人材紹介事業の成長率は常に右肩上がりです。このため、新たに人材紹介事業を立ち上げる場合も数多くあります。
今回の記事では、人材紹介事業における成長率や今後の動向を説明し、事業者が持っておくべきノウハウや社内体制について説明していきます。
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ポイント1職業紹介業界の成長率
リーマンショックからの回復以降二桁成長を続けています。
その要因になっているものは複数あります。
- ・2001年以降の規制緩和による事業所数の増加
- ・新卒紹介事業の発展
- ・専門分野への特化
- ・働き方の多様化
などでしょうか。
これらによって人材紹介業界は急成長してきたと言えます。
さらに、2020年より流行しているコロナウイルスにより、雇用情勢はますます悪化しています。
総務省が発表した有効求人倍率は、2020年1月から5ヶ月間連続で低下しており、2019年の12月と比べると約0.4ポイント落ち込んでいます。
有効求人は減っているのにも関わらず、有効求職者は解雇により増えていくばかりです。
このような人たちにとって、職業紹介は1つの参考になるものであり、職業紹介を求める人の声がどんどん大きくなっていっているのです。
また、2020年のトレンドに少し触れたいと思います。
コロナウイルスの影響もあり、有効求人倍率は全体で見ると低下していますが、求人が増加している職種もあります。
例えば、A I(人口技術)技能者や新規テクノロジーの経験者などでしょうか。
コロナウイルスの影響により、リモートで仕事をする上で需要のある職業が上位にきているのかもしれません。
また、政府が2025年までにキャッシュレスでの決済率を40%とする目標を掲げているため、社会のモバイル化に携わる仕事の需要も増加しています。
上に挙げた以外の職業としても、通信技術人材やエンジニア、マルチタスクをこなせるオフィスプロフェッショナルといったインターネットを駆使できる人材も多くの企業で求められています。
このような社会状況を踏まえた上で、求職者に仕事を紹介する職業紹介企業は、今後非常に求められるものになっていくこと間違いないでしょう。
職業紹介市場は2009年以降急成長しており、コロナ禍の今でも市場は成長しています。
I T関連の技術者や日系企業の海外進出に伴い、グローバル人材の求人が活発化し、紹介手数料の単価が上昇していることが市場拡大の大きな要因なのです。
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ポイント2新しいサービスが業界の成長を牽引している
IT技術やインターネットに精通した人材が求められるようになったことで、職業紹介の業界の数字が伸びていることは先に述べた通りです。
つまり、新しいサービスや求められる職種の数字がこの業界の成長を牽引しているということです。
少し古い数字ですがホワイトカラーに注目すると面白い傾向が見えてきます。
ホワイトカラーとは、事務系の職種に就く労働者全体を指します。
バックオフィスの職種だと認識するとわかりやすいかもしれません。
企画職、人事職、財務職、事務職などでしょうか。
白い襟をつけて仕事をすることが多く、ホワイトカラーと名づけられました。
ホワイトカラーは、2001年から2006年にかけての数字の変化を見ると非常にわかりやすいです。
●ホワイトカラーの決定数(人数)
まずは、新しく採用された人数を見ていきましょう。
5年間で3.3倍にもなっています。
2001年 2006年 比率 A:専門的・技術的職業 35,776人 84,727人 2.4倍 B:管理的職業 6,088人 17,428人 2.9倍 C:事務的職業 10,234人 62,286人 6.1倍 D:販売の職業 7,333人 29,098人 4.0倍 合計 59,431人 193,539人 3.3倍 ●ホワイトカラーの決定数(シェア)
また、そもそもの事務・販売のシェアがかなり拡大しているのです。
2001年 2006年 比較 A:専門的・技術的職業 60% 43% -16.4 B:管理的職業 10% 9% -1.2 C:事務的職業 17% 32% +15.0 D:販売の職業 12% 15% +2.7 事務・販売の職業がシェアを伸ばしているのがわかります。
これを見ると未経験者や若年層といった新たな顧客領域に対しても、人材紹介サービスを浸透させられているのが読み取れます。以上が少し古い事例ではあるものの、求められる職種が固定化されることにより、人材紹介事業が発展していったデータになります。
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ポイント3転職成功率はどの程度なのか?
では、転職成功率がどの程度なのか、といったところも重要なポイントです
●ホワイトカラーの転職成功率(就職決定数/求職者数)
ホワイトカラーの場合の転職成功率を計算してみました。
就職決定数÷求職者数で計算したところ、14.7%でした。
2006年度の人材紹介におけるホワイトカラー求職者、すなわち転職を希望した人は、1,316,308人であったのに対し、同年度の決定者数は、193,539人です。
正確に事業報告がされているかどうかわからないため、一概には言えませんが、100名の求職者から15名程度を転職成功させていることになります。
●ホワイトカラーの求人決定率(就職決定数/求人数)
また、上記の数字は職業紹介事業が企業に人材を紹介できた数に過ぎません。
求人決定率で言うと、13.5%になります。 100件の求人に対して13名程度採用を成功させていることになります。
これらは、自社の決定率と比べていかがでしょうか。
当社では、多くの人材紹介会社さまをサポートしていますが、決定率の数字を伺うと、その数値が決して楽観できるものではないことが多いです。
話を少し聞いただけで、改善できる点が非常に多くあるように感じています。
上記のマーケットの平均数値を上回るパフォーマンスを実現されている人材紹介会社はほぼありません。
中小人材紹介会社の実質的な決定率は2%~5%だと言われています。
実際、この記事をご覧いただいている人材紹介会社さまも、100名の求職者に対して、決定者2名~5名といったところではないでしょうか。
ホワイトカラーの求人決定率は、13%以上にも上ります。
大きな開きがある会社も多いでしょう。
人材紹介サービスではプロセスのマネジメントと目標設計がとても重要だと当社は考えます。
上記のパフォーマンスを牽引している一部の業務生産性の高い人材紹介会社は、いったいどのようなプロセスマネジメントを実施しているのでしょうか。
次回の記事ではパフォーマンスの高い大手をベンチマークして、プロセスごとの目標数値について考えてみます。
当社のサービスをご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。
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ポイント4職業紹介事業の今後は?
最後に、職業紹介事業の今後の展望についてだけ、触れておきましょう。
2020年はコロナウイルスやオリンピックの延期などにより、今後の見通しが不透明になる中で、投資を縮小する企業も多くなっています。
これに伴い、雇用の縮小をする企業も増えており、仕事を失ってしまう人、また仕事を失いそうな人の転職が増える可能性が高くなっています。
また、副業の解禁やフリーランスの増加により、個人の力が強調される時代になるに連れて、組織で仕事をすることから個人で仕事をすることへの転換も起こりつつあります。
このような背景から、人材紹介事業は先行き明るくも思えますが、その分、変化も多いため、見通しが立ちにくいと言えるでしょう。
これは、職業紹介事業の経営プランや従業員のスキルに影響を及ぼします。
これまで、紹介事業の価値提供先は採用に困っている企業に対してでしたが、それが転職に困っている求職者に変化すると、求職者へのサポートにも課題や改善策が出てくることになります。
職業安定法の改正により、各企業がどれだけ実績を上げているのかがより一層可視化されていくこともあり、職業紹介会社は求職者に選択されていく時代に突入しています。
市場は大きくなる反面、このような事態を受けて事業の変革も大きく求められています。
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ポイント5人材紹介業でノウハウを高めたいなら
では、職業紹介事業で、生き残っていくためにはどうしたらいいのでしょうか。
当社が重要視する3点をお伝えすると、優秀なコンサルタントを教育すること、営業力を向上させること、KPIを管理すること、でしょうか。
順に説明しておきます。
●優秀なコンサルタント教育
職業紹介事業におけるビジネスの肝は人です。
そのため、人材紹介業者は人材教育には最も力を入れるべき>でしょう。
正式に入社すると社内研修が2週間から1ヶ月実施され、ここで多くの基礎知識を学びます。
ロジカルシンキングやリサーチの仕方、スライドライティングのスキルに関するものなど業務に必要な知識を学びます。
また、入社研修以外にも、定期的な研修が設けます。
社内での地位が上がったり、変更されたりすると、その仕事に関する研修が実施されたり、業界内で起こっている最新の出来事に対して議論をする機会など、学びの場を多く準備します。
●KPIの管理
KPIとは重要業績評価指数のことで、目標達成のための各過程おいて達成度割合の計測と評価をする指標です。
そして各KPIを数値化、視覚化し、達成率を管理することをKPI管理といいます。
このKPI管理をすることによって、自分がどれだけの顧客を掴み、転職に導けているかを数値化することができます。
数字で自己分析を行い、自分の悪い点を改善していくことは、職業紹介業界にとって必要不可欠なのです。
顧客のスカウト件数や面接件数、内定件数といった内容を表に入力し、そこから次どのような目標を立てれば良いのか、何を改善していけば良いのかを考えることが大切です。
これを怠らず行うことにより、確実に個人としての成長、営業力の向上を図れます。
スムーズな経営を行うために、このKPI管理の導入をおすすめします。
●営業力向上
営業力を向上させるには、基本的には意識が非常に重要になってきます。
では、どのようなことを意識していけば良いのかを具体的に見ていきたいと思います。
まず1つ目は、業界の情報収集を積極的に行うことです。
自分の知識が顧客に対して与える情報をより良いものにします。
何か提案する際にも、業界の動向や顧客の興味や関心をそそる話題を出せると、営業マンとしての価値が高くなります。
2つ目は、過去の顧客とのリレーション構築です。
一度きりで関係を絶つのではなく、その方の最新の事情や、業界の動向を常にチェックし、アップデートすることで顧客維持につながります。
3つ目は、徹底的に顧客のことを知り、マッチングの精度を高めることです。
時間は有限です。
どれだけ効率的にかつ徹底的に行えるかが重要です。
その方が何をしたいのか、どのようなバックグラウンドがあるのかなど、できるだけ具体的な情報収集することが、顧客に対して最良の提案をできるかの鍵になります。
以上が、自社のノウハウを蓄積させるための指標、また、職業紹介事業の価値を高めるための方法になります。
では、これらの課題を簡単に解決する方法には、何があるのでしょうか。
当社がおすすめするのが、当社のマッチングシステムです。
業務フローを見える化して管理することでコンサルタントの教育が楽になります。
また、マッチングや企業への推薦、求人開拓や求職者獲得など、これら全ての業務の進捗管理が簡単にできるため、KPI管理にかかる工数を大きく削減できます。
これらにより、かなり経営がスムーズになり、教育の面でメリットがかなり大きいでしょう。
また、システムにより、データを一元管理して、マッチングの機会を最大化できるのもポイントです。
営業力の向上に関しては、ある程度一個人の意識に依存してしまうことは先ほど説明した通りです。
このため、やる気のある人はマッチングの精度が高く、やる気のない人はマッチングの精度が低い、なんてこともあり得ます。
個人の力にサービスの質が依存してしまうのです。
これらを避け、常に高いクオリティを維持したマッチングができるのが、ポーターズのマッチングシステムでしょう。
自動で情報をインポート・エクスポートでき、絞り込みをかけることで、マッチング率を高め、各個人に依存しないかたちにできるのです。
職業紹介事業に不安を感じる方や課題を感じる方は、ぜひご検討ください。