2018.2.9(金)
ポーターズ株式会社 セミナールーム 開催
派遣会社を取り巻く状況が変わる中、限られたリソースで生産性を最大化し、利益を伸ばすにはどうすればいいか。派遣事業者向け統合管理システム「HRBC Staffing」を提供するポーターズが提唱する、新しいKPI「生産性・利益マネジメント」。同社牧港氏が、マーケットトレンドや各社成功事例をもとに、これからの時代のマネジメントについて講義。
最初に牧港氏が言及したのは、派遣会社の広告費が高騰している現状。新規登録スタッフの単価は、一人あたり5000円~2万円になるという(一般事務派遣を想定)。
「2014年頃からこの状況は続いています。派遣会社の2/3が広告費を増やしたけれど、登録スタッフが増えたのはわずか30%。広告費をかけても登録者が増えない状況は今後も続いていくでしょう」(牧港氏)
実際に稼働する登録スタッフの場合、単価はさらに上がって約7万円。派遣会社によっては10万円に達し、経営を圧迫している。
広告費の高騰だけでない。2015年には、派遣スタッフへの教育訓練が義務化された。実施するにあたってコストも時間もかかり、リスクが増える。派遣社員が無期雇用に転換する2018年問題もある。継続的な契約更新が収益を生む派遣会社にとって、これも利益を減らす要因となっている。コンプライアンスや法令順守もより厳しく求められるようになり、リソースを割かなくてはいけない。
そんな中で利益を上げるために、牧港氏は新しいKPI指標「生産性・利益マネジメント」を提唱する。
「ここ10年くらいは、企業を何件訪問して、何人と名刺交換した、という行動管理のKPIが主流でした。けれど、成果を出している派遣会社は、支店・部署ごとにKPI管理を行うユニット経営を取り入れています」
ユニット経営とは、地域、顧客セグメントなど事業課題が異なる支社・部署ごとに、売り上げ目標や利益、事業課題に合ったKPI設定を行うこと。
例えば、東京には本社機能が集中している。群馬県には工場が多く、製造業のスタッフのニーズが高い。設定するべきKPIの指標(図を参照)は全社で同じでも、支社・部署ごとに強化するポイントは自然と変わってくる。それに合わせたマネジメントだ。
「ここに挙げた重要指標のKPIを日次、週次、月次、四半期時、年次で可視化できるようにし、経営者やマネージャーが随時確認できる状況を作る必要があります」
HRBC Staffingであれば、そういったデータを一元管理でき、どこにどんな課題があるか、どういった原因で発生したのか理解できると牧港氏。また、まだ誰も推薦していない求人や、求人を紹介していない登録者もワンクリックで検索可能。CSVデータをもとに、どういう求人を開拓すべきか、というマーケティングにも活用できるという。
ユニット経営の失敗例として、牧港氏は他社を比較対象にするケースを挙げる。そもそも他社は、経営環境やマネジメントが異なるため、比較すべきではない。あくまで部署・支社内で比較した方がいいと強調した。
続いて牧港氏は、「登録者の生涯価値マネジメント」の重要性に触れる。人生100年時代を迎え、人手不足という社会状況もある中、派遣会社はより手厚く、登録者のスキルアップを体系的に管理することが求められる。
「HRBC Staffingは、登録者がどういうスキルを付けたか、就業先が増えるたびにアップデートできます。また、キャリアカウンセリングの情報も記録できるので、次はどこに紹介するかの指標にもなります」
デジタルマーケティングの強化にも有効だ。HRBC Staffingを自社サイトと連携させれば、求人情報やエントリー情報が自動で入ってくるようになる。2018年3月をめどに、はたらこねっと、リクナビ派遣、エン派遣との自動連係も予定しているという。そのほかの媒体でも、CSVで取り込みが可能だ。自社の基幹システムや会計システムなどとも、有償にはなるものの開発を行っている。
HRBC Staffingと連携すると、求職者のマイページ機能を作ることも可能で、エントリーや求人紹介、キャリア形成支援、イーラーニングなど、必要なことをすべてシステム上で完結できる。
最後に牧港氏は、派遣会社の情報管理のレベル感について言及する。具体的には以下の3パターン(カッコ内の数字は、実現できている企業のおおよその割合)。
レベル①
求人情報・求職者情報を全社で共有・可視化できている。(60%)
レベル②
どの担当者がどの企業にスキルシートを送った、いつ職場見学に行く、といった行動管理を全社で共有・可視化できている。(30%)
レベル③
コンサルタントが報告せずとも、業務の成果を自動集計し、KPIや指標を全社で共有・可視化できている(10%)
この現状を踏まえたうえで、「情報管理は個人に任せているから不要、という声もある。けど、メモなどアナログな管理だと、スタッフとどんなやり取りがあったか、どんな企業を紹介したか、など共有できない」と指摘。
情報共有ツールとして、HRBC StaffingとExcel、旧勤怠システムとの比較をしたうえで、「共有したとしても、体系的に残さないと有益な資産にならない。また立場によって見るべき筋や情報は違う。拠点長は利益、マネージャーは担当組織の成果、スタッフは個別案件といった風に。必要な情報を、必要とする人がすぐ確認できる状況にすべき」と、生産性や売り上げアップのための秘訣を話した。
今後、HRBC StaffingにAIを搭載していくという。そして、人がすべき業務以外はすべて自動化を目指していく。自動化によって、業務の30~40%が削減されたという企業の例を牧港氏は挙げ、「コンサルタントが本来業務により注力できる環境をつくっていく。そうすることで生産性が上がり、売上げも増えていく」と話した。
HRBC Staffingの費用は、1IDにつき1万2500円~、初期導入費用は無料となっている。ITに詳しい方が社内にいない場合、導入コンサルティングサービス(有償)もあり。