気候変動及び地球温暖化対策分野に特化した転職支援で企業の事業推進に貢献する

再生可能エネルギー分野を中心に、地球温暖化対策に関わる仕事に特化した転職支援サービス『Beluga Career』をご存知だろうか。ニッチな分野の印象だが、過去にない領域であるからこそ、同業種・同職種内での転職だけではなく、異業界や未経験からの転職実績も増えており、幅広い世代、キャリアの採用の実現につながっているという。『Beluga Career』はなぜ気候変動及び地球温暖化対策分野に特化したのか、どのようにしてこれまでにない新たな転職支援を実現しているのか。運営会社であるLeaf Ring株式会社の代表取締役社長、岡﨑直樹氏に聞いた。

長期的な成長が期待されている地球温暖化対策分野

最初に、御社の事業内容をお聞かせください。

Leaf Ring株式会社は、地球温暖化対策に取り組む企業や仕事に特化した転職支援サービスを提供する会社です。具体的には、再生可能エネルギーをはじめ、省エネルギー、電気自動車、蓄電池、水素などの代替燃料分野が該当します。支援する職種は、例えば、発電所における専門資格を有したエンジニアなどを始めとして、事業開発、営業、経営企画、ファイナンスなど多岐に渡ります。地球温暖化対策分野の求人を多数揃えており、専門知識を有したコンサルタントが、脱炭素ビジネスの動向から各企業の詳細説明、求職者のキャリアプランの設計まで幅広く支援しています。

求職者のキャリアや世代の傾向はありますか?

現在、1万8,000人の求職者登録があり、技術系の希少資格保有者を始めとして、直近は事業企画、営業、ファイナンスなど技術系以外の職種にも裾野を広げています。平均年齢は40代ですが、20,30代の若手層から、定年退職後の方にも多く登録いただいており、70代の方の転職支援実績もあります。企業側は、技術経験者や有資格者であれば年齢はさほど気にしない点が特徴です。地球温暖化対策に関わる仕事がしたくて登録する人がいる一方、石油・石炭など再生可能エネルギーやクリーンエネルギーへの転換が確実に進んでいる業界に勤務していて、業界の未来や自身の仕事に危機感を覚えている人も少なからずいます。現在、日本の電力の約7割が石油や石炭などの化石燃料で作られており、そのぶん従事者も多いので、危機感を覚える人もおのずと増えていると想像します。

登録者の全てがすぐに転職を考えているわけではなく、業界情報を入手する目的でサイトを訪れる人も少なくありません。中には1、2年かけて知識を深めて転職アクションを起こすような方もいらっしゃるので、「まずは気軽に相談してみる」というところからご相談を頂けたらと思っています。当社では、領域特化型だからこその強みを活かして、ご本人が納得して転職できる環境を作っています。

御社社員も地球温暖化対策に関わる仕事に就く目的で入社したのでしょうか。

そうですね。環境問題に関わりたい思いと、このテーマに長期的な成長性があると考えて入社したメンバーばかりです。近年新たに登場しているテクノロジーの多くは、おおよそ3年から5年、長くても10年くらいのトレンドではないかと思います。いままさに注目されているAIやブロックチェーンなどがそれにあたります。ですが、気候変動をはじめとした環境問題はもっと長期的に取り組むべき問題であり、それに伴い専門的な人材が必要とされます。トレンドが入れ替わる度に新たなキャリアを構築するのは大変ですので、その意味でも地球温暖化対策に関わる仕事に将来性を見出す人が多いのかもしれません。

「未来につながる事業を始めたい」思いが地球温暖化対策分野につながった

なぜ地球温暖化対策分野に特化した転職支援サービスを始めたのでしょうか。

きっかけは、私の子どもが生まれたことです。それまでの私は、人材業界や環境問題分野とは無関係の、DX系のベンチャー企業で働いていました。子どもの誕生により、子どもたちの未来につながる事業を始めたい思いが強まり、具体的な手段を模索して着目したのが環境問題、特に地球温暖化対策でした。そこで私は、脱炭素や再生可能エネルギー関連の有識者を訪ねてまわり、現在の課題をヒアリングしました。結果、知識や技術を持った人材が不足していると分かったので、地球温暖化対策分野に特化した人材サービスを事業にすると決め、創業しました。未経験で人材サービス会社を立ち上げるなんて無謀に思われるかもしれませんが、前職でBtoBtoCの新規事業の企画開発を何度も経験しており、自身の事業を拡大する中で、中途採用業務にも関わったことがある経験から、試行錯誤しながらも事業を軌道に乗せることができました。

今後は、領域を拡大されて上場されるご予定ですか?

上場を目指す企業にするか否かについては、共同創業者と何度も議論しましたが、上場を目標とする道は選びませんでした。地球温暖化対策は長期的なテーマであり、上場を目指した短期的な成長とは相反します。当社の理念が「環境問題に挑み続ける」である限り、長期的なテーマにじっくり取り組む会社であろうと決めました。とはいえ、企業として利益は上げなければいけませんので、できるだけ小さな投資で短期に事業が立ち上がり、かつ社会的に役立ちながら一定程度の利益を出せるビジネスモデルという点からも、人材サービスが創業事業として最適な形の一つだと考えています。

既存の技術を新興分野に応用するこれからの時代の転職実績を生みだす

御社事業の強みは何でしょうか。

領域特化による専門性の高さです。深い専門知識を基に、実際の転職事例の共有なども行いながら、より厚みのあるヒアリングとご提案ができます。太陽光発電所の求人の一例として、規模や運営方針、運営体制、運営開始時期など、求職者が求めるであろう情報を各企業の担当者に深堀りして聞いているため、マッチングの齟齬が起きにくいメリットがあり、クライアント企業様からも評価いただいています。さらに当社では、コンサルタントの知見を深める意味も込めて、自社の太陽光発電所を保有していることも珍しい特徴の一つです。発電施設がどのような仕組みで稼働しているかを学ぶにあたって、自社施設で行うことでより興味を持ちやすくなりますし、実際に発電所を訪れて見学する機会を定期的に提供しています。また、企業様へ我々の環境問題に対する本気度を伝える上でも、自社保有していることが一役買っていると感じます。

集客では、役員陣が培ってきたデジタルマーケティングスキルを活かし、リスティング広告などの施策を内製化していることが特徴です。当社は北海道から沖縄まで紹介実績があり、自社サイト経由で全国各地からエントリー頂いている状況です。

再生可能エネルギー分野の歴史は浅く、経験者の母数はけっして多くないと思います。どのように求職者数、マッチング数を増やしていますか?

歴史が浅く、新たに始まる事業や業務が多々あるため、既存の職種のどれも当てはまらない仕事が発生するのが新規分野の特徴の一つです。特に当社が関わる分野は、何かの産業を軸に仕事があるわけでなく、地球温暖化対策や脱炭素というテーマに沿って産業や技術を横断しますので、今後も新たな職種や技術の応用が増えると思います。企業様からのヒアリングをしっかり行う中で、周辺産業からの転職という可能性も模索しながら幅広くご提案をさせていただいております。珍しい事例としては、核融合発電のスタートアップ企業へのヒアリングの中で核融合プロセスにレーザーの知見が必要という話を伺い、テレビなどの液晶に携わってきたレーザー技術者をご紹介するといったマッチング事例もあります。

またわかりやすい例でいうと、直近のトレンドとなっている洋上風力発電については、国内に経験者がまだほとんどいない状況ではありますが、周辺産業であるエンジニアリング会社や、土木系、海洋系のゼネコン、マリコンなどからの転職者も増えており、この流れは今後も加速するでしょう。

エネルギー・モビリティ・次世代テクノロジーの3つの柱で企業の事業推進に貢献する

企業はどうやって御社の存在を認知するのでしょうか。

業界メディアへの露出やイベント登壇を積極的に行い、認知につなげています。昨年はソーラージャーナルという太陽光に特化した雑誌に掲載し、関連セミナーにも登壇しました。

環境問題解決に取り組む企業は増えていますか?

増えました。エネルギー開発領域は巨額の費用がかかるため、資本がある大手企業が多くなりますが、不動産関連や通信系の会社、石油・石炭系の会社も、次世代エネルギーとして事業を始めるケースが増えました。多くは再生可能エネルギーの専門家が社内にいないため、初期段階から支援させていただきます。スタートアップ企業の場合、大手とは違う、新しい視点の事業を始めることが多く、2030~2040年の実装が期待される核融合発電もその一つです。IT系企業でも、脱炭素などの環境問題をテーマに、例えば企業の二酸化炭素排出量を可視化するソフトウェアなどの開発に取り組んでいます。

これから注力される取り組みを教えてください。

脱炭素化分野を、エネルギー・モビリティ・次世代テクノロジーの3分野に分け、それぞれに特化した支援とコンサルタント育成をしたいと考えています。これまで主軸として注力してきたエネルギー分野に加え、自動車業界においては電気自動車(完成車)や基幹部品である蓄電池等を始めとした脱炭素化や次世代燃料化へ向け大きく動いていることもあり、自動車関連分野の専門性を高めていきたいと考えています。また、次世代テクノロジーには、先ほど述べた核融合や空飛ぶ自動車等が含まれ、現在はまだ注力できていない分野として培養肉、人工肉といった分野も含まれます。ただ、当社のメンバーはまだ12名と少なく、現状はお取引数に限界がある点が課題になっています。より多く幅広いご要望に応えられるよう、専門性を保てる範囲で組織を拡大する予定です。

また、中長期的には環境問題に取り組んでいくことの必要性を訴求していく事業や技術者育成事業などにも取り組んでいく可能性があります。現状、再生可能エネルギー分野の成長に反比例して、電気系を始めとしたエネルギー分野に関わる若手技術者は減少の一途をたどっています。工業高校の電気科や高専の電気科、大学の電気科など、年々人気がなくなっています。理系の勉強が好きな人も、どちらかといえばゲームやシステムなどのプログラミングの道へ進む傾向があります。ですが、環境問題解決の分野においてこうしたエネルギー分野の技術者は欠かせない人材であり、一般的な定年の年齢以降も働き続けられる仕事です。事業を通じて、エネルギー分野の技術者の将来性、社会貢献性を伝えていくことは、私たちが担うことの出来る使命の一つと考えています。