Research Institute

2022.07.06

人材紹介業における業務システムの活用度、従業員エンゲージメント、業績の関連度調査

実施期間:2022年5月17日~5月27日/有効回答数107  対象:ポーターズマガジンご購読者・セミナーご参加者の人材関連事業に従事する方、PORTERSユーザ様

いわゆるコロナショックによる各業界への影響もやや落ち着きを見せた2022年6月現在、大きな打撃を受けた人材業界の中でもひと際早い回復と成長を見せる「人材紹介業」に携わる企業、プレイヤーの方々に「人材ビジネスにおける業務システムの活用度、従業員エンゲージメント、業績の関連度調査」と称して、業界に属する各個人のビジネス・システム課題、注力ポイント、エンゲージメント(仕事、会社への貢献度)の調査と、またそれらが業績にどう関連しているかを調査いたしました。その結果について報告いたします。

1.回答者の属性

回答者の企業規模は小規模、中堅中小、大手がそれぞれほぼ同じ割合、人材紹介部門の人数に関しては9名以下が全体の53%、10~49名が全体の約33%、残りは50名以上でした。
回答者の担当ポジションはCA,RAなどのいわゆるプレイヤー層が多くなっていますが、小規模な組織に所属する方の回答も多く、スカウト業務や部署運営を兼任している方のご回答も目立ちました。
年間決定人数/社数についてCAでは1~9名の決定が最も多く、RAでも1~9求人の決定が最も多い結果となりました。

2.業務、業績に関して

業務において注力しているポイントは「求職者獲得の数や質」「応対スピード」が上位に、同時に課題に感じていることも「求職者獲得の数や質」が上位になりました。課題の方ではそのほかに「求人オーダー獲得数」「求人情報の社内共有」なども挙げられました。

業績好調時の注力ポイントについては「明確なターゲット選定と目標設定、特にKPI・プロセス管理」が上位でした。その他、「応対スピード」「自身のスケジュール管理」「求人、求職者理解へのこだわり」などが上位に続いています。なお注力業務、好調時の理由については決定求職者数によって違いがあり、そのことについては本レポートの後半に記載しております。

3.使用中の業務システムに関して

自社で導入中の業務システムの活用状況はほとんどの回答者が5段階中3以上というスコアで、概ねどの企業も使いこなせているようです。
そのうえで使いこなせていない機能としては「マッチング機能」「KPI・プロセス管理機能」「LINE・SMS連携機能」が上位に挙がりました。マッチングやLINE・SMS連携機能はそもそも搭載されていないシステムもあるため、実際に一番使いこなせていない機能は「KPI・プロセス管理機能」だと想定されます。

4.満足度、エンゲージメントに関して

満足度は5段階中4以上の回答が全体の63%、エンゲージメントに関しては全体の86%でした。 いずれも高い数値となり、人材紹介ビジネスに関わる人は会社、業務への貢献意欲が高いということが見受けられます。次にそれぞれの理由、背景について記載しております。

不満を感じる要因は「目標達成の未達成」が圧倒的に多くなっており、次いで「KPI、プロセス目標の未達成」 「企業に合う求職者を紹介できていない」という回答が多くなっています。
そのほかの理由としては評価や給与、また「参考になるモデルや指標がいない」「今後のキャリアが見えない」などの回答も多くの割合を占めています。さらに個別回答では「魅力的な求人不足」といった業務課題や、「面談、商談スペースなど環境面への不満」なども目立ちました。
一方、エンゲージメントが高まるのは「事業の目標達成ができた時」「良いマッチングができたと感じた時」「求職者/企業に感謝された時」が上位という結果でした。

次に、ここまでで見てきた①注力業務や業務課題 ②システム課題 ③満足度・エンゲージメントについて、各社プレイヤーの業績(年間の決定求職者数)ごとにどのような違いがあるのかを見ていきたいと思います。

5.【業績(年間決定求職者数)】と【注力業務、業務課題】の関連性

「決定求職者数が多い企業の注力ポイント」=「決定を増やすためのポイント」と読みかえると、まずは徹底した売上管理を行いながら求職者獲得の質を高めることが重要で、また質が良い求職者と出会えた際にはその後の面談内容や応対スピードにこだわってフォローすることが決定を増やすためのポイントとなりそうです。一方、課題については決定数が少ない企業は数、多い企業は質、と決定数に応じて転換することがわかりました。

6.【業績(年間決定求職者数)】と【システム課題】の関連性

先述の3.で述べた通り、回答者全体でみると概ねシステム利用ができているという結果でしたが、5段階中4以上(とても使いこなせている、やや使いこなせている)と回答した人を決定求職者数ごとで比較すると「1~19名」で51.5%、「20~39名」で50%、「40名以上」で87.5%となりました。求職者をたくさん決定しているプレイヤーほど、システムを使いこなせているという事実、また自負があるようです。
使いこなせていない機能としては、どの層も「マッチング機能」を挙げており、また層ごとの違いとしては決定求職者数が多い企業では「KPI・選考プロセス管理機能」が、決定求職者数が少ない企業では「求職者/企業・求人情報の管理機能」が挙げられました。

7.【業績(年間決定求職者数)】と【満足度、エンゲージメント】の関連性

満足度・エンゲージメントに関しては上記のとおりです。 決定求職者数が20~39名のプレイヤーはほかの層に比べて満足度、エンゲージメントのスコアともに低い結果となり、年間40名以上の決定求職者数の層はいずれのスコアも最も高くなりました。

8.まとめ

・システム上でまずは「求職者管理・求人管理」を徹底し、そのうえで「KPI・プロセス管理」が実行できる機能、仕組みを備え、運用していくことが業績向上につながる
・業績と満足度やエンゲージメントは完全に比例するわけではないが、決定求職者数を大きく増やしたい場合には着目すべきポイントであり、年間の決定求職者数が20~39名(月間で2~3名程度)の場合はエンゲージメントが低い可能性があるので注意が必要

以上のことに留意しながらシステム活用、プレイヤー同士のコミュニケーションを行っていくことが人材紹介ビジネスにおいて大切なことと言えそうです。ポーターズとしては引き続き、システム改善と情報発信の面から皆様を支えるようにしてまいります。