人材紹介業における求人開拓とは、求職者へ紹介する求人案件獲得のための営業活動のことです。本記事では人材紹介の求人開拓方法と、各方法のメリットとデメリット、また人材紹介の求人開拓で成果を出すためのポイントを解説します。求人開拓に課題を感じる人材紹介業の経営者や管理職の方の参考になれば幸いです。
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ポイント1人材紹介の求人開拓方法
求人開拓の方法は、大きく「アウトバウンド営業」「インバウンド営業」「外部リソースの活用」の3つに分けられます。
それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、複数の方法を組み合わせながら求人開拓を行うことが、人材紹介事業で成果を出すための近道です。ここでは3つの求人開拓方法のポイントを、具体例を交えながらご紹介します。アウトバウンド営業
アウトバウンド営業とは、人材紹介会社側から、求人企業にアプローチをする営業方法のことです。アウトバウンド営業の具体的な方法として、電話営業(テレアポ)や飛び込み営業などが挙げられます。
アウトバウンド営業のメリットは、以下の2点です。- ・獲得したい企業や案件を狙ってアプローチできる
- ・営業開始から獲得までの期間が短い
やり取りしている求職者の属性や自社の事業の状況に合わせて「自社で抱えている候補者に紹介できる求人を持つ企業」にピンポイントでアプローチできることから、大手エージェントから立ち上げ期の人材紹介会社まで、多くの企業がアウトバウンド営業を利用して求人開拓を行っています。
一方でアウトバウンド営業のデメリットは、以下の2点です。- ・RA(法人営業担当)一人ひとりにかかる負担が大きい
- ・営業の非効率が発生しやすい
面識のない企業へ営業するアウトバウンド営業の特性上、企業から断られることが多いため、RA一人ひとりにかかる時間的・精神的負担が大きくなってしまいがちです。
また、アウトバウンド営業での商談獲得率は、どんなに慣れている人でも2%と言われています。必要な数の案件を獲得するために、1日に数百件の企業にアプローチすることも珍しくありません。他の営業手法と比較して営業が非効率的になりやすいため、生産性を高めるための工夫が必要になります。
次に、アウトバウンド営業の具体例をご紹介します。求人媒体に掲載している企業への電話営業(テレアポ)
求人媒体掲載企業への電話営業(テレアポ)は、人材紹介のアウトバウンド営業でよく使われる手法の一つです。中途採用の求人媒体に掲載されている企業をリストアップし、営業を行う方法になります。掲載求人の多くに求人の詳細情報が掲載されているため、自社の求職者ニーズに合う求人をピンポイントで狙ってアプローチできます。
この方法のメリットは、求人意欲がある企業に効率よく営業をかけられることです。
しかし、求人媒体に掲載している企業の中には「人材紹介会社よりも採用コストを抑えたい」という理由で求人媒体を利用するところもあります。採用したい意思はあっても、採用コストの観点でお断りされることも多く、案件獲得率はそこまで高くありません。人材紹介会社を利用している企業への電話営業(テレアポ)
求人媒体と同様に、人材紹介会社のサイトに掲載されている求人情報をリストアップすることで、電話営業(テレアポ)に利用できます。
また、これらの企業はすでに人材紹介会社を利用している実績があるため、求人を獲得できる可能性は比較的高いです。一方で、求人企業の中には「やり取りする人材紹介会社が増えることで事務作業やコミュニケーションが増えることを避けたい」ところもあるでしょう。
もうすでに人材紹介会社を利用している企業の求人を獲得するためには「自社の人材紹介サービスを利用することでどんなメリットがあるか」をきちんと伝えることが大切です。営業トークの中で個人情報に該当しない範囲で自社の求職者の情報を紹介するなど、「話を聞いてみたい」と思ってもらうための工夫をしましょう。エリア担当を分けて飛び込み営業
飛び込み営業とは、アポイントメントを取らずに企業を訪問し、営業をすることです。市区町村単位などで営業担当エリアを分け、エリアごとにRA担当を割り振り、企業へ直接足を運んでアプローチします。
飛び込み営業では一社一社訪問するため、多くのRAの人数を確保する必要があります。一方で、他の営業手法では拾い上げることが難しい、細かい採用ニーズを掘り起こすことができるメリットもあります。
ある大手人材紹介会社では、ビルに入居している企業全てに訪問営業する手法を「ビル倒し」と呼び、新卒研修の一環でビル倒しを行う企業もあるようです。インバウンド営業
インバウンド営業とは、求人企業が興味を持ってくれるような情報を発信することでブランドや信頼関係を築き、企業から問い合わせをしてもらう受け身型の営業方法です。
インバウンド営業の具体例として、Web広告やオウンドメディア、SNSなどがあります。インバウンド営業のメリットは以下の2点です。- ・一度成果が出る仕組みを作ることができれば、中長期なコストを低く抑えられる
- ・求人獲得率が高い
インバウンド営業ではWeb広告やSNSの情報を閲覧し、自社に興味を持った状態で問い合わせをしてくれるため、アウトバウンド営業と比較して求人獲得率は高くなる傾向があります。
またインバウンド営業のデメリットは、以下の2点です。- ・アウトバウンド営業と比較して、長期的な投資が必要
- ・マーケティングのナレッジを持った人材がいないと成果が出るまで時間がかかる
インバウンド営業を成功させるためには、マーケティング費用を投下し、中長期的に情報発信し続ける必要があります。
次に、インバウンド営業の具体例を解説します。Web広告
インバウンド営業の一つに、Web広告の運用があります。
Web広告にはいくつか種類があり、他社や個人が運営するサイトで自社サービスを宣伝してもらうアフィリエイト広告、ユーザーの検索結果に連動して表示されるリスティング広告、SNS内での検索・閲覧行動をもとにユーザーの興味関心に合わせて表示されるSNS広告などがあります。
Web広告のメリットとして、以下の2点があります。- ・Web行動履歴を元にした興味関心をもとに広告を出せるため、問い合わせ獲得の効率がよい
- ・成果課金型、クリック課金型を採用しているところが多く、必要以上のコストがかかりにくい
しかし近年、Web広告に出稿する人材紹介会社の数は年々増えており、Web広告内での競争は激化しています。またWeb広告で成果を上げるためには、広告運用・改善や広告クリエイティブの作成など、マーケティングやグラフィックデザインのスキルが必要になります。
もしも社内にスキルを持つ人材がいない場合は、外部のパートナーを活用するのもおすすめです。オウンドメディア
オウンドメディアとは、自社で運用しているサイトやブログなどのメディアのことです。インバウンド営業の一つに、オウンドメディアを立ち上げ、人事・採用担当者が知りたい情報を発信しながら、企業からのお問い合わせに結びつける方法があります。
オウンドメディアでの記事作成のポイントは、企業の人事担当者が検索しそうなキーワードでの結果上位表示を狙って記事を書く、いわゆるSEOライティングを意識することです。
オウンドメディア最大の特徴は、広告出稿を止めたら表示されなくなるWeb広告とは異なり、記事を削除しない限り情報がWeb上に残り続けることです。
オウンドメディア内の記事が検索結果上位表示し続けていれば、多額の資金を投下せずともリスティング広告と同じような効果を得られることが、オウンドメディアのメリットの一つです。SNS
オウンドメディアと同様に、TwitterやFacebook、LinkedInなどのSNSで情報発信することで求人開拓ができます。
近年、ビジネスのためにSNSで情報発信をする経営者や人事・採用担当者が増えてきています。彼らと相互に繋がりながら、仕事を通して気づいた求職者のトレンドや転職市場の動向など有益な情報を発信をすることで、採用のニーズが生まれたときに「この人に相談してみよう」と思ってもらえる確率が高まります。
また、SNSはアウトバウンド営業にも活用できます。多くのSNSではダイレクトメッセージの機能があり、SNSで繋がっている人に個別でメッセージを送れます。ダイレクトメッセージの機能を使って、自社に興味を持ってくれそうな人に連絡することで、商談や求人獲得に結びつけることができるでしょう。紹介
求人獲得の方法として、すでに取引のある求人企業から新たに募集する求人を追加してもらったり、採用を考えている他の企業を紹介してもらったりする方法もあります。
案件の追加や引き合いの紹介をしてもらうには、普段から綿密なコミュニケーションを心がけ、企業が求める人材を継続して推薦し続けるなど、企業の期待に応え続けて良好な関係を作れていることが前提となります。
いざというときに紹介してもらえる関係を作るためにも、目の前の顧客に真摯に向き合い、人材紹介会社としての介在価値を感じてもらえるようにしましょう。外部リソースの活用
人材紹介会社の中には、テレマーケティング会社や求人データベース、他の人材紹介会社との提携など、求人開拓を代行してくれる仕組みをうまく活用することで、求人開拓は全て外部に委託しているところもあります。
外部リソースを活用して求人開拓するメリットは、求人開拓業務を削減し、求職者への価値提供に集中できることです。
一方で外部に求人開拓を委託すると、委託先の会社への支払いが発生するため、外部リソースを利用しても利益が残せるかどうか、きちんと判断する必要があるでしょう。
また外部がRA業務そのものを代行してくれる場合、面接時のフィードバックをもらう、内定後の条件交渉を行うなどのやりとりを、自社で直接行うことができないデメリットもあります。テレマーケティング(テレアポ)会社に求人開拓を依頼する
外部リソースを使った求人開拓の方法として、テレマーケティング(テレアポ)会社に依頼する方法があります。
本来自社のRAでやる必要があった業務を削減できるメリットがあります。一方で、すべての工数を削減できるわけではなく、アタックリストやトークスクリプトは自社で準備しなければいけないときもあります。
また、従量課金型の場合では「架電件数は達成しているが、なかなかアポイントに繋がらない」、成果報酬型の場合では「無理やりアポイント数を増やそうとした結果、求人獲得につながらないアポイントが増えてしまった」など、思うような成果が出ない場合もあります。
テレマーケティング(テレアポ)会社に成果を出してもらうためには、社内のマネジメントと同様、委託先の企業と目線を合わせながら一緒に改善を行うことが重要です。具体的には、以下のようなアクションが必要です。- ・社内の実績や目標数値をきちんと共有する
- ・獲得したアポイントが求人獲得につながったかフィードバックを行う
- ・改善提案を行う
求人データベースサービス
近年、人材紹介業の求人開拓業務を代行してくれるサービスとして、求人データベースサービスに注目が集まっています。
人材紹介会社は求人データベースの利用料金を支払うことで、データベース内の求人案件に対して自社の求職者を自由に紹介できます。またサービスによっては、採用決定時の紹介手数料の一部を支払うことでマネタイズするサービスもあります。
求人データベースサービスの一つに、HRtech事業などを展開するcircus株式会社提供の『circus AGENT』があります。サービス内には大手・有名企業の求人やポテンシャル採用求人など開拓が難しい求人を含む3,000件以上の求人に対して人材の紹介を行うことが可能となります。他社エージェントとの提携
「魅力的な求人はあるけれど、紹介できる求職者がいない」という悩みを抱える企業と何らかの関係がある場合、業務提携契約を行うことで、他社の求人情報に対して自社の求職者を自由に推薦できるようになります。
ここで問題になるのが、手数料の配分です。人材紹介会社間の提携における手数料の配分について、特に法的な制限はありません。ただし、業務委託契約に基づいて相互の合意が必要です。お互いにとってWin-Winな契約になるように、手数料の配分の取り決めをしましょう。 -
ポイント2人材紹介業の求人開拓のポイント
求人開拓の方法を決める際には、組織・コストなど様々な視点から検討を行い、自社にとって最も有益な方法を選択することが重要です。ここでは人材紹介の求人開拓で抑えるべきポイントをご紹介します。
求人開拓の仕組みに再現性があるか
求人開拓の方法を決める際には、営業手法を再現性のある仕組みに落とし込めるかどうかが重要です。
特にアウトバウンド営業の場合は、RA個人によって成果にばらつきが出やすくなります。スキル・経験に左右されず、ベテラン・新人などを含めた社内のメンバー全員が安定した成果を上げられるようにするために、個人が持っているナレッジをチームに共有しましょう。
具体的には、トークスクリプトを用意したり、勉強会を定期的に開催したりすることで、チーム全体の力量の底上げにつながります。情報共有によるスキルの平準化を行うことで、特定の個人の成果に頼らない、再現性のある求人開拓ができるでしょう。
一求人あたりの獲得コストは適正か
CPA(Cost Per Aquisiton)は、日本語で「顧客獲得単価」と訳します。人材紹介におけるCPAとは、一つの求人を獲得するのにかかった費用を指します。求人開拓の方法を決める際には、このCPAが適正な価格で収まるかどうかをきちんと計算しましょう。
では、CPAとはどのように計算できるのでしょうか。例として、1ヶ月で50件の求人開拓を目標としたときの電話営業(テレアポ)におけるCPAの計算方法をご紹介します。
CPAの計算方法
商談後、50%の確率で求人を獲得できるとすると、1ヶ月に必要な商談数は100件になります。商談の準備と実際の商談、その後のやりとりを含めて1社あたり3時間が必要とすると、100社分で300時間が必要なことも分かります。
また、電話営業(テレアポ)での商談獲得率を2.5%とすると、100社の商談を獲得するためには、4000件必要です。
1時間で電話できる件数を平均20件とすると、1日8時間で可能な架電件数は160件です。4000件に電話するためには25日営業日、時間にすると200時間必要です。
以上を踏まえると50の新規求人を獲得するのに、最初の架電が200時間、次の訪問営業が300時間で、合計すると月に500時間程度が必要になります。
一人の従業員が月に稼働するのは200時間程度のため、目標の求人数を達成するには、2~3名程度の従業員が必要です。
従業員が3名、一人当たりの月収を40万円(社会保険料を含む)と仮定すると、求人開拓にかかる費用は120万円です。
120万円で50求人を獲得するので、この企業における電話営業(テレアポ)でのCPAは2万4000円となります。
求人開拓の営業方法を選ぶ際には、どの手法が最もCPAが小さくなりそうか、すなわち投資対効果が高いか計算するのがおすすめです。
求職者にとって魅力的な求人が獲得できるか
獲得した求人が魅力的なものであれば、求人をWebサイトに掲載することで求職者を効率的に集められます。また求職者からの応募承諾も得やすくなります。魅力的な求人を獲得することで、企業と求職者にとってWin-Winなマッチングが生まれやすくなります。
求人企業とのコミュニケーションにおいて、求人獲得はあくまでもスタートに過ぎません。たとえ求人を獲得できても、その後候補者の推薦がなければ、求人を任せてくれた企業との信頼関係が失われてしまいます。求人企業との関係を円滑に保つためにも、求職者の応募が集まりやすい求人を集めることは重要です。
CA担当と綿密にコミュニケーションをとり、自社とやり取りしている求職者のスキルや経験を理解しながら、マッチする求人を持つ企業に優先的にアプローチしましょう。
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ポイント3PORTERSを活用して獲得求人を最大限に活かす
人材紹介業は求人を獲得して終わりではありません。求職者に求人を紹介し、最適なマッチングを実現することではじめて介在価値が生まれます。
ポーターズ社が提供する人材紹介に特化したクラウド型管理システム「PORTERS」を活用することで、求人と求職者のマッチング工数を削減するとともに、マッチングのスピードアップが期待できます。
ここではPORTERSを活用することで、求人獲得後の業務がどのように効率化されるかをご紹介します。
PORTERSとは
PORTERSとは、ポーターズ株式会社が提供している人材紹介に特化したクラウド型管理システムです。
求人開拓や求職者獲得、マッチングや企業への推薦など、人材紹介にまつわる業務の進捗管理を行うとともに、煩雑な人材紹介業務を効率化する機能があります。現在1,500社を超える人材紹介・派遣企業が利用しています。
PORTERSは複数の求人媒体と連携しており、獲得した求人(JOB)情報を取り込むことで複数の求人媒体へスピーディーに公開できるようになります。また、求人(JOB)情報をもとに求人票をワンクリックで出力できるなど、 獲得した求人の管理を効率化・自動化できます。
PORTERSでは、オートマッチング機能を利用すると、新着求人などから、ワンクリックでマッチする求職者を絞り込み、対象者にメールでお仕事打診を行うことができます。求職者からのマッチングも同様に可能です。応募承諾をいただいたら、職務経歴書を添付し、すぐに採用ご担当に推薦をすることが出来ます。これにより企業推薦までのマッチング精度を上げながら、早期推薦を実現します。
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ポイント4まとめ
本記事では、人材紹介業の求人開拓の手法として大きく「アウトバウンド営業」「インバウンド営業」「外部リソースの活用」の3つがあることをご紹介しました。人材紹介業において安定的に売上を伸ばすためには、PORTERSなどのシステムを導入し業務を自動化・効率化しながら、求人獲得に集中できる体制を作ることが重要です。
人材紹介専門の管理システムであるPORTERSのサービスサイトでは、PORTERSを導入した企業がどのように業務を効率化し、業績を拡大してきたかもご紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
▽執筆者
ナウビレッジ株式会社
代表取締役 今村邦之▽経歴
25歳で人材紹介会社、株式会社UZUZを創業。デジタルマーケティングを軸に会社を成長させ、2020年に退職。
同年10月に、ナウビレッジ株式会社を設立。創業3年で200社超のマーケティング支援の実績。
東京医科歯科大学 非常勤講師、筑波大学 ヒューマンバイオロジー学位プログラム講師、iU 情報経営イノベーション専門職大学 バーチャル研究室 客員教授。
【事業概要】
デジタルマーケティングの業務代行、内製化支援
創業3年で80社以上の人材紹介会社様のマーケティング支援を実施。
求職者募集で結果を出してきた手法やノウハウを惜しみなく提供しております。
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