「20代通年採用」で企業の人員確保とDX化を促進
転職エージェントにおける20代登録比率3年連続ナンバーワンを獲得*した転職・就職情報サービス会社、学情。同社の20代専門転職サイト「Re就活」では、2023年5月の月間新規会員登録数が前年比150.1%を記録した。労働力人口が減少の一途をたどる中で20代の登録者数を増やし続けるための施策や若手人材市場の現状について、エージェント事業部のマネージャー・四十山聡氏に聞いた。
*2021年~2023年東京商工リサーチ調べ
20代の転職にキャリア形成のサポートは欠かせない
最初に、御社の事業内容をお聞かせください。
株式会社学情は、会員数230万人の20代専門転職サイト「Re就活」と、会員数40万人のスカウト型就職サイト「あさがくナビ」を軸に、20代の採用をトータルサポートする転職・就職情報会社です。
「Re就活」は、社会人経験が4~7年目のヤングキャリアや、第二新卒・既卒の転職・就職をサポートしています。登録会員230万人のうち、92.5%は20代、初めて転職にチャレンジする会員が65%です。「あさがくナビ」は、新卒学生対象のダイレクトリクルーティングサイトです。企業からのスカウトに加え学生からの逆オファーも可能で、ダイレクトスカウトや職種別掲載により採用に繋がる母集団を形成し、価値あるマッチングと採用業務の効率化を形にしています。
当社の事業は現在、Webメディア事業、イベント事業、ソーシャルソリューション事業、エージェント事業の4つの領域に分かれています。基幹Webメディア「Re就活」「あさがくナビ」の利用者がエージェントサービスを使ってくださるなど各領域で密接に連携しているのが特徴です。
四十山様は新卒で学情に入社されたそうですね。人材業界を選んだ経緯を教えていただけますか。
人材業界に興味を持ったきっかけは、自身の就活時にキャリアとの向き合いかたが分からなかったことに起因します。就活中に学情と出会い、自分の経験を活かしてキャリア形成をサポートできる仕事だと感じ、2004年に新卒で入社しました。
入社から今日まで、私の就活時と同じようにキャリア形成に戸惑う多くの若い人材と会ってきました。私たちと会話をすることで、皆さんが気付きを得て、表情が明るくなる姿を見るたび、この仕事を続けてきてよかったと思います。
キャリア形成への戸惑いは、どのような原因で起きるとお考えでしょうか。
20代は社会人経験が浅く情報が少ない点が大きな理由ですが、その上で、本人が思う自分と周りが見ている自分の特徴に差が出てしまい戸惑うケースは多いと感じます。この場合は、キャリアアドバイザーが本人の気付いていない長所などを伝えることで解決の道が開けます。もう一つ、理想と現実のギャップによる迷いが挙げられます。理想が高すぎて現実が見えていないパターンです。この場合は、本人の性質やスキルなどの確認をして自分の立ち位置を知ってもらい、理想に近づくための現実的なステップを提案します。自分のことを知り、個性を活かした就職・転職活動ができれば、面接も優位になると思います。
当社では、入社後のキャリアをイメージするための取り組みとして、転職活動の始め方を学んだり就職相談ができたりするイベント「転職博」を開催しています。また、少人数で企業と面談ができる「転職サポートmeeting」も運営しています。
イベントや面談はオンライン開催が多いでしょうか。
オンラインの比率は年々上がっています。デジタルネイティブ世代はタイムパフォーマンスを重視しますので、まずはWebで情報をチェックして、有益と判断すればリアルの場に足を運びます。
高い企業理解力で若手人材の的確なマッチングを実現
若手人材市場へ参入する企業が増えています。その中で、どのように差別化をしていますか?
終身雇用ではない現代の若手人材の多くは、新卒入社をファーストキャリアと捉えています。いつか転職することを視野に入れ、「手に職」をつけたいと考えていますので、当社ではそのサポートを強化しています。採用企業側も、DXの推進や、加速するビジネストレンドの変化に対応するため、デジタルネイティブ世代の採用を強化する傾向が強くなっています。特にイノベーション推進においては新しい価値観が必要ですので、業界経験者ではなくデジタルネイティブの未経験者を希望する企業が増えています。当社は、この点に着目した採用支援を実施しています。当社も2020年以前からプロジェクトを発足させ、新サービスのローンチや社内のDX化を推進しています。
人材紹介会社の介在価値は、どこにあるとお考えですか?
20代の求職者に対しては、まだキャリアが構築される前の段階ですので、キャリア形成の考え方やプランの立て方から支援できる点が介在価値と考えます。一人ひとりの人柄や仕事観、人生観に合わせたキャリアプランは、AIよりも人のほうがよりフィットしたものを提案できます。就職・転職についても、その仕事を通じて何を実現していくかを見据えておくことで、定着率が上がります。企業に対しては、当社が持つ若手人材の傾向やニーズを基に採用広告やホームページの改良をはじめとしたサポートで、企業自体の採用力アップに尽力しています。
手前味噌ながら、多くの採用企業様から、キャリアアドバイザーの企業理解度の高さを評価いただいております。社会人経験が浅い求職者に対して企業の特徴を伝えたり、求職者にマッチするかを判断したりするためには、各企業をしっかり理解していなければ始まらないと考えています。ときに直接採用企業へ職場見学に出向くこともあります。
他に、企業様と協働している取り組みがあればお聞かせください。
選考段階で、採用予定企業で働く先輩社員をご紹介いただき、社内での働きかたや人間関係、社風などについて話してもらう機会をつくっています。また、普段はテレワークの会社でも、転職者が入社するタイミングだけ出社していただき、チームビルディングを実施してもらうようお願いすることもあります。実は、テレワークによる人との接触不足が理由で、自分がきちんと成長できているか分からなくなって転職相談に来る人が少なくないのです。
経験者採用市場で年率30%アップ、3年で219%アップを目指す
業績アップのための取り組みやサービス、目標を教えてください。
2023年5月に「Re就活テックエージェント」、7月に「施工管理エージェント」をスタートさせ、より業界に特化した紹介ができるようにしました。
当社全体の中期経営計画(24年10月期から26年10月期)では、20代のセカンドキャリア支援をテーマに、キャリア採用(経験者採用)市場で年率30%の売上成長を目指します。2026年10月期には、2023年10月期比219%の成長を目指す計画を進行中です。
キャリア採用サービスの売上成長を図るために、Re就活エージェントでは、リクルーティングアドバイザーは求人の数と幅を広げてお客様の選択肢を広げ、キャリアアドバイザーはより高度なスキルを身に付ける必要があると考えています。合わせて、現在は当社の媒体だけを利用している企業様に、今後はエージェントでも支援していきたいと考えています。
採用媒体のマッチング精度が上がるほど、エージェントを介さず自社採用を強化する企業は増えると思います。このような企業に対して、御社はどのようにアプローチしていらっしゃいますか?
採用にお困りの企業様でもっとも多いご相談が、採用計画数に対して、そもそもの母集団が足りないお悩みです。20代の若手を採用したくても、実際にくる応募は30代以上という声も多く聞きます。加えて、新卒採用では、採用までのハードルが年々高くなっている点も課題です。現在、新卒採用においては、大学3年生の夏の時点で学生との接点を持っておかないと採用が困難になるため、各社が手間暇をかけて対策をしています。当社では、これらの課題解決の一つとして、04年から「20代通年採用」を提唱し、その支援を実施しています。新卒学生だけでなく、第二新卒をはじめとした20代全体を対象に採用することを提案しています。
最後に、若手採用のこれからについて、四十山様のお考えをお聞かせください。
日本の企業はこれまで、景気低迷のたびに新卒採用を控え、代わりに即戦力として経験者を採用する傾向がみられましたが、社会全体がDX化していくいま、経験者・未経験者の定義や考えかたは変わっています。DXには新たな発想や着眼点が必要ですので、ときに熟練の経験者よりも、柔軟な視点で物事を見れ新たな発想ができ、且つデジタルネイティブの若手が能力を発揮する場面が増えるでしょう。その土俵において、新卒・第二新卒か経験者かの区別は、あまり意味を持たないと思います。経験者、未経験者、新卒、第二新卒の定義を見直すことで、より未来を見据えた採用が可能になると思います。