スカウトメールは、人材紹介会社にとってメジャーな求職者集客の方法の一つです。近年は従来のスカウトサービスにとどまらず、LinkedInやTwitterなどSNS経由でのスカウトも増えています。

用意するのはテキストだけという気軽さと、求人とマッチする人材に直接アプローチできることが魅力のスカウトメールですが、返信率の低さに悩むエージェントも少なくありません。

本記事ではスカウトメールの平均返信率や開封率を上げるコツを、スカウトメールの例文とともに紹介します。

  • ポイント1
    スカウトメールの平均返信率と目標設計

    スカウトメールを送る際には、求職者との初回面談の設定数を最終目標として、行動の改善を行います。スカウトメールのKPI(重要業績評価指標:目標達成のプロセスの達成度合いを測る指標)として、以下があります。


     スカウトメールのKPI
    • ・スカウトメール送付数
    • ・開封率
    • ・返信率
    • ・返信から一次対応までの時間
    • ・一次対応からの応募率
       

    スカウトメール文面の改善を行い、開封率や返信率を高めるだけで成果が出るとは限りません。

    一定のスカウトメール送付数を確保する、返信をもらった後の一次対応を改善するなどの対応も目標達成のためには有効です。

    スカウトメールの平均返信率    

    ビジネスSNS『Wantedly』の調査によると、同サービス上のスカウトメール返信率の平均は20%ほどであることが分かりました。

    また、エンジニア向けスカウトサービス『LAPRAS SCOUT』では、返信率は16%から23%の間を推移しているようです。

    しかし、上記の数値はあくまでも目安です。人材獲得競争が激しい職種やポジションの求職者は、受け取った多くのスカウトメールの中から厳選して返信するため、返信率も低くなります。

    さらにWACUL TECHNOLOGY & MARKETING LABの調査では、「転職者の60%は就職/転職活動前から転職先の社名を知っていた」ことが分かっています。

    社名の認知度が高い大企業や人気企業の方が、知名度の低いBtoB企業や中小企業よりも返信率は上がりやすいでしょう。

  • ポイント2
    スカウトメールの開封率を高めるコツ

    スカウトメールの開封率を高めるには

    「誰に」
    「いつ」
    「どんな件名で」

    スカウトメールを送るかが大切です。下記で詳しいポイントを解説します。

    誰に:ターゲットが多く含まれるスカウトサービスを使う

    スカウトサービスには「若手層」「中堅層」「ハイクラス人材」「特定の職種」など、それぞれに得意な求職者の属性があります。応募がほしいターゲットの属性に合わせて適切なスカウトサービスを選定しましょう。

    また、求職者の転職意欲も開封率を左右するポイントです。

    中長期的に転職を検討している転職潜在層ではなく、今転職活動している転職顕在層にスカウトメールを打つことで開封率を高められます

    登録者自体は多いものの、実態はほとんどが転職潜在層を占めているスカウトサービスもあるため、全体の登録者数だけでは効果が出るのかを見極めることはできません。

    転職顕在層が多いスカウトサービスかどうかを見極めるために、直近1ヶ月でログイン履歴や、スカウトのメールの返信や開封を行っているアクティブユーザーの人数を確かめましょう。

    スカウトメールを送る際にも、直近で活動しているアクティブユーザーを中心に送るのがおすすめです。

    いつ:送るタイミングは仕事終わりや休日に近い時間

    スカウトメールを送るタイミングによっても開封率は変わります。

    『LAPRAS SCOUT』で曜日別に開封率を比較したところ、エンジニア向けのスカウトメールでは月曜日と金曜日で特に開封率が高くなることが分かっています。

    • ・休み明けの月曜日は「仕事に行きたくない」人が多く、転職意欲がわきやすい
    • ・金曜日は明日が休日のため自分のキャリアに目を向ける余裕が生まれやすい

    といった求職者心理が開封率に影響しているようです。

    また仕事中の午前~昼ごろに送ったスカウトメールは開封率が低く、仕事がもうすぐ終わる夕方に送ると開封率は高くなるとも言われています。

    職種によって適切な曜日や時間帯は異なりますが、原則として「求職者が仕事で余裕のない時間を避けて、仕事終わりや休日に近い時間に送る」ことを意識しましょう。

    また、「月曜日はネガティブ層が反応しそうな件名」「金曜日は土日の転職活動を促す件名」など、時間ごとの求職者心理に合わせて件名を変えることも有効です。

    どんな件名で:「自分のためのスカウトメール」という特別感を演出

    市場価値の高いスキルや経験を持つ求職者であれば、企業から多くのスカウトメールを受け取っている可能性が高いです。

    競合がひしめく中で、誰にでも当てはまるテンプレートの件名では相手の心を動かすことはできません。スカウトメールをラブレターに例える人もいるように、件名で「あなたのためのメールです」という特別感を演出するのが重要です。

    下記で件名を工夫する際に押さえたいポイントを紹介します。

    件名は求職者を主語にした内容を【例文付】

    求職者にスカウトメールを見てもらうためには、開封するメリットを提示しましょう。具体的には、ターゲットの希望する働き方やキャリアが実現できることを件名で示します。

    今のキャリアにどんな不満があるかを想像しながら、求職者の心を動かす件名を作りましょう。より具体的に書けば書くほど印象に残りやすく、開封率も高くなります。


     【NG例】

    • ・東証一部上場の安定企業!時短勤務OK・福利厚生充実
    • ・残業なし!プライベートも充実できる会社です
       
     

     【OK例】
    • ・仕事に追われて疲れているあなたへ。土日休み・残業なしIT企業でプライベートも充実
    • ・副業の前に、転職で年収アップを叶えませんか? 急成長中HRTech企業のバックエンドエンジニア
    • ・未経験からエンジニアへキャリアチェンジ!研修制度が整った企業で専門スキルを身につけよう
       
     

    件名は1メッセージに絞る【例文付】    

    スカウトメールの件名は、情報が多ければ良いわけではありません。

    求人の魅力をアピールしようと思うと情報を詰め込んでしまいがちですが、情報が多すぎると伝えたいことがぼやけ、かえって分かりにくい文章になってしまいます。

    不要な情報は省き、求職者に訴求したいメッセージを一つに絞って件名を作ることをおすすめします。
     

     【NG例】
    • ・成長中のIT企業!土日休みでフラットな職場|平均年収以上のオファーでプライベート充実!
    • ・年休125日!残業なしのアットホームな会社|福利厚生が整った環境でライフスタイルにあった働き方を実現しよう
       
     

     【OK例】
    • ・リモートOK・年休取得率100%!働きやすさ抜群の優良企業でエンジニアとして活躍しよう
    • ・職歴・学歴一切不問。未経験から活躍できる事務職
    • ・努力はしっかり給与に反映します。実力主義・完全出来高制の営業職
       

    数値や独自性を出す【例文付】

    「未経験でも活躍」「アットホーム」などの言葉は便利な一方、多くの求人やスカウトメールで使われるため「その会社ならでは」の魅力がイメージしづらくなってしまいます。

    「未経験社員の3年後定着率95%」「社員食堂でランチ会開催」など、数値や独自性の高い特色を件名に記載すると、アピールポイントに説得力が生まれやすくなります。
     

     【NG例】
    • ・女性活躍中!産休・育休制度あり、時短勤務可で子育てしながら働ける
    • ・成長中のベンチャー企業で年収アップ!
       
     

     【OK例】
    • ・託児所完備、男女合計で産休取得率90%以上!子育てと仕事を両立できる企業で受付業務をお任せします【東証一部】
    • ・8割の社員が転職半年後に年収アップを実現。平均月収30万円~メガベンチャーのwebアナリスト
    • ・独自休暇制度あり。休暇取得率95%!福利厚生充実の会社で営業として働きませんか
       
  • ポイント3
    スカウトメールの返信率を高める文面のポイント

    スカウトメールの件名で気をつけてほしい点として

    • ・求職者を主語にした内容を書く
    • ・内容は詰め込まず端的にする
    • ・具体的にイメージできるように数値や特徴を書く

    とお伝えしましたが、文面の内容で押さえておきたいポイントも同様になります。

    下記では返信率を高める文面の作成方法を例文とともにご紹介します。

    1to1の内容で特別感を出す【例文付】

    スカウトメールの文面も、「自分のためのスカウトメールだ」という特別感が重要です。「不特定多数に送っているのだろう」と思われるとかえって悪印象になってしまいます。

    個人宛に送られたメールだと感じられるように、

    • ・求職者の名前を記載する
    • ・スキルや経歴で評価しているポイントを伝えて、マッチング理由を明確にする
    • ・プロフィールに書かれているキャリアの希望に触れる

    といった内容を盛り込むと良いでしょう。
     


     【NG例】

     〇〇様

     お世話になっております。株式会社△△エージェントの××です。

      プロフィールで〇〇様のご経験を拝見し、ご連絡いたしました。

     

     【OK例】

     〇〇様

     はじめまして。株式会社△△エージェントの××です。

     プロフィールで〇〇様のご経験を拝見し、
     以下の点に特に魅力を感じてご連絡しました。

    • ・賃貸不動産領域の営業マネージャのご経験
    • ・営業企画部門にてシステムを活用した業務改善を行い、事業成長にコミットされたご経験

     

    会社紹介は端的に【例文付】    

    「スカウトメールの中で求人の内容や会社の魅力を余すところなく説明しよう」と考えがちですが、文面が長すぎても読まれず返信率が下がってしまいます。

    詳しい会社紹介は初回面談でゆっくりできるため、スカウトメールでは「もっと知りたい」と求職者の興味を引くための端的な会社紹介を意識しましょう。

    • ・事業内容
    • ・アピールポイント
    • ・募集背景
    • ・オファーしたいポジションや業務内容

    など、情報は最低限にとどめるのがおすすめです。

    どうしても詳細な情報を伝えたい場合は、企業の採用HPやオウンドメディアのリンクを一緒に記載するのも一手です。


     【NG例】

     〇〇様にはぜひ、不動産領域の業務改善ツールを提供する□□社の
     営業職の求人をご紹介したく思っています。

     <<□□社の特徴>>

    • ・平均年収600万円以上、実力があればスピード昇進も可
    • ・社員は20名の少数精鋭ベンチャー。裁量を持って働けます
    • ・リモートワーク可・完全週休2日制・フレックスタイム制(コアタイムあり)でライフワークバランスも充実
    • ・不動産業界でのシェアNo.1
       
     

     【OK例】

     〇〇様にはぜひ、不動産領域の業務改善ツールを提供する□□社の
     営業職の求人をご紹介したく思っています。

     ITサービスの営業にご興味をもっていらっしゃるとのことでしたが、
     □□社は今までの不動産営業の知見を活かしながら
     ITサービスの営業にも挑戦ができる環境が整っている企業です。

     営業チームに不動産業界の経験者がいないため、〇〇様にはぜひ
     過去のご経験をもとに営業チームの立ち上げを支え、
     チーム全体の成長を牽引してほしいと考えております。

      ▼採用HP
     https:// ~~~
     □□社のカルチャーや働き方などが分かりますので、お手隙の際にご覧ください。
     

     

    ネクストアクションを記載する【例文】

    スカウトメールを受け取った人が何をすれば良いか分かるように、ネクストアクションを記載します。その際には「カジュアル面談をしましょう」「ぜひお話を伺わせてください」といった文言ではなく、求職者が返信するメリットを感じる文面にすると良いでしょう。
     

     【NG例】

     もしもご興味を持っていただければ、ぜひ一度面談できればと思います。
     それでは〇〇様にお会いできることを楽しみにしております。

     

     【OK例】

     □□社の他にも、〇〇様の望むキャリアに合った求人を
     詳しく紹介させてください。
     エントリーいただいた後、私からお電話いたします。
     
     それでは〇〇様にお会いできることを楽しみにしております。

  • ポイント4
    スカウトメールから応募につなげるテクニック

    最後に、スカウトメールを配信後、早期応募につなげるテクニックを2つご紹介します。      

    2回目のスカウトメールを送る

    どうしても面談したいターゲットがいるのであれば、件名やメッセージを変えながら2通目のスカウトメールを送ることも一つの手です。何度も送ることで「本気で自分を求めてくれている会社なんだ」という熱意が伝わり、応募につながることもあります。

    一方で、初回と同じ内容で送信したり、応募意思がない人にアプローチを繰り返したりすると、かえって会社のイメージが悪くなることもあるので注意しましょう。

    例えば、1回目は保有求人の特徴を伝え、2回目のスカウトメールでは人材紹介会社を利用するメリットを紹介するなど見せ方を工夫すると良いでしょう。

    返信は原則1営業日以内

    スカウトメール経由で連絡をもらった後に重要なのが、初回面談を設定するまでの対応スピードです。求職者の求人に対する興味は日を経るごとになくなっていくため、対応が後手になると最終的な応募率が下がってしまいます。

    原則として、「連絡が来てから1営業日以上の間を空けずに返信」を心がけましょう。

    PORTERSを使った求職者対応改善の事例

    スカウトメールの返信率を組織的に改善するためには、システムを活用したKPIの進捗状況の可視化・モニタリングが肝心です。

    下記では新卒領域に特化した人材紹介サービスを提供する株式会社就活キャリアが、人材紹介に特化したクラウド型管理システム「PORTERS」を活用してスカウト業務を改善した事例を紹介します。

    PORTERSとは

    PORTERSとは、ポーターズ株式会社が提供している人材紹介に特化したクラウド型管理システムです。

    >>PORTERS Agentサービスページはこちら

    求人開拓や求職者獲得、マッチングや企業への推薦などといった、人材紹介にまつわる業務の進捗管理を行うとともに、煩雑な人材紹介業務を効率化する機能を持っています。現在1,500社を超える人材紹介・派遣企業が利用しています。

    株式会社就活キャリアのPORTERS活用事例はこちら

    元々他社のシステムで人材紹介の数値管理をしていた同社。しかし人材紹介に特化したシステムではなかったため、スカウト件数や書類推薦数などの中間KPIを計測できず、ボトルネックの把握がしづらい課題を抱えていました。

    PORTERS導入後は各CAのスカウトメール送付を含む業務量や、どの候補者にどんな求人を紹介しているかなどの現場に任せていたことが可視化され、業務改善がやりやすくなりました。

    さらにRPAも導入し、スカウトメール経由で応募があった学生のデータを管理システムから抽出してPORTERSにインポートするプロセスを自動化。工数を削減するとともに対応の抜け漏れがなくなり、求職者の初回面談数が向上しました。
     
  • ポイント5
    まとめ

    スカウトメールで成果を上げるには、自分のために書かれた特別感のある件名や文面が重要です。一方で初回面談の設定数を確保するには、送るタイミングや対応時間などのスカウトメールの内容以外の複数の要素も絡んできます。

    PORTERSを活用すると、スカウトメールの進捗状況や成果の可視化や改善スピードの向上とともに、業務の省力化が期待できます。

    人材紹介専門のマッチングシステムであるPORTERSのサービスサイトでは、PORTERSを導入した企業がどのように業務を効率化し、業績を拡大してきたかもご紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。



    >>PORTERS 導入事例はこちら

    ▽執筆者

    ナウビレッジ株式会社
    代表取締役 今村邦之

    ▽経歴

    25歳で人材紹介会社、株式会社UZUZを創業。デジタルマーケティングを軸に会社を成長させ、2020年に退職。
    同年10月に、ナウビレッジ株式会社を設立。創業3年で200社超のマーケティング支援の実績。
    東京医科歯科大学 非常勤講師、筑波大学 ヒューマンバイオロジー学位プログラム講師、iU 情報経営イノベーション専門職大学 バーチャル研究室 客員教授。
     
    【事業概要】
    デジタルマーケティングの業務代行、内製化支援

    創業3年で80社以上の人材紹介会社様のマーケティング支援を実施。
    求職者募集で結果を出してきた手法やノウハウを惜しみなく提供しております。

    ナウビレッジ株式会社:導入事例はこちら