働く人の幸せのために動けば会社は成長する

1965年に創業以来、製造業を中心とした人材ビジネス事業で約60年の歴史を持つ株式会社サンキョウテクノスタッフの代表取締役社長が2023年11月に交代した。創業家が社長に就任するのは19年ぶりとなる。新社長の三原昇氏に、自社の強みや今後の展望について聞いた。

スタッフを等しく思いやる気持ちが大切

この度は社長就任おめでとうございます。最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

ありがとうございます。当社は1965年に三協梱包株式会社を創立しました。その後製造業を中心とした人材ビジネス事業を展開して参りました。

2016年に三協グループを再編成しサンキョウテクノスタッフに事業集約を実施し、現在では本社がある愛知県豊橋市を拠点に全国20カ所に営業所を設置。取引領域は自動車部品、OA機器、食品産業、サービス業などに人材派遣業、人材紹介業、製造請負業を中心として事業展開しております。

三原様は創業家でいらっしゃるので、新卒入社ですか?

いえ、私は12年5月に中途で入社しました。ゆくゆくは社長になる心づもりでしたが、経験を積むために最初は請負現場の製造スタッフとしてスタッフと同じように時給で働きました。その後は、その職場の製造管理者職、派遣スタッフの管理や営業を担う営業担当者職、営業所の運営を担う営業所長職、1,000名以上の大規模製造事業所の責任者、常務取締役となり、約10年にわたり様々な経験を経て2023年11月に社長に就任しました。

社長を任された以上、新時代にふさわしい新たな風を事業や社風に入れていきたいと思っています。

ご自身のスタッフ経験は経営にどのように活かされていきたいと考えていらっしゃるのかお聞かせください。

はい、おかげさまで弊社の人材ビジネスの在り方について身をもって学ぶ時間を頂きました。その経験の中で大切に守ってゆくルールを設定しております。それは、『人の心や気持ちを通わせる大切さ』です。私自身が製造スタッフとして働いていた時、『話を聞いてもらったり、働きぶりを見てもらっている』そんな現場管理者の存在が有難く心強かった事、これは組織で働くうえでとても重要な事だと身をもって体験しました。

どれだけ通信の発達が社会にもたらされても、直接会って人の心や気持ちを通わせる大切さは不変であると思います。泥臭い、古臭いと言われようとも、私は人と直に会い、話す機会を持つよう自身にも社員にもルールとして設定し、いつまでも『現場で働く人の気持ちや考えに寄り添える会社』であろうと思います。

現場管理者や営業担当者をしている時にスタッフに常に近い存在である事を実践してきました。そうすると弊社のスタッフだけでなく同業他社のスタッフからも声を掛けられるようになり、次第に会社の枠組みを超えてコミュニケーションを図るようになりました。

ある時、弊社スタッフが同業他社のスタッフの抱える問題を取引先と共有して解決にあたり、結果として取引先スタッフ全体の安定化に繋がり、評価頂いたケースもございました。

この経験から、いまでも現場営業の管理社員には自社以外のスタッフにも等しく思いやりをもって接するよう話しています。中には、同業他社のスタッフが当社の営業担当の気づかいがうれしかったからと言って、当社に移籍を希望してくる方や、それを聞いた同業他社の社員が当社に興味を持ち、面接を希望される方もおり嬉しくも困惑するケースがありました。

当社が提供する人材サービスを通じた体験型ジョブデパートを目指している

御社の強みを教えてください。

外国籍スタッフの活用は30年以上の実績があり、経験豊富な管理力が強みです。外国人と言うのは日系ブラジル人が中心であり、日系3世世代までとその家族に「定住者」の在留資格が認められている事が特徴です。定住者ビザなので、日本国内での就労制限がなく、派遣スタッフとして働ける事が特長です。ブラジル現地にも駐在員を配置し、日本とオンラインでリクルート活動を展開しております。お陰様で日系ブラジル人の方々の当社への認知度は非常に高いと思います。

外国籍スタッフ管理は、日本人を雇用する事に比べ感覚値ですが数倍手間がかかります。国境を越えた選考から始まり、ビザの申請や航空チケットの手配と搭乗までのアテンド。入国後は、住居の手配、役所や各種インフラの手続き、文化や生活習慣、雇用制度の違いなどの教育から始まり、病気の際は病院のアテンドなど、言葉の壁をクリアしなければならない事が多く、更にはスタッフの家族の通院や学校生活へのフォローなど日本人の採用管理に比べ数倍の業務が発生します。

この点を長きにわたり経験し、ノウハウを蓄積してきたことが、外国籍スタッフの定着や評判、信頼、信用につながっていると思います。常に外国籍スタッフの密接管理を行っているので、悩みや些細な変化を早期に感じ取る事が可能になり、早めに対策が取れるメリットがございます。それらの密着管理は、日本人スタッフにも同様に行っており、情報がつかめず原因不明の欠勤や退職に繋がるケースは比較的少ないと思います。

また、今後は特定技能外国人が定住して家族を持つようになります。そのとき、先ほど説明したような管理ノウハウを活かし、家族が安心して暮らせる環境づくりをサポートする事でスタッフは安心して就労する事ができます。このようなスタッフのフォローの考え方は就業先での稼働率などに好影響を及ぼし、当社の経営理念である『三協の精神』(お客様、スタッフ、当社の三者が協力して最大の成果を上げていく)を具現化する事に繋がります。

外国籍スタッフを採用する際、企業側によくある課題を教えてください。

 諸外国ではジョブ型雇用が一般的なのに対し、日本はメンバーシップ型雇用が多いため、スタッフにも正社員並みの幅広い仕事を任せる企業が多い点が、外国籍スタッフには理解しがたく、離職の原因になることがあります。我々は外国籍スタッフへは勿論の事、お客様に対しても、日本と海外の労働文化の違いを説明するようにしています。

日本人スタッフの定着率アップの工夫を教えてください。

先程も申した通り、長きにわたり外国籍スタッフの管理を日本人スタッフにも実施し、生活状況や不安、悩みを先読みしてサポートする管理を国籍関係なく実施しています。

日本人に限って言えば、職場の選択は、通勤の利便性を重視する傾向にあります。遠くの高収入より近くの働きやすい職場へのニーズが高い。そのようなニーズに応えていくために幅広い職種で働ける場所の提供に努めています。

応募者の中には、前職で対人関係で苦労した方、出産や介護などでブランクがある方、自分に合う仕事が分からない方や、いままで製造業を敬遠していたがその理由が不明な方など、様々です。当社が目指すジョブデパートとは、ジョブチェンジに必要な知識が得られ、自分の働き方、生き方にあった仕事を見つける場所(会社)として、多くの方に当社をご活用いただきたいと考えています。

スポーツ選手のセカンドキャリアを支援

御社は地域貢献の取り組みにも積極的と聞いています。これもジョブデパートの実現につながりそうですね。

おっしゃる通りです。地域の方に当社を知って活用いただくためには、当社が積極的に地域活性活動に関わることが大切と考えています。例えば、静岡県藤枝市のプロサッカークラブのJ2藤枝MYFCや、愛知県豊橋市、静岡県浜松市を拠点とするプロバスケットボールチームの三遠ネオフェニックス、東京都大田区のハンドボールチームのアースフレンズBMと年間でスポンサー契約、他にも様々なスポーツの若手選手のサポートや子供野球教室を主宰し、住民の皆さんとの接点を作っています。

これは、私自身が過去に大学まで野球を続けてきた経験から、スポーツ選手のセカンドキャリア形成をサポートしていきたい思いも兼ねています。人材不足が叫ばれる一方で、スポーツ選手はセカンドキャリアへのハードルが高く、就職先に困ることがあります。例えば野球の場合、高校や大学を卒業し、野球を続ける事が出来ても、野球だけで食べて行ける選手として生き残れるのはほんの一握りです。残念なことに野球一筋で生きてきた選手は社会人としてスキルや経験を得る機会がなく、引退後すぐに会社勤めができるかは厳しい状況にあります。そのような方々が当社の提供する人材サービスを通じて選手のセカンドキャリアを形成する道筋を形成し、選手が安心して現役を続けられる環境を実現する事で、スポーツ振興にも貢献したいと考えております。

最後に、今後の展望や目標を教えてください。

先ほどご紹介した取り組みの認知度を高め「人材サービスといえばサンキョウテクノスタッフ」と思っていただける会社でありたいと思います。

スタッフ、お客様双方に対し満足度を高めることが第一だと考え、創業から受け継がれている『三協の精神』を追い求めて行きます。