「人材紹介をマンパワーグループの花形にしたい」思いが通じ、2年連続アジア・パシフィックのトップコンサルタントとして表彰される

マンパワーグループが2016年から始めた全世界の人材紹介部門を対象に実施したセールスコンペティション『PERM CUP』にて、アジア・パシフィック地域のトップコンサルタント2021・2022に、18年入社の鈴木辰哉氏が選ばれた。アジア・パシフィックのトップということは、同時に日本のトップを意味する。鈴木氏はどのような戦術でトップの座を勝ち取ったのか。取材を進めたところ、戦術の前提に鈴木氏の人材紹介業に対する熱い思いがあることが分かった。

「前年の自分を超える」を実行。2年連続アジア・パシフィック地域のトップコンサタントに

総合人材サービスのグローバル企業であるマンパワーグループでは、2016年から世界各エリアのトップコンサルタントを『PERM CUP(パームカップ)』で決定し、アメリカ本社で表彰式を行っている。アジア地域からは、オーストラリア、韓国、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インド、インドネシア、フィリピン、タイ、中東などのトップコンサルタントがアメリカ本社へ集まり、ワークショップを行って売上施策やマインドなどを話し合う。国の代表に誰が選ばれるかは寸前まで分からないよう徹底される。

同賞で、アジア地域のトップコンサルタント賞を2年連続で受賞したのが、18年入社の鈴木辰哉氏だ。アジアのトップということは、同時に日本のトップを意味する。鈴木氏が入社した当時の人材紹介部門はまだプレゼンスが低く、現在60名ほどのメンバーも、当時は10名程度だった。「人材紹介を社の花形にしなければ」と感じた鈴木氏は、前年の自分を超えることを目標に努力し続け、トップの座を勝ち取り、人材紹介のやりがいや面白さを国内社員に伝えている。

「各国のコンサルタントに会って感じた共通点は、モチベーションを維持しながらセルフコントロールをし、常に変革していく点です。これが数字を上げ続けるマインドだと実感しました。それに加え、私自身が特に大切にしているのは、企業や業界への好奇心、そして知識にもとづく提案力です」

人材紹介に携わるきっかけは飲食業を始めるための勉強だった

鈴木氏は、日本大学付属高校を卒業後、同大学体育学科へ進学した。小学校時代から野球に打ち込んできた鈴木氏は、大学で野球サークルを自ら発足させ、全国優勝まで導いた。その一方、飲食店でのアルバイトに精を出した。飲食業が性に合っていると感じた鈴木氏は、大学卒業後、働いていた飲食店の複数店舗で店舗責任者を経験した。このときすでに「将来は自分で飲食業を始めよう」と考えていたという。そんな鈴木氏に、ある日、キャリアの転機となる出来事があった。

「当時働いていた店舗の宴会件数を増やしたくて、近隣の企業へチラシを持って営業に行きました。会社の受付は、用件がある部署へ内線をするよう書いてありましたが、私は内線の仕方すら分からなかったのです。このとき『飲食業を始めるなら、営業くらいできるようになっておかなければいけない』と思い、一度飲食業界を離れ営業職の経験を積むことにしました」

自動車メーカーや飲料メーカーなど幅広い業界の面接を受け、数社から内定を得た中で、成果に対する評価制度に共感できた外資系の人材派遣会社へ入社。そこで二度目の転機が訪れる。

「当時お世話になった方に、私はかなりの衝撃と刺激を受けました。仕事を獲得する嗅覚、業務スピード、決断力、そして目標達成力。すべてにおいて桁違いでした。私はその方に追いつき、追い越したい一心で、自身の行動や特性を見直し、それぞれの要素を磨き上げることを続け、遂に営業成績でトップを獲得することができました」

成績はトップを維持していたが、日頃お付き合いのある経営者様と交流する中で、経営に携わりたいと思うようになり、友人と起業し、ドライバー専門の求人サイトを立ち上げた。

人材紹介事業が大きくなる経過に関われることが醍醐味

友人と求人サイトを立ち上げたものの、一からの経営はそう簡単ではなかった。利益を出していくことや無名の会社での営業など、経営の厳しさを痛感しながら、鈴木氏は取引先を増やすため運送会社への営業に奮闘した。そんな中、経験したことのない世界的な金融危機が起きた。2008年のリーマンショックだ。有効求人倍率はみるみる下がり、09年8月には0.42倍を記録(パート含む)、このままでは会社も生活も立ち行かなくなると感じ、転職を決意した。

「とはいえ、リーマンショックのあおりで求人がほとんどありませんでしたが、前職で取引先だった通信会社とのリレーションがあり、営業職(契約社員)として就業することになりました」

営業を1年半続けたころ、前職でお世話になった方から「大阪支店の人材紹介事業をやらないか」と誘いがきた。自分の成長するきっかけとなった方と再び働けることもあり、鈴木氏は再び前職の外資系人材会社の大阪支店へ入社し、人材紹介の仕事に従事した。

「有効求人倍率は相変わらず0.5倍程度で、いくら営業してもなかなか数字につながらず、これまでお世話になってきた企業の役員の方へお願いして、取引したいグループ会社につないでもらうなどしながら売上を立てました。営業として真摯にお取引先に向き合ってきたことで、ご紹介いただけたのだと思います」

人材紹介の仕事にやりがいを感じ始めた鈴木氏は、さらなる飛躍のフィールドを求めて人材紹介会社に転職し1年半、東京と大阪で人材紹介業務に従事した後、マンパワーグループへ入社した。

「前職もマンパワーグループも、入社当時はこれから成長するフェーズでした。人材紹介の仕事はとても面白くやりがいがあり、さらに部門のスタートアップから成長する過程に携われることは、私にとって仕事の醍醐味でした」

いつの時代も人材紹介の介在価値はある

マンパワーグループはミドルハイクラスの総合人材サービス企業として、人材派遣・紹介再就職支援、RPO、アウトソーシングなど他部門との連携を強化しながらシナジー効果を発揮し、企業、求職者に対して介在価値を最大化することをミッションとする。興味深いのは、RA(リクルーティングアドバイザー)とCA(キャリアアドバイザー)の分業型と両立型が共存する点だ。分業型は定量面の担保と育成スピードの速さ、両面型は専門性と収益性のメリットがあり、共存により部内のキャリアパスを構築できる組織を目指しているという。事実、人材紹介部門は定着率が非常に高いそうだ。両面型は業界特化型で、IT、金融、建設、不動産、消費材、メディカル、アパレル、EMC(Electromagnetic Compatibility/電磁的環境整備)業界に強みを持つ。分業型は、業界は問わないが、管理部門職、営業職の強みがある。

社内での人材紹介部門を花形にすべく尽力する鈴木氏の目には、介在価値が問われ始めた人材紹介ビジネス業界で生き抜く方法がすでに見えているという。

「これからAIなどでのマッチングが当たり前になってくると、人材紹介は脅かされると思います。しかし、その中でも、我々の介在価値はあります。例えば、通例では採用されにくいケースでも、面談時にその方の強みを見出し、ご紹介、内定へ繋げる。これは、データありきのAIには難しく、我々コンサルタントならではのご紹介方法だと思います。もちろん、簡単なことではないので、我々はより幅広い視点でアドバイスできるよう業界や企業の知識と経験を増やす必要があります」

実際に鈴木氏は、個人的な事情が理由で転職サポートが難しいケースの経験がある。とても優秀な方だったが、次の仕事がなかなか見つからなかった。求職者の方には育ちざかりのお子様がいらっしゃり、切羽詰まっていたところ、鈴木氏が話を伺い、就職先をご紹介し、無事に採用され、今もその職場でご活躍されているという。

「求職者の方に、どうしても再起してほしいと思っていました。このときはもう採算性やロジックは度外視して、紹介したい企業様へ求職者の方をご紹介しました。採用企業側は、ふだんは指標を示しながらロジカルに話す私が気持ちを込めてお願いするので、何かを感じ取ってくださったのだと思います」

売上の最大化と丁寧な面談やマッチングは、時に相反する。ビジネスと割り切ることが大事なときもあるが、鈴木氏は『自分がやらなければ誰がやる?』と思う案件に遭遇したときは、自分の正義を信じて突き進むという。

「転職にはさまざまな理由がありますが、いずれにしても人生の大きな岐路であると、自身が身をもって体験してきました。人の人生の岐路にともに立ち、お手伝いができる人材紹介の仕事が、本当に好きです。また、エージェントであることによって、経営者と会える点も魅力の一つです。会社設立の経緯、ビジネスモデル、利益の出し方などを直接伺えますので、仕事をしながら学びや気付きを得ています」

未達成を責めずモチベーションを上げる育成で成績を伸ばす

鈴木氏は現在、後輩の育成にも関わっている。どんなに人材紹介業が好きでも、好きだけでは務まらない。仕事をする以上、やはり数字を上げるマインドは必須だ。数字が低迷中のメンバーとは、毎朝1on1を実施している。どういう心持ちで働いているかなどのマインドを確認し、モチベーションを上げるための手引きをしている。

「育成の一環として営業に同行して成功体験を重ねてもらい、更に私の経験を話したりすることで、案件成立までの過程を楽しみながら、数字を重ねていくモチベーションをもってもらうように意識しています」

鈴木氏は入社当初から、各支店の派遣の営業担当へ人材紹介についての研修や連携をし、顧客起点で人材ニーズに対し総合力で応えるための環境づくりに奔走してきた。今後は、社内での人材紹介事業のプレゼンスを更に上げていくとともに、得意とするミドルエイジ以上のハイクラス転職に注力する予定だという。