グループシナジーをフル活用し経営戦略とエンジニアのキャリアをオーダーメイド

2013年の創業以来、ITエンジニアのプラットフォーム事業を展開してきた株式会社Branding Engineerが、2023年6月にホールディングス体制に移行し社名を株式会社TWOSTONE&Sonsに変更した。体制と社名を変更した思いやエンジニア領域への自社の介在価値などについて代表取締役COOの高原克弥氏に詳しく聞いたところ、答えは常に企業の未来とエンジニアの生涯キャリアを見据えたものだった。

経営戦略から関わる企業であると示す体制と社名に変更

最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

株式会社TWOSTONE&Sonsは、エンジニアプラットフォームとマーケティングプラットフォーム事業を中心に様々なソリューションサービスを提供するホールディングカンパニーです。フリーランスエンジニアの支援サービスはMidworks、コンサルタント案件はYellowstone Consulting、正社員エンジニアの転職はTechStars Agentが行い、他にプログラミングサービス事業tech boostなども展開しています。当社は2013年に株式会社Branding Engineerとして創業し、2020年7月に東京証券取引所マザーズ市場(現:グロース市場、証券コード:7352)へ新規上場、2023年6月にホールディングス体制へ移行するとともに、株式会社TWOSTONE&Sons(ツーストーンアンドサンズ)に社名変更しました。

なぜ社名変更されたのですか?

以前の社名「Branding Engineer」には、エンジニア人材サービス会社のイメージがありました。もちろんエンジニア人材サービスは事業の要ですが、その枠にとらわれず、経営戦略から関わる会社であると示す意味で、「TWOSTONE&Sons」に変更しました。「TWOSTONE」はその名の通り2つの石を意味しており、同時に〝意志〟と掛けています。共に当社を創業した私と河端がそうであったように、当社とお客様、私とエンジニア、私と社員など異なる2つの想いがぶつかり合うときに生まれる新しい価値をイメージしました。

サービス展開はフリーランスがメインでしょうか。

フリーランスエンジニアの支援がメインです。創業時は、現在に比べてフリーランスの安心・安全に対する保障やサポートがありませんでした。フリーランスが安心して働くことができ、働き方の一つとして当たり前に組み込まれる社会になるようサポート体制を整え、限りなく社員と近い働き方ができるよう尽力してきました。

具体的に、どのようなサポートを提供していますか?

保険や福利厚生をサポートする独自のパッケージプランに加え、案件が途切れてしまった間の報酬保障、経理関係のセミナーなどを様々な支援を提供しています。また、活用企業にとっても適切な人材とマッチングできるようスキルや就業態度などに一定の基準を設け、万が一基準に満たない場合は企業への採用リストから外すような仕組みも作っています。万が一エンジニアの稼働が中断してしまった場合も、速やかに人員交代のサポート体制を整えています。

御社の社員数や採用基準を教えてください。

社員は約400人(2023年8月末時点)で、うちエンジニアは170人在籍しています。当社のコンサルタントは、エンジニアの仕事内容や働き方を深く理解していることが強みですので、自社採用は人材業界や営業経験よりもエンジニア経験を重視する傾向にあります。履歴書に書かれた経歴やスキルの情報では表せない核心部分を、いかに細部まで読み解いて最適なキャリアプランを提案するか。ここに重きをおいています。エンジニアは自分の領域以外の情報を持ち合わせていないことが多いので、我々が介在し、エンジニアのトレンドや今後発展しそうな「業界情報」を伝えたり、ご本人が望む未来像に対して最適な「キャリア」の歩み方を共に考えて案件を提案するなど、エンジニア一人ひとりのバリューアップに伴走しています。

社員とフリーランスが一体となったチームがよい成果を生む

フリーランスに注目した理由は何でしょうか。

私自身が大学時代にフリーランスで活動をしていたことに起因します。フリーランスという働き方は、時間や場所にとらわれず働くことができたり、収入も自分次第でどんどんあげていくことができる点にメリットを感じながらも「金銭も保険も社会的な信用も不安」だと感じていました。〝不安定要素を取り除けばフリーランスの母数は増える〟、そう思い起業しました。エンジニア領域はプロジェクト単位の雇用も多いので、フリーランスの数や需要は今後ますます増加すると思います。

フリーランス支援における御社の強みを教えてください。

ただ当社が仕事をあてがうのではなく、提案する仕事が求職者のキャリアにどう活かせるかの視点を持ち、市場や求職者の現在のポジションなどを説明しながら、〝求職者に仕事を選んでいただくこと〟を心掛けています。例えば、これまで求職者が関わってきたシステムを導入する企業が今後減っていくと分かっていれば、同じ業務でのジョインにこだわらず、顧客データのBIツール(ビジネスインテリジェンスツール。企業が持つデータを分析して経営や業務に活用するソフトウェア)会社など、他のプロジェクトも提案します。もしもここでBIツールのスキルを身に付ければ、BIツールのスペシャリストとしての道も開けます。

企業に対しては、社員とフリーランスが一体となりチームで働ける環境づくりを提案しています。それが結局はエンジニアの働きやすさにつながり、求職者と企業双方の継続につながるからです。

外注しながら独自のシステムを確立できる新たな業務委託チームを提案

企業が業務委託を活用することのメリットは?

DX化が進むいま、企業はエンジニアチームを内製するか、コンサル会社に依頼するか、開発会社に委託するかの選択に迫られています。内製する場合は採用から始めますが、日本のエンジニアは不足しており、社員として採用することは簡単ではありません。開発会社に依頼しても上流のハンドリングは社内でやることになりますので、ハンドリングができる人材がいなければ上手くいきません。加えて、内製での採用や開発会社への委託は費用が高く、外注した場合は自社独自のシステムではないため差別化ができません。コンサル会社も同じく、依頼する領域や内容などによってはどうしても費用がかさばってしまいます。そこで当社は、内製と外注の中間的な、新しい業務委託チームの形を勧めています。

例えば企業の既存社員に当社のフリーランスエンジニアを加えるチーム編成を提案すると、内製による密なコミュニケーションのメリットを活かし独自性の高いシステムを開発することが可能です。他にも常駐エンジニアとフリーランスエンジニアで構成されるチームなど、それぞれの企業が実現したいことを明確にし、それに合わせたチームづくりを考えています。ここで大切なのは、社員とそれ以外の境目を作らず、チームとしてプロジェクトを管理し進めることです。さらに、長期のプロジェクトは社員が担い、短期的、流動的な細かいプロジェクトはPM(プロジェクトマネジャー)含め業務委託チームに任せることで、精度や手間、費用などの負荷はかなり軽減されるでしょう。

エンジニアの社員採用を希望する企業への対応は?

エンジニアの社員が欲しいというニーズは常時ありますが、フリーランスの人はフリーランスのまま働きたい人が多いので、正社員採用はTechStars Agentのサービスで対応します。ただ、本当に社員の必要があるかどうかは、ヒアリングが必要です。例えば、Webサービスやアプリ開発など一時的な開発構築に伴い採用を検討している場合は、完成さえすればあとは保守運用がメインとなるのでエンジニアにとってはその会社での仕事がなくなり、企業から見ると人材を持て余してしまうのでプロジェクトとして業務委託チームが担ったほうが、企業とエンジニアの双方にとっていい結果になります。

企業に対しては他に、事業部の人事や経営戦略をコンサルティングすることがあり、その場合は当グループの子会社であるYellowstone Consultingが上流のコンサルティングを担当し、必要に応じてMidworksによるリソースやチーム提案が加わります。このように、企業の未来とエンジニアのキャリアを点ではなく線で捉え、グループシナジーをフル活用し、お客様にとって最適な支援をオーダーメイドで提案しています。

マッチングシステムはどのように活用していますか?

マッチングのスピード化のためにシステムを活用しています。システムからの提示されたマッチングに対し、コンサルタントがどこまで精度高くご提案できるかが問われます。自社システムの精度面では、90%程度は機械に任せられるまで分析と改善を繰り返しました。残りの10%は、求職者の気持ちで判断できるようコンサルタントが支援します。

当社ではコンサルタント3~4名で1ユニットの少人数で動き、スピードとマッチング精度を上げる仕組みにしています。情報の量と質が命ですので、基本的にコンサルタントはオンラインではなく出社し、ミーティングも積極的に行うなどしてコミュニケーションを図っています。ユニット間の連携も活発に行うことで企業、エンジニア双方へとことん向き合うということにはこだわっています。

エンジニア領域のワンストップサービス企業を目指す

現在もっとも注力している取り組みや課題はありますか。

企業がプロジェクト化していく過程で何が必要かを明確にできるよう、市場リサーチを実施してより高いパフォーマンスの開発体制を提案したり、企業に最適な体制をカスタムしたりするなど、ホールディングス全体で併走できる体制にすることが現在の注力ポイントであり、さらなる課題でもあります。ホールディングスでワンストップサービスをお届けできれば、そこに中間マージンなどが入らないため、企業のコスト削減にも大きく貢献できます。

企業側も採用が厳しくなっている現状を体感しています。どのような対策を提案していますか?

企業の目指す方向を明確にして経営戦略を立て、逆算した組織作りから関わっています。それは結果的にエンジニアにとって居心地のいい組織にもなり、よりよい成果につながります。組織は、基幹業務は社員が担い、それ以外は社員とフリーランスの一体型チームで構築することが大切です。エンジニアの専門業務はプロジェクトベースでの組織作りが欠かせませんし、人材不足の社会においては、それが最適解だと思います。

最後に、今後の展望をお聞かせください。

日本企業は今後、物価に対して給料を上げ続け、人材の流動化が活発になり、個人の価値は高くなっていきます。だからこそ、システム頼りの条件マッチングを超え、企業も人も成長するための策をオーダーメイドで考える人材のプロが必要であり、当社がけん引していきたいと思っています。