースもあります。

さらに、コンサルタントの教育においては、「JAC Standard」という独自のプログラムを用い、早期のレベル向上と戦力化を図っています。知識とスキルを備えた人材紹介のプロフェッショナルとして、現在、国内人材紹介事業において千名を超えるコンサルタントが活躍しています。

人材紹介で世界 No.1となり、人の介在価値を高めたい

今後の人材紹介会社の介在価値について、山田様のお考えをお聞きしたいです。

AI社会の現代において、人を介して世界ナンバーワンエージェントになろうとしている人材企業は、少ないと思います。事業規模のナンバーワンはもちろん目指しますが、大きな目的は、人材紹介の質を高めて介在価値を上げることにあります。人手不足が叫ばれる中、世の中の多くの企業が、いかに人を介さずビジネスを成立させるかに注力しています。エージェントを使わずダイレクトでやればいいという風潮もあります。だからこそ我々は、企業を訪問してface to faceで話を聞いて企業カルチャーを感じ、求職者ともface to faceで話をしてその方の雰囲気を感じ、関係性を構築することで、データマッチングではできない支援を提供しているのです。これこそがコンサルタントの介在価値です。

先ほどおっしゃった、手触り感に通じる戦略ですね。

そうです。専門性は高まるほど複雑で、データには落とし込み切れないと思います。

例えば、グローバルトレンドである脱炭素社会の実現に向けてグリーンエネルギーの需要が急速に高まっていますが、その供給拡大に必要な人材は不足しています。これら新領域の業務経験者は当然限られている中で、既存領域から適性のある人材を業界・専門知識をもって見極めて紹介できることこそが我々の「介在価値」だと考えています。

また、スキルがマッチしていても企業風土が合わないということもあります。そのようなミスマッチは企業を訪問してface to faceで話を聞いているからこそ気づき、防げることだと思います。同時に、企業が求める人材が、求職者のお人柄そのものでもあることに気づけるのも両面型だからこそと考えています。

もちろん、データベースでのマッチングは現代において必要ですし、素晴らしい技術です。一方で、志を持った企業と人材には、それぞれに実現したい「ビジョン」があり、その内に秘めた「想い」は求人票と職務経歴書の字面を追うスペックマッチングで合致させることは難しいでしょう。我々は「想い」を適切に言語化し、プロフェッショナルチームとしてそれらを共有し、企業と人材をご紹介していきます。どれほどAIが発達しても決して真似できない「介在価値」を発揮していきたいと考えています。