キャリア教育を推進し「質でトップ」の若手人材紹介企業に

2012年の設立から一貫して新卒・第二新卒を中心とした若手人材の紹介事業に徹してきたキャリアスタート株式会社。20代を中心とした若手の就・転職にこだわる理由や人材紹介事業における独自の取組み、人材業界の介在価値などについて、代表取締役社長の下山慶一郎氏に聞いた。

第二新卒・大学中退・高卒…若手人材が輝けないことへのもどかしさ

最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

キャリアスタート株式会社は、第二新卒を中心とした若手人材紹介会社として2012年に創業しました。3年前から新卒の紹介もスタートし、現在は約8割のキャンディデイト(候補者)が第二新卒、2割が新卒といった内訳になっています。「全ての若者が輝く社会をつくる」というビジョンを持っていることから、新卒・第二新卒はもちろん、大学中退、高卒、フリーター等、「現状まだまだで、これから輝く≒キャリア形成ができていない」方々のご支援に特に力を入れています。

新卒・第二新卒を中心とした若手人材にこだわる理由をお聞かせいただけますか。

例えば第二新卒や大学中退、高卒の方は自力で就職活動を進めなければならなかったり、大卒でないと採用していない企業がある現状において、どんなバックグラウンドを持った人でも平等に機会が得られ、挑戦し輝いていける社会であればいいなと考えています。

この考えに至った背景として、私のキャリアが影響しています。私は2001年にリクルートグループに入社し、派遣事業に従事しました。そこで派遣スタッフの皆様とお話したとき、仕事に対する考え方や置かれている環境が新卒のそれとは違うと感じました。派遣に従事する理由が必ずしも前向きではなく、新卒入社した会社が自分に合わず退職したり、大学を中途退学したりしたことがきっかけで派遣スタッフになった人が、少なからず居ました。その後、アルバイト求人メディア、人材紹介の事業にも携わりましたが、非正規(派遣やアルバイト)で働く選択をしたり、早期に転職してしまったり、理由は様々ですが、キャリア形成がまだできていない若者と多く触れてきました。大学の中途退学者だけでも年間5万7,000人いますが、中には経済的な理由など、本人の意欲とは関係ない事情で中途退学した方も多い現状があります。私は次第に「こういった若い方々の将来が明るくなるよう、キャリア形成ができるような就・転職をサポートしたい」と考えるようになりました。

ちょうどこのころ、就活市場では第二新卒採用が本格的になりました。当時、人材紹介事業に従事していた私は、ここでも多くの第二新卒の方々と関わりました。そして2009年、リーマンショックが起きました。世の中に「派遣切り」の言葉が躍り、キャンディデイトの転職相談に応えられない日々。私は自分の無力さを痛感しました。「若い人材が輝けない社会のままでいいのだろうか」この思いは日増しに強くなり、12年に第二新卒に特化した若手人材紹介事業会社として、当社を設立しました。

クライアント企業での定着率92%達成。秘訣は…

第二新卒などの若手人材を紹介する上で大切なことは何でしょうか。

キャリア教育的な考え方を大切にしています。人生・仕事における夢や目標を持ち、キャリアプランを持って就職し、仕事に取り組むこと。この心構えがあるとないとでは、就職後の定着率に大きな差がでます。当社では、入社前に無償でキャリア教育のサービスとして、定着サポートプログラム~Connect~を提供しています。当社では定着率は理念浸透・サービス品質の重要指標として捉えており、当社でご支援したキャンディデイトの就職後定着率は昨年は92%でした。また先日、建設業界のアウトソーシング企業のアーキ・ジャパン様が開催した「リクルーティングパートナーアワード」で、当社が紹介後定着率ナンバーワンとして表彰いただき、定着率とマッチング品質をご評価いただいています。

キャンディデイト向けキャリア教育の概要を教えていただけますか?

「仕事のセオリー」「キャリアのセオリー」を若者目線で伝えています。様々な教育コンテンツや書籍から若者に必要だと感じる知識や情報を収集し編集した教育コンテンツで、内容としてはキャリア形成・定着の意義や重要性や人間関係の作り方、キャリアロードマップに対する具体的な目的、目標設定の方法等、ステップごとのプログラムを作成しています。キャリア教育を始めた当初は私がすべての指導を担当しましたが、現在はマネジャーが力をつけてきたので、マネジャーに任せる部分が多くなりました。

キャリア教育を実施してから企業へ送ることは、いま人材業界が問われる「介在価値」そのものですね。

ありがとうございます。ご紹介して終わりではなく、キャンディデイトへ質が高いキャリア教育を行うことで就業意欲を高め、将来のビジョンを持った上でクライアント企業へ紹介するよう心がけています。モチベーションの向上や共感、応援といった「人の心」にポジティブな影響を与えることは、どれだけAI活用が進んでも人だからこそできる要素が強いと考えています。キャリア教育によって高いモチベーションを持った状態で入社し、入社後も活躍しているというお声もいただいており、意欲的な人材に長く働いてもらいたい企業様には、繰り返しご利用いただいております。

キャンディデイトの定着率も大切ですが、当社社員のキャリア形成も当然大切に考えており、当社社員定着率も長いこと95%前後を推移しています。

当社では社内コミュニケーションが多く、交流会や食事会などのイベントも盛んです。採用時から、理念や社風に共感した方を採用しています。企業文化のルーツや考え方も、当社員のキャリア教育で共有しています。

人材紹介事業を通じて働く人に明るい未来を

人材紹介事業における御社の課題を教えていただけますか。

成長に向けた課題はたくさんありますが、現在注力していることの一つはDX推進、AI導入です。人でなくてもできる業務をどんどんデジタル化することで、人は人にしかできない仕事に集中できます。これも、当社の社員が仕事にやりがいを感じたり、離職しない理由になったりしているかもしれません。

御社の仕事におけるモットーは何でしょうか。

大きく三つのテーマを掲げています。一つは「キャンディデイト・ファースト」つまり人のためになる仕事をすることです。当社は、まだキャリアがない、これからキャリアを形成していく人材を社会へ送り出す事業です。当社の仕事を通じて、一人でも多くの若手人材が活躍し、年収が上がり、結果として生活や仕事に明るい未来を感じられる環境を作りたいのです。そのためには、優しくなんでも「いいよ」と言うばかりではいけません。例えば、就業意欲が低い方に「働かなくてもいいよ」と言うのは簡単ですが、それは本当にその人のためになるでしょうか。本当に一生働かずに生きていけるでしょうか。そもそも就職以前にキャリア形成の考え方が身についていれば、働きたい意欲も自ずと高まりますし、意欲ある人材は入社後も企業が手放しません。

二つめは、キャンディデイト・ファーストでありながら「目標は必達すること」です。これらは相反すると思われがちですが、世のため人のためを徹底した結果、目標に到達することが自然なことだと考えています。レストランで例えると、美味しい食事を提供し、素敵な時間や空間を提供するから、リピートが増え、お客様が増え、売上が上がるという姿を目指し、社員教育を行っています。

そして三つめは「仲間を大切にすること」です。仲間とは、従業員はもちろん、お客様や事業パートナーも含みます。シンプルに、仲がよければ、そもそも会社に出勤したり仕事したりすることが楽しくなります。当社では、定期的に食事や交流会を開いており、事業の意義や、それぞれのキャリアや将来目標などについて皆で語り合ったりしています。

「若手人材紹介ならキャリアスタート」と思われる企業に

これから新たに取り組む予定のサービスや事業はありますか?

労働人口不足の対策として、外国人紹介事業は近日中に着手します。加えて、既存の若手人材の就業意欲や能力の底上げを進めたいと考えています。一人でも多くの人材が生産性の高い仕事をすることは、社会全体のためになります。就業意欲を底上げするきっかけになればと、当社では数年前から就職後の人たちの交流会を開催しており、その中で「キャリアアップ・スピーチコンテスト」を実施しています。当社の紹介で就職した方々を無料で交流会イベントに招待し、転職先での活躍や心境の変化などを発表してもらいます。発表の機会を持つことで本人のさらなるモチベーションアップになるだけでなく、当社員の仕事のやりがいにもつながります。なにより、仕事が順調だと発表する会ですから、その場にいるだけで清々しい気持ちになれます。

最後に、今後の目標を教えてください。

「若手人材紹介ならキャリアスタート」と思われる、若手紹介マッチング品質ナンバーワンを実現していきます。合わせて、当社員の年収も業界トップクラスを目指していきたいと考えています。