今回は、人材紹介会社財務の観点から、適切な各勘定科目の比率と、
営業利益率を上げる方法について解説いたします。

  • ポイント1
    一般的な企業の勘定科目

    皆さまご承知の通り、企業が、主たる営業活動によって、商品やサービスを顧客に提供した際に得た金額のことを売上高と呼びます。

    一般的な企業の売上高は、 売上高=売上原価+人件費+広告費+その他販管費+営業利益 の5つの勘定科目で構成されています。

    ※売上原価:小売業、製造業、サービス業などの業種によって異なりますが、売れた商品の仕入れ原価や製造に直接的にかかった費用を指します。

    ※人件費:雇用において発生する様々な費用のことを指します。

    ※広告費:自社サービスを消費者に分かりやすく伝えるための費用を言います。

    新聞広告や雑誌、フリーペーパー、Web広告、ホームページ等が含まれます。

    ※その他販管費:日々の経営活動に必要な諸経費のことで、売上原価以外で営業活動に関連するコストを指します。

    ※営業利益:売上高から売上原価と販管費を差し引いたもので、企業の本業の成績を表します。

  • ポイント2
    人材紹介会社における勘定科目の特徴

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    人材紹介事業においては、メーカーとは異なり、無形サービスであるため、求職者と企業をマッチングさせた成果報酬が主な売上です。

    つまり、商品の仕入れや製造に直接的にかかった費用である売上原価が発生しません。

    そのため、人材紹介会社における売上高の主な勘定科目は、 売上高=人件費+広告費+その他販管費+営業利益 の4つで構成されます。

    以下では、人材紹介における人件費、広告費、その他販管費、営業利益の4つ勘定科目を順番にご説明していきます。

    1.人件費

    人材紹介会社の人件費は、主にCS(カスタマーサクセス)、CA(キャリアアドバイザー)、RA(リクルーティングアドバイザー)の3つのポジションで構成されます。

    企業規模にもよりますが、人材紹介会社の人件費率は50%を超えていることが一般的です。

    1人当たりの売上が高くなりやすい傾向にある少数精鋭の会社や、創業期の会社を除いて、安定期の会社がこの人件費率を50%以下に抑えることはかなり難しいです。

    2.その他販管費

    人材紹介会社におけるその他販管費は、主に家賃で構成されており、一般的に10%から15%が適正です。

    有料職業紹介事業の免許要件として、面談スペースと執務スペースについての規定があります。

    2017年5月の法律の改正により、20㎡以上面積を有しているという要件が撤廃され、シェアオフィスでの起業が可能にはなりましたが、ある程度の規模に成長した会社にとって、面談スペースと執務スペースに設ける必要があります。

    【必須要件】

    (1)職業紹介の適正な実施に必要な構造・設備(個室の設置、パーティション等での区分)を有すること。

    (2)他の求職者又は求人者と同室にならずに対面の職業紹介を行うことができるような措置(予約制、貸部屋の確保等)を講ずること。

    中長期的に上記の必須要件を満たし続けるためには、シェアオフィスで事業を行うのは現実的には難しいと考えられます。

    そのため人件費同様、抑える事がかなり難しい勘定科目と言えます。

    3.広告費

    人材紹介会社における広告費は、一般的に30%程度が適正です。

    そして主な広告費としては、創業期に導入した求職者データベース(RAN(リクルートエージェントリサーチ)やマイナビエージェントサーチなど)費用といったものがあります。

    一般的に求職者データベースの費用としては、初期費用+入社決定時の成果報酬型で構成されています。

    そのため、求職者データベースへの依存度が高いと、広告費の比率が大きくなるため、営業利益を圧迫するデメリットがあります。

  • ポイント3
    営業利益率をあげる方法

    人材紹介会社の経営においては、人件費や、その他販管費を削ることが構造的に、難しいため、営業利益の改善余地は広告費以外にほとんどありません

    そのため、営業利益率を上げるためには、限られた広告費の中で、いかに求職者からの応募を最大化できるかが重要です。

    広告費を減らす主な施策としては、indeed広告、アフィリエイト広告、リスティング広告があげられます。

    以下では各求職者募集施策について順に紹介していきます。

    1.indeed広告

    独自の求人を掲載できるだけでなく、他の求人サイト情報を集約しているアグリゲーションサイトで、求人情報に特化した検索エンジンです。

    Indeedへの掲載方法は、無料で掲載する方法(オーガニック求人)と有料で掲載する方法(スポンサー求人)があります。

    スポンサー求人を出稿する際は、キャンペーンという概念で、カテゴリーごとに広告予算/クリック単価などを適正化し出稿することができます。

    クリック単価はオークション制で決まるため、職種やエリアなどによって競合環境が異なります。

    予算を有効活用するためには、それぞれの状況にあった最適なキャンペーン分けが必須になります。

    また、広告掲載結果を定期的に分析し、出稿している求人の中で、クリックされているが、応募に至らない求人がある場合は、キャンペーンから外すなど、きめの細かい運用が成果を出すカギとなります。

    定期分析の頻度は、1か月ほどのタームで分析することをお勧めします。

    タームが短すぎると、サンプル数の少ない数値での判断となり、実態とかけ離れる可能性が高いためです。

    indeed広告のメリット

    ✓クリック課金型なので掲載時点では費用が一切かからない

    ✓求人アナリティクスからユーザー(求職者)の行動を把握できる

    ✓特定の求人への応募となるためキャリアアドバイザーのスキルが低くても成約に結びつきやすい

    indeed広告のデメリット

    ✓indeedのガイドラインに適応した求人情報にする必要がある

    ✓競合環境が激化しており、クリック単価が高騰傾向にある

    運用型広告なので、無駄なクリックを省き、応募率を上げるために求人ライティングを工夫するなど、地道な調整が必要になります。

    しかし、リアルタイムのデータから改善できるので、掲載課金型の求人媒体に比べるとPDCAが回しやすいと言えるでしょう。

    また、カカクコム社が運営する求人ボックス、元々ビズリーチ社をバックボーンに持つ「スタンバイ」など、indeed以外のアグリゲーションサイトにも注目が集まっています。

    2.アフィリエイト広告

    アフィリエイト広告の特徴は成果報酬型である点です。

    ASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)を通して、企業は広告を出稿し、サイト運営者は広告を設置します。

    サイトに訪問したユーザー(求職者)がクリックしてCV(申込/登録/面談)をした場合に広告費が発生します。

    ASPとは

    広告を掲載することでブログなどの媒体を収益化したいアフェリエイターと求職者獲得のために広告を出稿したい企業とをマッチングするプラットフォーム

    アフィリエイターはASPが提示する広告の中から、掲載したい広告を選んで自分のブログやWebサイトに掲載してリンクを貼ります。

    そして広告主は、アフィリエイターのサイトを経由してCVが発生した場合にのみ報酬を支払う仕組みです。

    多くのアフィリエイターに掲載してもらうためには、「自社の強み・お支払い条件」をまとめ、商材として扱うことに魅力を感じてもらう必要があります。

     また、アフィリエイト広告運用開始時期によって、承認ポイントや入札価格を変化させたり、アフィリエイターの実績に応じて、支払い体系を交渉していくことが、アフェリエイト戦略を攻略するカギとなります。

    アフェリエイト広告のメリット

    ✓成果報酬型の広告である

    ✓成果地点を自由に設定できる

    ✓承認設定により無効な応募を課金対象外にできる

    ✓少額での開始が可能

    ✓サイト運用の手間がない

    アフェリエイト広告のデメリット

    ✓ASPを利用するための初期費用・月額費用が10万円程度かかる

    ✓掲載件数に応じて成果報酬とASP手数料30%が上乗せされる

    ✓広告の掲載場所がコントロールしづらい

    3.リスティング広告

    リスティング広告はインターネット広告の一種で、検索連動型広告とも言われます。

    GoogleやYahoo!などの検索エンジンでユーザー(求職者)が検索したキーワードに関連した広告を検索結果画面に表示し、クリックされるごとに費用が発生するクリック課金型の広告です。

    リスティング広告は、広告の掲載順位によって、クリック率に大きな違いがあり、CVにも大きく影響するため、掲載順位を上げる工夫が必要不可欠です。

    広告の掲載順位は広告ランクで決定します。

    広告ランク=品質ランク×上限クリック単価+広告表示オプション で構成されており、特に品質ランクが広告ランクに寄与しています。

    そこで、広告ランクを上げるために抑えておくべきポイントとしては、

    ①キーワードと配信されている広告文との関連性が高いこと

    ②ユーザが検索したキーワードが広告文に含まれていること

    ③検索キーワードと内容の関連性が高いLPをリンク先に指定すること

    があげられます。

    また、広告ランクは、1回のクリックに対して発生した広告費の平均金額である「クリック単価」にも影響を与えます。

     クリック単価とは、「掲載順位が1つ下の競合相手のランクを上回るために最低限必要な金額」であり、オークション形式で決定します。

     広告ランクが高ければ、競合よりも安いクリック単価で上部への掲載が見込むことができます。

    リスティング広告のメリット

    ✓購買意欲の高い顕在層へリーチできる

    ✓キーワードごとに優先順位を付けてより効率的な予算配分が可能

    ✓競合他社が力を入れていないキーワードが発見できると安価に応募獲得ができる

    ✓ランディングページさえあればすぐに出稿ができる

    リスティング広告のデメリット

    ✓成果を最大化するには正しい効果測定が必要

    ✓キーワードによっては競合環境が厳しく応募単価が上昇する

    ✓求人への応募ではなく相談応募が多くなるためキャリアアドバイザーのスキルが必要

    リスティング広告は比較的簡単に始めることができ、見込み客の獲得や売上げなど、経営に直結するような指標に対して比較的短期間でアプローチできる媒体です。

    しかし、設定後一定の成果を出していくためには仕組みとユーザーニーズを理解し、 日々改善して運用し行くことが求められます。

  • ポイント4
    まとめ

    今回は、人材紹介会社を財務の観点から分析し、営業利益率をあげる方法についてご紹介しました。

    また、今回ご紹介した施策を実施するためには、求職者データベース、indeed、リスティング、アフィリエイトなど、各求職者募集チャネルでごとに成約コスト(1件の成約を獲得するためにかかったコスト)を算出し、比較することが必要不可欠です。

    もし、現在チャネルごとの成約単価が把握できていない場合は、「事業管理体制を整えること」が、より高い営業利益率を実現するための第一歩となります。

    そのうえで、成約コストを平均成約単価の1/3に以内におさまるよう、 より効果的なリソース投下を目指しましょう。

    本記事が、各勘定科目の理想的な比率を把握し、実現するための一助になれば幸いです。

    ▽執筆者

    ナウビレッジ株式会社
    代表取締役 今村 邦之

    2008年にアラバマ州立大学 マーケティング専攻 卒業。2012年株式会社UZUZを創業。

    2020年UZUZを退職し、ナウビレッジ株式会社を創業。デジタルマーケティングのコンサルティング及び業務代行を手掛ける。

    【事業概要】

    デジタルマーケティングのコンサルティング及び業務代行

    ナウビレッジ株式会社では、実績基づいた「真に効果のある」デジタルマーケティングを提供しております。

    結果を出してきた手法やノウハウを惜しみなく提供しております。

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