人材派遣では「派遣先企業の開拓」「派遣スタッフの採用」「企業とスタッフのマッチングと稼働のサポート」など、さまざまな業務の成果をうまくバランスさせながら事業を運営していく必要があります。人材派遣業で安定的に成果を上げるためには、適切なKPIを設定し改善していく仕組みを作ることが欠かせません。

本記事では人材派遣業で成果を出すためのKPI管理・改善のやり方をご紹介します。

  • ポイント1
    KPIとは

    KPIとは「Key Performance Indicator」の略語です。日本語では「重要業績評価指標」と言われています。個人やチームのKPIの達成状況をモニタリングすることで、組織の目標に対する進捗状況やパフォーマンスの動向を把握できます。

    KGIとは

    KGIとは「Key Goal Indicator」の略語です。日本語では「重要目標達成指標」と言われています。    ビジネスやプロジェクトの最終目標を定量的に評価するための指標がKGIとなります。

    人材派遣ビジネスでは、「売上」「営業利益」などの指標がKGIにあたります。

    KGIとKPIの違い

    KGIとKPIの違いは、KGIがビジネスやプロジェクトの目的そのものを定量的に示した「最終的な目標・結果」であることに対して、KPIはKGIを達成するための過程である「中間プロセスの目標・結果」を示す指標であることです。

    例えば、人材派遣の営業部門におけるKPIの一つに「(新規)取引企業数」があります。取引先の企業が増えれば、自然とKGIである売上も達成できるでしょう。

    KPIが設定されず、KGIのみで組織を運営しようとすると、個人やチームが日常の中で具体的にどんなアクションを取ればいいのかが見えにくくなってしまいがちです。多くの組織ではKGIを達成するための中間指標としてKPIが設定されます。
  • ポイント2
    人材派遣の営業担当のKPI項目と改善のポイント

    人材派遣ビジネスの営業担当のKGIは「売上」「営業利益」です。売上や営業利益を拡大するには、派遣先企業と派遣スタッフのマッチングの最大化が求められます。

    また、人材派遣の売上と営業利益は下記の式で表すことができます。
     

     人材派遣事業の売上=派遣スタッフの稼働人数×派遣スタッフ1人当たりの平均派遣料金×派遣スタッフ1人当たりの平均稼働期間
     
     

     人材派遣事業の利益=売上高-売上原価(派遣労働者の賃金+社会保険)-(人件費+広告費+その他販管費)
     

    ここでは人材派遣の営業担当のKPI3つに焦点をあてながら、人材派遣ビジネスで設定するべきKPI項目と、各項目で改善サイクルを回すポイントを紹介します。
    1. 派遣スタッフの稼働人数
    2. 派遣スタッフ1人当たりの平均派遣料金
    3. 派遣スタッフ1人当たりの平均稼働時間

    派遣スタッフの稼働人数

    派遣会社の売上を拡大するためのKPIの一つに派遣スタッフの稼働人数があります。もしも派遣スタッフが十分に確保できているにも関わらず、派遣スタッフに紹介する案件がない際には、派遣スタッフの稼働人数を増やす取り組みを行いましょう。

    派遣スタッフの稼働人数を増やす方法として、下記の方法があります。
    • ・新規の取引企業数を増やす
    • ・1企業あたりの稼働人数を増やす

    ただし、近年は少子高齢化の影響もあり、企業側の派遣スタッフのニーズは年々増えています。一方で、派遣スタッフの採用の方が課題になることが多いようです。

    新規の取引先企業数(新規派遣先企業数)

    派遣スタッフの稼働人数に紐づくKPIとして、「新規の取引先企業数」があります。

    新規の取引先企業数を増やすには、一般的な商品・サービスと同様に新規開拓に取り組むことが必要です。人材派遣の新規開拓の手法として「テレアポ」「飛び込み営業」「既存顧客からの紹介」などがあります。

    また商談では、派遣スタッフのニーズや採用課題を聞きながら、どんな職種のスタッフをどのくらいの人数で稼働させられるのか、情報を収集していきます。もしも現状稼働できるスタッフがいないときには、派遣スタッフを集められそうかどうかも含めて検討しましょう。

    1企業あたりの派遣スタッフ稼働人数

    派遣スタッフの稼働人数を増やす方法として、契約済みの派遣先企業で稼働人数を増やしてもらう方法があります。一般的には、まだ人材派遣を利用したことがない企業よりも、もうすでに多くの派遣スタッフを利用している企業の方が、新たな派遣スタッフのニーズが生まれやすくなります。人材派遣ビジネスでは、既存企業への営業が重要です。

    もうすでに取引のある顧客先には定期的に訪問し、信頼関係を築きながら事業戦略や組織体制の変更がないか、顧客の情報を把握しましょう。また変化に伴う新たな派遣スタッフのニーズがないかをヒアリングし、稼働するスタッフを増やせないか交渉をしましょう。

    派遣スタッフ1人当たりの平均派遣料金

    人材派遣会社の売上を拡大するためのKPIの一つに、派遣スタッフ1人当たりの平均派遣料金があります。平均派遣料金とは、「実際に派遣されたスタッフ1人に対して支払われた金額」です。

    人材派遣会社が派遣先企業と派遣契約を結ぶ際に、派遣先企業から人材派遣会社に支払う「派遣スタッフ1人当たりの派遣料金」を設定します。この派遣料金には、派遣会社から派遣スタッフに支払う賃金と社会保険料の他に、人材派遣会社の人件費や広告費、販管費などが含まれます。

    ちなみに、一般社団法人日本人材派遣協会によると、人材派遣事業の売上のうち70%が派遣労働者の賃金として支払われています。

    派遣スタッフの派遣料金をあげることで、売上全体を増やすことができます。派遣スタッフの教育を行うなどを行い付加価値を上げることで、派遣料金の交渉を行いやすくなるでしょう。

    また、売上だけではなく、営業利益を増やす観点からも派遣料金の交渉は重要です。派遣スタッフの賃金や社会保険料は売上原価として計上されますが、人材派遣会社としての付加価値を高めて派遣料金の交渉に成功すれば、売上原価が一定のときに営業利益を増やすことができます。

    派遣スタッフ1人当たりの平均稼働期間

    人材派遣会社の売上を拡大するためのKPIの一つに、派遣スタッフ1人当たりの平均稼働期間があります。同じ5名の派遣スタッフを派遣する際にも、4~5時間の短時間勤務で働いてもらうより、フルタイムで働いてもらった方が、最終的な売上は大きくなります。

    しかし、派遣スタッフ一人ひとりにも働き方の要望があるため、派遣先企業と派遣スタッフ双方の要望をヒアリングしながら、慎重に交渉を行いましょう。
     
  • ポイント3
    人材派遣のマーケティング担当のKPI項目と改善のポイント

    人材派遣ビジネスのマーケティング担当のKGIとして「派遣スタッフの採用人数」をおく企業が多いです。少子高齢化による労働人口減少の影響を受け、派遣スタッフの採用環境は年々厳しくなっています。

    ここでは人材派遣のマーケティング担当が設定するべきKPI項目を紹介します。

    派遣スタッフの採用単価

    人材派遣会社のマーケティング担当のKPIの一つに、派遣スタッフの採用単価があります。採用単価とは「採用した派遣スタッフ一人当たりにかかった採用費」で、以下の式で計算できます。
     

     派遣スタッフの採用単価=採用にかかった総費用÷派遣スタッフの採用人数
     


    人材派遣のマーケティング担当の多くは、有料の求人媒体を活用しながら派遣スタッフの採用を行っています。ただ単に採用人数を増やすだけではなく、限られた採用予算の中で効率よくスタッフを採用し、採用単価を下げることが求められます。

    採用単価の中間KPI

    採用に至るまでの中間KPIとして、「応募単価」「面接単価」を設定する派遣会社も多くあります。

    派遣スタッフの採用から稼働までは、下記のフローで進みます。
     

     派遣会社への応募
     ↓
     初回面接の予約
     ↓
     採用、派遣スタッフとして正式に登録
     ↓
     稼働開始
     


    応募単価は「派遣会社への応募者一人を集めるためにかかった費用」、面接単価は「初回面接を予約した候補者一人を集めるためにかかった費用」です。応募単価と面接単価、採用単価を比較・分析すると、採用フローの問題点を把握でき、マーケティング業務の改善に繋げられます。

    オウンドメディアの効果の最大化

    多くの派遣会社が、派遣スタッフの採用のためにオウンドメディアを運用しています。ここではオウンドメディア運用のKPIを紹介します。

    アクセス数

    オウンドメディアの効果を図る指標として「オウンドメディアへのアクセス数」があります。アクセス数を増やすことで、派遣スタッフになることを検討している求職者に対して自社の認知度を高められます。

    アクセス数を上げるには、SEO対策や広告運用などの施策が有効です。

    CVR

    オウンドメディアの効果を図る指標として「CVR(コンバージョン率)」があります。CVRとは、デジタルマーケティングの用語で「Conversion Rate」の略語です。Webサイトに訪れたユーザーのうち、どのくらいの割合のユーザーがCV(コンバージョン)に至ったかを表す数値です。

    CVとは「Webサイトの最終的な目標」で、派遣会社が運営するオウンドメディアのCVは「オウンドメディアに掲載されている求人への応募」になります。

    CVRを上げるには、ユーザーフレンドリーなWebデザインにリニューアルする施策が有効です。また他社のオウンドメディアとの差別化のために、サイトの目立つ場所に魅力的な派遣スタッフの求人ページのリンクを掲載する、自社の特徴として他社よりも待遇の良さ、フォローの手厚さをアピールするといった施策が考えられます。
  • ポイント4
    人材派遣コーディネーター担当のKPI項目と改善のポイント

    人材派遣のコーディネーターとは、派遣スタッフと派遣先企業の仲介を担う役割です。マーケティング担当が集めた応募者との面接や、営業担当が受注した業務に適した人材のピックアップ、またすでに稼働している派遣スタッフのフォローがコーディネーター担当の仕事です。

    ここでは人材派遣のコーディネーター担当が設定するべきKPI項目を紹介します。

    派遣スタッフの定着率

    人材派遣会社のコーディネーター担当のKPIの一つに、「派遣スタッフの定着率」があります。派遣ビジネスは派遣スタッフが派遣先企業で働くことで初めて売上が発生するので、派遣スタッフに継続して働き続けてもらうことが安定的な売上の維持につながります。

    派遣スタッフの定着率を高めるためには、派遣スタッフが働きやすい環境を整えることが重要です。

    定期的な派遣スタッフの面談を行って悩みや要望を拾い上げる、教育体制を整えて派遣スタッフのキャリアアップを支援するなど、やりがいを持ちながら働き続けてもらうためのフォローが肝要です。

    システム導入でスタッフと派遣先企業のマッチングスピードを早める

    コーディネーターは営業担当が受注した業務に適した派遣スタッフとのマッチング業務をしています。派遣スタッフと派遣先企業のマッチングスピードを早めることで、派遣スタッフの稼働期間を最大化し売上を向上させられます。

    コーディネーター業務のスピードアップには、ポーターズ社が提供する人材派遣に特化したクラウド型管理システム「PORTERS」などを活用して、システムよる効率化を行うのがおすすめです。

    PORTERSとは

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    PORTERSとは、ポーターズ株式会社が提供している人材派遣に特化したクラウド型管理システムです。

    案件獲得、候補者人選、稼働管理、契約延長管理、登録スタッフの掘り起こしなど、情報を資産に変え収益に変える派遣DXを実現します。

    PORTERSを活用することで、派遣会社の業務を改善し、最高の稼働数の創出が可能になります。
  • ポイント5
    まとめ

    本記事では、人材派遣業が追うべきKPIと、それぞれのKPIを改善するポイントを紹介しました。

    派遣事業は年々制度が厳しくなっているため、既存の派遣事業の業績アップを目指しつつも、人材派遣事業とシナジーがありかつ成長市場の人材紹介事業を合わせて立ち上げ、事業ポートフォリオを安定させると良いでしょう。
     
     
     参考記事
     人材紹介業の資本金には条件がある?開業にかかる資金を解説
     

    人材派遣専門のマッチングシステムであるPORTERSのサービスサイトでは、PORTERSを導入した企業がどのように業務を効率化し、業績を拡大してきたかもご紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

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    ▽執筆者

    ナウビレッジ株式会社
    代表取締役 今村邦之

    ▽経歴

    25歳で人材紹介会社、株式会社UZUZを創業。デジタルマーケティングを軸に会社を成長させ、2020年に退職。
    同年10月に、ナウビレッジ株式会社を設立。創業3年で200社超のマーケティング支援の実績。
    東京医科歯科大学 非常勤講師、筑波大学 ヒューマンバイオロジー学位プログラム講師、iU 情報経営イノベーション専門職大学 バーチャル研究室 客員教授。
     
    【事業概要】
    デジタルマーケティングの業務代行、内製化支援

    創業3年で80社以上の人材紹介会社様のマーケティング支援を実施。
    求職者募集で結果を出してきた手法やノウハウを惜しみなく提供しております。

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