ベトナム市場に挑む企業のセールス・マーケティングパートナーを目指して

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日本企業の海外事業進出国として注目を集めるベトナム。ベトナムで人材総合サービスを提供し、HRのビジネスパートナーとして企業を支えるPeople Link Joint Stock Companyの代表取締役、クアン・トゥエット・タオ氏に聞いた。

財務のスペシャリストから人材業界へ

最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

People Link Joint Stock Company(以下、ピープルリンク)は、2007年、外資規制が緩和され外資系の消費財メーカーや飲料メーカーがベトナムに参入するタイミングで設立しました。プロモーターガールと言われる店頭販売員や売り場での作業員、フィールド調査員、フィールド営業などの人材派遣、採用、育成、勤務管理、業績管理、プロジェクトレポート、給与労務の全てを担うフィールドフォースのアウトソースに強みを持つHRビジネスパートナーとして成長してきました。

2020年に、更なる事業成長を目指し、日本のファッション・ビューティー領域のトータルソリューショングループであるワールド・モード・ホールディングス(以下、WMH)の傘下となりました。WMHグループの業界における経験や知識を活かし、ファッション・ビューティー領域でのサービス展開、およびベトナムでの日系企業のサポート拡充に注力しています。

続けて、タオ様のご経歴を教えてください。

私の家族が経営するコーヒー工場での財務・会計から始まり、様々な製造企業で人的資源管理、輸出入、物流倉庫、調達、カスタマーサービスを経験しました。財務責任者に就任してからは、事業戦略やチェンジマネジメントなど、事業拡大における重要な任務を果たしました。日本企業のベトナム支社に勤めた際は、ディレクターとして日本とベトナムの橋渡し役を務めたこともあります。23年にピープルリンクの代表取締役に就任し、ベトナム市場で事業を展開する企業の戦略パートナーとしての更なる成長を目指して、サービスの拡充と品質向上に取り組んでいます。また人材育成を重視し、社員一人ひとりの高い学習意欲、誠実性、透明性、法令遵守意識、そしてプロフェッショナルなサービスを支える職場環境を維持することに力を注いでいます。

ファイナンシャルのマネジメントに加え事業戦略にも関わるなど、幅広い職務を経験されたのですね。

私はチャレンジが大好きですので、自発的に取り組んだプロジェクトが多数あります。いずれもハードに働いている感覚はなく、どちらかというと楽しいです。ただ、それは家族の支えあってのこと。コロナ禍で自分を振り返る時間ができたとき、自分のワーカホリックを改めて家族と過ごす時間を増やしたいと思うようになり、現在はワークライフバランスのとれた生活を意識しています。それでも周囲からはよく働くと言われますが。(笑)

どのような経緯で人材業界へ入られたのでしょうか。

WMHの代表取締役である加福真介氏と会う機会があり、そのとき加福氏が話した「人をもっとも大切にする」という理念が、私をピープルリンク入社へ導きました。私自身、いかなる仕事においても人に向き合い大切にすることを心掛けていますので、人材ファーストですべての仕事を動かす考えかたに共感と感動を覚えたのです。加福氏は、私の経験や知見がこの人材事業にいかに価値をもたらすかといったことも熱心に語ってくれ、私もピープルリンクでの可能性を見出しました。同時に、WMHにエナジーとパッションを感じ、今後さらに広がっていくと確信しました。

透明性の高いサービスを提供し、クライアントの成功実現を支援

国内外の企業と取引する中で、御社がもっとも注力する点は何でしょうか。

ピープルリンクは、HRビジネスパートナーとして、日系を含む外資系企業の事業展開を支援しています。私自身が外資系企業でリスク管理や監査などを統括する職務に長年携わった経験から、法令順守の徹底は欠かせないポイントだと考えています。また、WMHの傘下となったことで日系企業の商習慣を取り入れる機会やベトナムに進出する企業を支援できる機会が増えています。透明性の高いサービスを提供し、クライアント企業がベトナムでの成功を実現する支援をしていきたいと考えています。

ベトナムでの事業成功の実現を支援する際、特に大切にしている点は何でしょうか。

ご要望をそのままお受けするのではなく、我々のサービスをご利用いただく真の目的を理解し、クライアントの事業成長パートナーとして考え、行動します。そして、適した人材の選別や給与・インセンティブ設計、評価管理体制を構築することで、課題解決、従業員の満足度向上、継続的な業績向上を目指します。また、店頭におけるサービスの品質を維持し、ブランド価値を十分に伝え、販売スタッフがブランドの顔として認められるように努めています。 スタッフのモチベーションを高める取り組みや密なコミュニケーションにより、経営者が見逃してしまう重要な情報をキャッチし情報収集できることは、当社のサービス品質を評価いただき信頼を寄せていただける理由のひとつです。 社員一同、クライアント企業の一員であるという意識を高く持ち、いかにして販売スタッフのモチベーションを上げて消費者に伝わる形でやる気を引き出すかを考え、日々熱心に業務に向き合っています。

御社はベトナムのリテール人材に対する日本就労支援サービスを23年にスタートされました。サービスの概要と、タオ様の期待感をお聞かせください。

サービス開始の背景には、日本におけるインバウンド旅行客の増加による、WMHが専門とするファッション・ビューティー領域での多国言語を話せるリテール人材への需要増、そしてベトナムにおける市場成長、特にラグジュアリー市場の成長があります。当社が現地で日本語・英語を使用するリテール人材「グローバルアンバサダー」を募集し、WMHとともに書類審査や面接を通して採用や各種手続き(ビザ申請、住居手配、フライト他)、就職先の斡旋などの日本就労を全面的にサポートします。「グローバルアンバサダー」にはこれらのサポートを無料で提供します。ベトナム人材が日本で高いレベルの接客サービスを身につけて活躍する。その後、ベトナムに帰国してそのスキルを活かして自国のファッション業界で活躍する。このような国を越えた人材の循環に繋がることを期待しています。

ベトナムの求職者は企業の透明性や安全・安心を重視する傾向に

コロナ禍でベトナムの就労事情は変化しましたか?

コロナ禍以降の傾向として、休日や福利厚生、精神的充実を基準に職場を選び、ワークライフバランスを重視する傾向の若者が増えるなど、働きかたが多様化したようです。さらに求職者は、事業の透明性や安全・安心を重視し、自分が社会に貢献できるイメージが描ける会社を選ぶようになりました。

これから人材業界はどのように変化するとお考えでしょうか。

今後5年程で、生成AIや画像認識技術など、人工知能と呼ばれるテクノロジーが事業成長を支えるカギとなり、私たちは急速に変化する社会へ対応する姿勢が求められるでしょう。技術の進化で失われる職業がある一方で、技術を使いこなす人材へのニーズが高まると考えています。事実、当社でもテクノロジーに明るい人材へのオファーは増加しています。

ベトナムのマーケットに関していえば、これからファッション・ビューティー領域やラグジュアリーブランド市場が伸びると予測しています。当社はWMHグループの専門性を強みとして、ファッション・ビューティーの人材支援や教育にも注力していきます。

最後に、ベトナム人材を採用する日系企業へアドバイスをお願いします。

日本とベトナムでは労働に対する考えかたや価値観、ワークライフバランスの考えかたに違いがあります。例えば、日本企業の会議の多さに対して耐えられない、信頼されていないと考えるベトナム人は少なくありません。ベトナム人なりの働きかたがあることを理解し、彼らのために何ができるかを真摯に考えることが、両者にとって良い働き方に繋がります。合わせて上司は就労者それぞれの性格や能力を信じ、適材適所の配置を考慮することが大切です。日本の整備された労働環境やマネジメントはベトナム人にとってとてもいい印象がありますので、人材を信じてエンゲージメントを高めることに注力してほしいと思います。