2018.7.20(金)
AI時代にそなえる派遣業務の自動化
~人材派遣のための営業支援クラウドHRBC Staffingセミナー~
派遣会社はいかにして利益を拡大するべきか? 新規登録者の獲得単価の高騰、スタッフへの教育訓練の義務化に伴うコスト拡大など、さまざまな逆風があるなかで、成果事例の紹介と自動化を実現するためのステップを紹介するセミナーがポーターズ社で開催された。
派遣会社はいかにして利益を拡大するべきか? 新規登録者の獲得単価の高騰、スタッフへの教育訓練の義務化に伴うコスト拡大など、さまざまな逆風があるなかで、効果的な施策や成果事例を紹介するセミナーが6月8日、ポーターズ社で開催された。
講師として登壇した牧港氏は、まず派遣会社の置かれた現状を説明。スタッフの新規登録単価は平均5000円~2万円、稼働中のスタッフは2万~7万円と上昇しており、その影響で利益が減少している。また、広告費を増やした派遣会社は66%もあるが、登録者が増えたのは約30%と、多くは費用対効果が見込めていない。新規獲得ではなく、既存スタッフの再稼働を試みても、コーディネーターが登録者一人ひとりに荷電するのは効率が悪い。
教育訓練の義務化では、登録スタッフ一人あたりの営業利益率が13.8%以上も減少している。また、無期雇用派遣が2018年より実施されたことで、派遣会社の収益源が崩壊。そんななか、成果を出している会社の施策として、牧港氏は“自動化”を挙げる。
「自動化は、限られた登録者を取り合うような競争原理が働かず、投資した分だけ成果になりやすい。すべきことさえ決まれば成功率も高く、費用対効果も見えやすい。コーディネーターの残業を減らすなど、働き方改革といった時代ニーズにもマッチしています」(牧港氏)
自動化は一般的に、「目的」「対象業務フロー」「アクション」「実現手法」を組み合わせて行っていくと牧港氏は説明。また「業務工数を減らす」「業務の抜け漏れを無くし品質改善する」「他社との差別化要因にする」など、明確に目的を決めることで成功しやすくなるという。続いて牧港氏は、自動化による成功事例を紹介。
メールの自動化を行った派遣会社は、企業、スタッフ、社内向けでパターン化できるメール業務を自動化した。コアとなる20業務を細分化し、100以上の自動化を実装。エントリーから登録までの工数を削減し、掘り起しによって登録者もクライアントも増加したという。
MAツールとHRBC Staffingを自動連係した例もある。MAツールで回収した、求職者がどのような求人情報を見た、という行動情報を活用し、マッチングの精度を向上させたり、継続的なフォローを行ったりしている。
面談予約アプリの導入によって、応募から面談予約までの業務を自動化した派遣会社は、工数や広告費の削減、面談率の改善に成功。夜間のエントリーにも対応し、キャンセル率も低くなった。自動対応すべき人材、そうでない人材をロジック化し、ターゲット以外の呼び込みの未然防止も実現している。
派遣スタッフの更新確認など、定型化できるコミュニケーションを、チャットボットによって自動化した例もある。更新を迷っている方にはコーディネーターが介在するなど、手厚いフォローを可能にした。
これらのほかにも、「メールをSMSやLINEで送りたい」「職種・エリアなどで簡易的にマッチングして大量にメールを送りたい」「勤怠管理システムと連携させたい」といったニーズにも個別対応している。
では実際に自動化を導入するにあたって、どのような手順で進めるべきか。牧港氏はまず、ゴールを明確にすることを挙げる。
「何を自動化してどのような成果を出すか、あるいはどのくらい工数を削減するか。例えば、エントリーからの登録率を10%から40%に上げたい。掘り起こしで対象者全員にコンタクトを取りたい、などゴールから決めていくことが現実的です」
続いては業務フローを設定すること。派遣会社では、人や拠点によってフローが異なることが多い。それを統一化する必要があるという。実は自動化を目指すとき、多くの派遣会社がここで挫折してしまうのだそう。
「ある業務を自動化したくても、拠点やコーディネーターによって『こうしてほしい』と要望がある。すべて実現しようとするとシナリオが膨大になり、開発コストもかかる。運用後の収集もつかなくなるので、俗人的なルールや拠点ごとのルールはある程度廃止し、全社統一の業務フローをつくるべきです」
とはいえ、俗人性や拠点ごとのルールをすべて排除すると、自動化が実現しても効果は小さくなる。そのバランスをどうするか、社内や拠点間で議論することが大事だと牧港氏は話す。
どの手段で自動化をするかも大事になる。登録スタッフに通知をする場合でも、メール、SMS,チャットボットなど複数の手段がある。メールは送りやすいが開封されづらい、SMSはコストが高く文字数制限もある、など一長一短なので、慎重に選択する必要がある。また登録スタッフの属性を分析し、スマホの保有率やITリテラシー、開封率が高い時間帯、競合の動向などを参考に進めることが、成果を出す近道なのだそう。
「開発中は、データのメンテナンスや整理をすることが大事です」と牧港氏。データが整理されていれば検索もしやすく、将来的にAIを導入したときに精度が上がる。またメールの暴発といったリスクも下がるからだ。併せて社員たちへの教育も行っていく必要があるという。システムに入力したら、自動でメールが飛んでしまうのでは、などの恐怖感を払しょくするためだという。
「そうすることで社員たちは、最初は半信半疑でも、実際に使ううちに『便利だね』『こんなことも自動化できるのでは』と意識が変化していきます。それと開発のときは、段階的に機能を追加することを想定しておくべきです。そもそも、最初からすべてつくりこもうとすると難易度が高い。稼働しながら成功体験を積んでいき、徐々に広げていくのがいいでしょう」
最後に牧港氏は、自動化を実現するために必要なシステムについて説明する。最も大事なことは、フロントとバックエンドをわけること。例えば勤怠システムには、重要な情報がたくさん保管されている。フロントにメールの自動化などをつけると、暴発したときのリスクがあまりにも大きいためだ。スムーズな連携のためにはデータ連携の柔軟性や、カスタマイズの柔軟性のあるシステムが重要でカスタマイズ性が低いと、自動化を外部開発会社に依頼した場合、数百万円もの予算がかかってしまうこともあるという。
自動化には、人のアクションによって稼働が始まる“半自動化”の領域も多い。例えばエントリーがあったとき、すべての方に面談設定してしまうと、書類審査を通過しない方も該当してしまう。コーディネーターが目で見て判断し、初めて自動化になるUIも欠かせない。
これらすべてに該当するシステムがHRBC Staffingだ。自動化を実現するためのDB構成やAPIが実装されており、勤怠管理や会計など外部システムとのデータ連携も可能だ。カスタマイズもユーザー自身が自由に行える。
規制産業と呼ばれる派遣業界。法改正に伴って競争が激化するなか、どう生き残るべきか。その一つのカギが、テクノロジーの活用であることは間違いない。ICT化がさらに進み、AIなど最先端技術も普及していくなかで、いち早く先を見据えた対策を行うことが、派遣会社の未来を築いていくのかもしれない。