2020年3月の有効求人倍率は前月との比較で0.06ポイント減で、3年6ヶ月ぶりに1.40を割り込みました。今後しばらくはコロナ以前の有効求人倍率には戻らないだろうとして、今後市場に求められていく人材を、人材サービス産業としてどのように確保・育成すべきかに焦点を当ててみた
  • ポイント1
    マッチング・就業管理を通じたキャリア形成の支援

    マッチングによるキャリア形成支援とは、転職という節目に、個人の成長やキャリアプランの実現を考慮して、企業の人材ニーズと結びつけることである。新型コロナウイルスの影響により、多くの企業が経営不振という状況が続き、そのため企業は、人材採用に資金を割く余裕はなくなり、求人数は落ち込んでいます。また、2020年3月の完全失業率(季節調整値)は2.5%、前月に比べ0.1ポイント上昇し、コロナショックにより企業の採用活動が消極的になり、景気が悪化していることがうかがえます。

    今後、募集される求人数は限られてくる中、人材サービス会社には下記2つの視点がより重要になってきます。
    ①求人と求職者のミスマッチをなくす
    ②個人のキャリア形成になるようなキャリアカウンセリングの実施


    ①は企業が「どのような人材を求めているのか」をきちんと把握し、求人に落とし込むことが肝要です。表面的な仕事の内容だけでなく、入社後のキャリアアップや期待される役割等も盛り込むことで、より生きた求人となり企業の意思をくみ取った求職者とのマッチングが可能となります。人材サービス会社はただ仕事の内容や条件面をヒアリングするのではなく、企業が求めている人物像の理解と、入社後のイメージが沸くような求職者目線でのヒアリング力が必要となります。

    ②はキャリアコンサルタントまたはコーディネーターが、キャリアアドバイザーとしてより機能することが求めらます。求職者の過去の経験や経歴、仕事に対する考え方や何をやりがいと感じているか、これまでのマッチング結果等を分析し、求職者にとってこの求人(会社)なら今後のキャリア形成が可能ではという視点が必要です。

    例えば、正社員への転換を希望する者には、現実的な可能性とのすりあわせを行った上で就業機会の提示を行う。また、有期雇用の就業においても、中長期的な視点から、能力向上につながる職場選択をサポートする。

    一方、派遣・請負社員については、就業管理を行う雇用主としての立場からより一層、能力開発や処遇の向上に力を入れていく。
    例えば、スキル評価の実施と処遇への反映、就業期間・業務の習得状況に応じて、ユーザー企業に対してOJTによる職務経験拡大の理解を獲得することなどを進めることである。

    ①も②も求人内容や求職者のデータをシステムへ投入し、蓄積していくことが大切です。求人・求職者の情報はシステムで一元管理し、マッチングやプロセス、就業管理といったデータベースを構築し、今後のナレッジとして活用していくことが重要になります。 
  • ポイント2
    「採用・就業」における年齢の壁の克服

    医療の発達、栄養状態や衛生環境の改善などによって、人生は100年時代を迎えています。政府の試算によると、日本の労働人口は2040年までに1,200万人も減少する可能性があります。つまり、労働人口が約20%減ることになります。この状況を打破する一策として、高齢者や女性、外国人の活躍促進、働き方改革が必須となってきます。
    2020年の国会では「高年齢者雇用安定法」などの改正案が提案されており、この法案が成立すれば2021年4月からは70歳までの雇用機会の確保が企業の努力義務となります。
    一方で、求職者の年齢が高くなるにつれ、希望通りの就業が難しいという現実も依然として存在します。
    募集・採用における年齢差別は原則として禁止されているものの、実態は必ずしもそうではない。高齢化が進む今後、この問題はさらに深刻になります。

    採用・就業における「年齢の壁」の克服への取組みは必須である。

    人材サービス会社は、中高年就業希望者の就業機会の開拓に積極的に取り組む姿勢が求められます。
    あわせて、企業の年齢による先入観を取り除くために、個人の持つ能力や意欲を言語化して伝えるほか、中高年の採用や活用の好事例の情報提供などを行い、中高年層の活用を働きかけることを推進していくことが重要です。

     
  • ポイント3
    異なる産業・職業へのキャリアチェンジの支援

    100年に1度と言われるコロナ危機、5月25日には緊急事態宣言も解除され、アフターコロナの影響として企業は「コロナ後の新常態」における生産設備や雇用人員の適正な規模を探りつつ、生産能力に絡む設備投資は抑制し、雇用に関してはさまざまな手法を駆使してスリム化を図ろうと予想される。個人の職業寿命が長期化する2020年以降も、企業の人材活用ニーズと個人の就業ニーズを結びつけることは、これまで以上に難しく、ミスマッチが発生する可能性が高まる。

    人材サービス産業はマッチング能力を向上させなければならない。

    特に異なる産業・職業へのキャリアチェンジは実現が難しく、適応するまでに企業・本人双方にギャップが発生しがちである。
    よって人材サービス産業は、
    ・個人に対しては、キャリアカウンセリング等によって希望する仕事や就業条件を調整し、適応が進むようサポートする。
    ・企業に対しては、人材活用ニーズの優先順位に応じて、実績や経験だけでなく潜在能力もあわせて、可能性のある人材を発掘し、迅速に紹介する。


    異なる産業・職業へのキャリアチェンジにおいて、どのような経験や能力が転換可能なのかを、各事業者がナレッジとして蓄積することも重要である。
  • ポイント4
    グローバル人材の採用・就業支援

    企業経営のグローバル化にともない、日本と海外、日本人と外国人の別なく、国際的な事業展開を担うグローバル人材の争奪戦は、ますます熾烈を極めるだろう。
    海外での人材採用や国をまたいだ労働移動が増えるなかで、人材サービス産業もまたグローバル化を迫られる。
    適任者の発掘、育成、転換を国境の制約なくスムーズに行えるよう、各国の労働市場に通じ、それぞれのマーケットに適したサービスを開発、提供できる体制を整えていかなければならない。

    また、外国人の日本での就労は、在留資格の確認や日本への適応のサポートも必要となるため、とくに就業管理機能を持つ派遣・請負会社の果たす役割が期待される。
  • ポイント5
    人材育成による人材サービス産業の高度化

    すでに述べた4つのテーマのような労働市場の諸課題を解決するためには、人材サービス産業に携わる一人ひとりの職業能力の専門化と高度化が不可欠である。ポーターズが今年4月に実施した「人材ビジネスにおける新型コロナウイルス対策調査【人材派遣業 編】」でも、今後のリスクにどう備えるか、という質問に10%の企業が、高度人材育成を上げています。




    ※実施期間:2020年4月8日~4月22日/有効回答数81  対象:ポーターズマガジンご購読者・セミナーご参加者の人材関連事業に従事する方

    人材サービス産業は、「人材サービスプロフェッショナル」の育成に積極的に取り組む。
    法令に関する知識や倫理規範はもとより、キャリアカウンセリングや企業の人材ニーズの的確な把握、個人・企業双方への調整能力の習得など、能力開発を行う範囲は広い。加えて、労働市場の需給調整の一翼を担う人材サービス産業は、個人・企業、そして社会から信頼されていなければならない。人材サービス産業の従事者は高い意識を持ってコンプライアンスを重視し、優良事業者の育成に引き続き取り組むことが望まれる。

    以上のテーマ以外でも、人材サービス産業が取り組むべき課題は非常に多く、かつ多岐にわたります。今後も個人の就業ニーズ、企業の人材活用ニーズが多様になり、労働市場の諸課題は複雑性を増すことは容易に想像できます。コロナウイルスような予期せぬことが起こった時こそ、これまで後回しになっていた課題へチャレンジし、個人・企業のニーズにもしなやかに対応できる組織体制が人材サービス会社に求められていると考えます。

    ポーターズでは、人材サービス会社にとって最も重要な求人・求職者・マッチングから選考プロセスの管理、売上や派遣就業管理のデータを一元管理できるシステムの提供を通じ、今必要な情報をセミナーやマガジン、ブログで発信しています。
    また、他社導入事例の掲載やお役立ちセミナー(無料)も随時開催しています。






    今後も人材サービス会社向けに役立つ情報を発信し続けていきます。