厚生労働省によると、日本国内の有料職業紹介事業者の数は2022年1月時点で28,000社を越えています。数ある人材紹介会社の中でも競争力を高めるために、中小エージェントはどんな戦略を立てなければならないでしょうか。
大手の人材紹介会社との違いを踏まえて、中小エージェントがどうやって差別化を図っていくべきかポイントを解説します。人材紹介業を営む経営者や事業責任者の方の参考になれば幸いです。
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ポイント1大手エージェントと中小エージェントの違い
大手エージェントと中小エージェントの根本的な違いは、リソースの総量にあります。中小エージェントは資本・人的リソースともに限られているため、大手エージェントと同じ土俵で戦っても勝つのは難しいでしょう。
中小エージェントが事業を拡大するためには、大手との違いを理解した上で経営方針や戦略を立てることが肝心です。集客力の違い
大手エージェントは人的リソースが豊富なため、専門性の高い求職者の集客担当が専任で業務を行うことが可能です。企業によってはスカウトメールの選任担当や、業界・職種・求職者属性ごとの担当をつけて、それぞれに特化した集客ノウハウを蓄積しながら組織的に集客しています。
しかし中小エージェントでは、求職者集客から初回対応・キャリアカウンセリング・面接前後のフォローなどの業務を、同じ社員が一貫してやることも珍しくありません。集客だけに特化してリソースを割くのが困難な中小エージェントは、大手と比較して劣位の立場になりがちです。
また資金力の高い大手エージェントでは、テレビCMや大型転職イベント・電車や地下鉄の駅構内の広告など、認知獲得のための大型プロモーション施策を積極的にできる点も強みでしょう。保有する求人案件数(取引企業数)の違い
大手エージェントは、中小と比較して求人開拓を行うRA(リクルーティングアドバイザー:法人営業担当)の人数が多いです。求人開拓のためのマーケティングにも投資しやすく、保有する求人案件数が増える傾向があります。さらに大手エージェントでは「たくさんの求人から候補者に合った求人を提案できる」ことをフックにして、求職者を獲得できます。
求職者と求人案件数の総数が多いほど、より数多くのマッチングを生み出す可能性が高いため有利です。中小エージェントは、数だけで大手と勝負するのは難しいため注意しましょう。
一方で、求人案件を多く持つ大手エージェントでは「大量の求人を紹介されたが、自分の要望とマッチしないものも多かった」経験をする求職者もおり、顧客体験の視点で一方的なものと感じてしまうサービスに陥っているときもあります。別事業部とのシナジーの違い
人材紹介大手と言われる企業の多くが、同法人や同グループ内で求人メディアを運営しています。人材業界大手が運営する求人メディアは集客力も高いため、自社で保有する人材紹介案件を掲載して求職者を効率的に集客できます。
また人材派遣事業を営んでいる企業では、ニーズをヒアリングした上で、派遣事業経由で獲得した顧客を人材紹介事業部に紹介するのも可能です。関連事業部と連携しながら効果的に企業開拓や求職者集客ができる点も、大手エージェントと中小エージェントの違いです。事業運営のノウハウ、成功事例の量の違い
大手エージェントでは扱う案件と求職者の数が多いため、マッチング機会も多く、多くのノウハウや事例が短時間で蓄積します。さらに蓄積したノウハウを社員同士で共有し合うことで、チームメンバーのスキルが平準化・底上げされ、さらなる成果へつながる好循環が起きやすくなります。
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ポイント2中小の人材紹介会社が差別化するための戦略・経営方針
上記の違いがある中で中小の人材紹介会社が成果を出すためには、何に注力すれば良いのでしょうか。エージェントが他社と差別化するために抑えるべきポイントを解説します。
求職者への提供価値を高めることで差別化
中小エージェントは、大手と比較すると求職者の登録人数が少ないため、一人ひとりの求職者に密着して価値を提供できます。
また「クチコミ」の効果が狙えることも、中小エージェントが求職者対応の質にこだわるメリットです。
大手人材紹介会社では多くのキャリアアドバイザーがいるため「この人のキャリア面談が満足度が高くてオススメ」などのクチコミが生まれづらいです。一方で、中小エージェントは少人数対応のため「〇〇さんのサポートが良かった」などといった声が生まれやすくなります。
満足度の高いサービスにこだわるとともに、CA(キャリアアドバイザー:求職者対応担当)としての認知度を高めるためのSNSでの積極的な発信、クチコミを広げてもらうための紹介キャンペーンの実施などの施策を行うことで、中小規模のエージェントでも効率的な集客ができます。
次に、求職者への提供価値を高めるためにできることを具体的にご紹介します。対応のスピード感
求職者への提供価値を高める具体的なアクションの一つに、「対応スピードを高める」があります。
一般的に、対応スピードが遅くなればなるほど求職者の離脱率は高まると言われています。
人材紹介大手企業の中には、一人のCAが大量の顧客を抱える体制をとるところもあり、一人ひとりへの対応が遅くなることもあるようです。だからこそ対応スピードを高めることで、求職者との信頼関係を他社よりも深く構築できるでしょう。対応の柔軟性
大手エージェントの中には、マッチング総数の最大化の観点から「過去の統計から内定率が低いと予想されるため、転職経験が3回以上の人は対応しない」など、機械的なルールを定めるところもあります。ルールが多いために、大手エージェントでは顧客対応に制約が出ることも少なくありません。
一方で、ルールの制約がない中小エージェントでは、大手ではフォローしきれない求職者の細かいニーズにも柔軟に応えられます。
例えば「1人の求職者に対して半年以上の長い時間をかけて転職をサポートする」などの対応は、中小エージェントならではの柔軟性があってこそ可能です。対応を重ねれば求職者との信頼関係が深まり、クチコミにも繋がりやすくなります。
また求人企業に対しても「一部の企業に対して紹介手数料の分割払いを認める」「手数料の料率を下げる」など、大手には難しい対応を引き受けることで他社と差別化できます。キャリア面談や求人紹介の丁寧さ
求職者への価値提供で重要なのがキャリア面談の満足度です。
「求職者の過去の経験や希望をきちんとヒアリングする」「希望や適性にあったキャリアを的確に提案する」など、求職者に寄り添ったキャリア面談を行い求職者から信頼を得られるようにしましょう。転職に不安を感じている求職者の声を聞かずに、紹介したい求人を一方的に提案するのはご法度です。
求職者の納得感を高めるために、場合に応じて複数回キャリア面談を重ねることも重要です。選考を突破するためのサポート
人材紹介会社が求職者へ提供できる価値の一つに、「選考対策の手厚いサポート」があります。
「面接官でよく聞く質問」「求めている人物像」「面接突破のために必要な準備」など、選考を受ける企業の情報を積極的に提供しましょう。さらに、応募書類の添削や面接の練習までをサポートする企業は少ないため、取り組むことで他の人材紹介会社と差別化できます。
選考対策のサポートは、求職者にとって長期的なメリットが大きいだけではなく、求職者の内定率を高めることにも繋がります。「求職者からの信頼感」「内定実績」を得られる一石二鳥の取り組みなので、積極的に行うのがおすすめです。企業との契約交渉やコミュニケーションのサポート
面接前後や内定が出た後、求職者の心の中では「内定をもらったけれど働くのが不安」「提示された条件に不満がある」など、企業には直接言いにくい気持ちが出て来ることがあります。しかし、求職者が企業に直接思いを伝えてやり取りするのはハードルが高いです。
そこで企業と求職者をつなぐ橋渡し役として、エージェントが交渉やコミュニケーションを重ねることで、求職者の満足度を高められます。
具体的な交渉内容に、年収などの条件交渉・入社日の調整・内定辞退の対応などがあります。求職者・企業ともに交渉やコミュニケーションの余地があるか確認するとともに、双方にとって納得のいくマッチングになるよう対応しましょう。内定から入社後まで定期的なフォロー
人材紹介は内定承諾で終わりではありません。実際に入社してもらい、定着するまで求職者をフォローしましょう。
もしも入社後求職者が「求人票で記載されていた内容と実際が異なる」「入社したものの雰囲気が合わない」などトラブルやネガティブな感情を抱えているのに、放置してしまうと早期退職につながります。内定先企業への事実確認やメンタルケアも含めて、入社後求職者が活躍できるようにサポートしましょう。
またトラブルを未然に防ぐため、求職者と企業がなるべく直接接点を持てる機会を作るのがおすすめです。オフィス見学の場を設けたり、配属部署のメンバーとコミュニケーションの機会を設けたりなどを行い、入社後のギャップを最小限にとどめられるようにしましょう。
求職者対応のスピードを高めるためには、人材紹介業務を省力化するシステムを活用するのもおすすめです。次に、ポーターズ社が提供する人材紹介に特化したクラウド型管理システム「PORTERS」を用いた業務効率化の具体例をお伝えします。PORTERSの活用で求職者対応の質を高める
PORTERSとは、ポーターズ株式会社が提供する人材紹介に特化したクラウド型管理システムです。
求人開拓や求職者獲得、マッチングや企業への推薦など、人材紹介にまつわる業務の進捗管理を行うとともに、煩雑な人材紹介業務を効率化する機能を持っています。現在1,500社を超える人材紹介・派遣企業が利用しています。
PORTERSを活用すると求人と求職者のマッチング工数の削減とともに、対応スピードを向上し、対応遅延などのミスが削減されるため、求職者の満足度が向上します。
また、未経験や新人のコンサルタントには、ベテランのベストプラクティスをテンプレートにできるため、早期の育成と対応の質向上を実現します。求職者・案件情報の管理やコミュニケーションを省力化しスピードアップ
PORTERSでは、オートマッチング機能を利用すると、新着求人などから、ワンクリックでマッチする求職者を絞り込み、対象者にメールでお仕事打診を行うことができます。求職者からのマッチングも同様に可能です。応募承諾をいただいたら、職務経歴書を添付し、すぐに採用ご担当に推薦をすることが出来ます。これにより企業推薦までのマッチング精度を上げながら、早期推薦を実現します。
>>求職者・レジュメ管理機能について
PORTERSは求人媒体や、自社サイトからの新規候補者の取り込みも自動化出来ます。また、無料の面談設定アプリZLOSSを使えば、面談設定からPORTERSへの登録を自動化し、事前アンケートなども取得することが出来ます。
PORTERSでは、事前に用意されたメールテンプレートで求職者へ簡単にメール送信したり、帳票テンプレートでワンクリック帳票作成ができますので、送付忘れやミスを防ぎ、さらに新人でも業務をスムーズに行うことが出来ます。専門分野を定め、特化型エージェントになることで差別化
さまざまな求人を網羅する大手エージェントと差別化する方法の一つに「特定の分野に集中し、特化型エージェントとして運営する」があります。自分たちが取り扱う求人や求職者の属性を絞ることで、「〇〇領域なら一番」というニッチトップを狙う方法です。
ここでは、中小規模の事業者が特化型エージェントを運営するメリットを解説します。専門分野を決めるとノウハウの密度が高まる
人材紹介会社の大手と中小の違いの一つに、人材紹介のノウハウや成功事例の量を挙げました。しかし中小エージェントでも、取り扱う求人や求職者の対象を限定すれば、蓄積するノウハウの密度を高めることができます。
特定分野のノウハウを重点的に蓄積することで、ノウハウの総量は大手に劣っていても、その分野のノウハウのキャッチアップが早くなります。
特にエンジニアやデザイナー、経理や法務など専門的なスキルが求められる職種になればなるほど、より深い観点から企業や求職者とコミュニケーションが取れるようになるため、きめ細かな対応が可能です。
取り扱う領域を絞ることで、サービスの満足度、ひいては人材紹介の成果を高めることにつながるでしょう。専門分野を決めるとブランディングしやすくなる
特化型エージェントを運営するメリットの一つに、ブランディングしやすくなる点があります。
人材紹介業のブランディングとは、人材業界の市場に対して「〇〇領域の人材紹介会社なら××が一番だ」という印象を持ってもらうための一連の活動です。
一般的なエージェントと比較すると、特化型エージェントは対外的な情報発信の方向性を絞ることができます。「外国籍人材に特化したエージェント」「女性特化のエージェント」「建築業界特化のエージェント」など、自分たちの得意領域を明確化すれば、中小規模のエージェントでもブランドのターゲットとなる求人企業と求職者を効率的に集められます。
また一定のブランドのもとに求人と求職者が集まるため、マッチング効率も高まりやすくなります。 -
ポイント3まとめ
本記事では、人材紹介会社大手と中小規模の事業者との間にはリソースの違いがあること、また人材紹介業で他社と差別化には「求職者対応の質を高める」「取り扱う業界・職種・属性を限定する」などポイントがあることをお伝えしました。
求職者対応の質を高めるためには、システムを活用して煩雑な業務を自動化・省力化し、求職者対応の時間を捻出しましょう。
人材紹介専門の管理システムであるPORTERSのサービスサイトでは、PORTERSを導入した企業がどうやって業務を効率化し、業績を拡大してきたかをご紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
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▽執筆者
ナウビレッジ株式会社
代表取締役 今村邦之
▽経歴
25歳で人材紹介会社、株式会社UZUZを創業。デジタルマーケティングを軸に会社を成長させ、2020年に退職。
同年10月に、ナウビレッジ株式会社を設立。創業3年で200社超のマーケティング支援の実績。
東京医科歯科大学 非常勤講師、筑波大学 ヒューマンバイオロジー学位プログラム講師、iU 情報経営イノベーション専門職大学 バーチャル研究室 客員教授。
【事業概要】
デジタルマーケティングの業務代行、内製化支援
創業3年で80社以上の人材紹介会社様のマーケティング支援を実施。
求職者募集で結果を出してきた手法やノウハウを惜しみなく提供しております。
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