「人材紹介事業を立ち上げる企業が増えているけれど、儲かるのだろうか?」と、疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では人材紹介業の立ち上げを検討している方向けに、人材紹介と人材派遣の違いや人材紹介事業にかかる費用、利益率を上げる方法をお伝えします。

  • ポイント1
    人材紹介はどんな事業?

    まず、人材紹介事業とはどんな事業なのでしょうか。

    人材紹介事業とは、「人材が欲しい企業」と「雇用先を見つけたい求職者」のマッチングを行う事業です。人材紹介会社は、求人企業と求職者の仲介者として、互いのニーズを聞き出しながらコンサルティングを行います。

    企業と求職者の情報を精査した上でマッチングを行うので、企業・求職者ともに工数を削減しながら、より良いマッチングが期待できます。

    人材紹介事業のビジネスモデル

    人材紹介会社は企業からの相談を受けて、どんな人材を採用したいのかを聞き出し、採用ターゲットや募集条件を整理していきます。また、求職者からも経験やスキル・キャリアの希望を聞きながら企業と求職者がWin-Winになれるようにマッチングしていきます。

    人材紹介事業の売上は、主に成果報酬型の人材紹介手数料で成り立っています。手数料はエージェントによって異なりますが、大抵、求職者の理論年収(想定年収)の20~30%が相場と言われます。

    また、同時に複数人雇用する際でも、紹介手数料は雇用人数分支払われます。人材紹介事業の売上は、下記の式で求められます。
     


     人材紹介事業の売上=人材紹介成功者数×紹介手数料の平均額
     

    人材派遣事業との違い

    人材派遣事業では、派遣先企業が派遣会社と派遣契約を結び、派遣会社の求人サイトに派遣契約先企業の求人案件を掲載することで求職者の応募を集めます。

    人材派遣会社は求職者と雇用契約を結び、派遣先企業に派遣して労働力を提供します。

    人材紹介事業と人材派遣事業の大きな違いは、派遣先企業と派遣された労働者の間には直接的な「雇用関係」がないため、派遣先企業側では労働者の選別ができない点です。

    一方で派遣先企業と派遣労働者には指揮命令関係があり、業務の指示や労働時間の管理・指示が可能です。

    人材紹介と人材派遣では利益率が異なる

    また、人材紹介と人材派遣の間には利益構造の違いがあります。

    人材紹介はマッチングサービスを提供しているため、商品の仕入れや製造に直接的に関わった費用である売上原価が発生しません。

    上記を踏まえて、人材紹介事業の利益は以下の式で計算できます。
     

     人材紹介事業の利益=売上高-(人件費+広告費+その他販管費)
     

    一方で人材派遣事業は、労働者を派遣するサービスを提供しているため、売上原価の中に派遣労働者の賃金や社会保険などが売上原価として計上されます。
     

     人材派遣事業の利益=売上高-売上原価(派遣労働者の賃金+社会保険)-(人件費+広告費+その他販管費)
     

    一般社団法人日本人材派遣協会によると、人材派遣事業の売上の70%が派遣労働者の賃金として支払われているようです。

    上記のコスト・利益構造の違いから、一般的には人材紹介事業の方が利益率が高いと言われています。

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  • ポイント2
    人材紹介事業をするのにかかる費用は?

    「人材紹介事業はローコストで事業運営ができるため儲かりやすい」と言われることがあります。たしかにメーカーや人材派遣事業と比較すると、サービスやモノの実態がないため、事業運営に費用がかさみにくいように見えます。

    人材紹介の事業運営では具体的にどんな費用がかかるのか、イニシャルコストとランニングコスト(固定費と変動費)に分類して解説します。

    設立時にかかる費用(イニシャルコスト)

    人材紹介事業の立ち上げにかかる費用として下記があります。

    会社設立費用:10~25万円

    まずは、会社を登記するのにかかるお金です。株式会社か合同会社かによっても費用は変わります。

    • ・定款用収入印紙代:4万円
    • ・定款の認証手数料:0~5万円(会社形態や資本金の金額によって異なる)
    • ・定款の謄本手数料:0~2,000円(会社形態によって異なる)
    • ・登録免許税   :6~15万円(会社形態によって異なる)


    株式会社であれば定款用の収入印紙代や登録免許税を含めて25万円前後、合同会社であれば10万円前後かかります。

    職業紹介責任者講習会受講料:1万円

    人材紹介事業を立ち上げるには人材紹介免許の取得が必須条件ですが、申請前に少なくとも1名、講習受講経験のある職業紹介責任者を選定しなければいけません。

    職業紹介責任者講習会の受講費用には1万円前後かかります。

    免許取得申請に必要な費用:14万円~

    人材紹介免許取得申請にも費用がかかります。

    • ・印紙費用:5万円~
    • ・登録免許税:9万円

    資本金:500万円~

    会社を登記するには資本金が必要です。人材紹介免許の取得の際には資本金金額の規定があります。一般的には、500万円以上の資本金の用意が必要です。

    500万円のうち150万円が現金(もしくは銀行口座の預金)であれば、すべてが現金でなくとも問題ありません。

    人材紹介開業にかかる資金は、下記の記事でくわしく解説しています。
     


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    固定費(ランニングコスト)

    固定費とは、時期にかかわらず事業運営を行う中で恒常的にかかる費用です。具体的には、下記の費用が人材紹介事業でかかる固定費になります。

    事務所のオフィス代

    社員を何人雇うか、オフィスを構える場所によってもオフィス代は大きく変わります。

    社員の人件費

    人件費にはCA(個人営業担当)やRA(法人営業担当)などエージェント業を行う人員に加えて、会社・事業運営を支えるバックオフィス職種や専門職種の人件費も含まれます。

    求職者や企業への要望ヒアリングや期待値調整、交渉などの細かい調整はシステムで置き換えることは難しいため、人件費が一定金額かかります。

    一方でシステムによる業務効率化を進め、最低限の人数だけを雇いながら高い利益率を保つ企業も出てきています。

    変動費(ランニングコスト)   

    変動費とは、そのときどきによって変動する費用です。人材紹介事業の変動費の多くは、求職者集客や求人開拓のために使われています。

    求職者集客や求人開拓を外注して変動費化すると、経営状況が悪化してコストカットを行う際に簡単にコストを調整できるため、安定的な経営に繋がりやすくなります。

    求職者集客にかかる費用

    • ・サイト運営費用
    • ・スカウトサービス月額費用
    • ・広告運用費用

    求職者集客は企業の経営の命運をかけるため、自社の成功ルートを確立することが肝要です。くわしくは以下の記事で解説しています。
     

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    求人開拓にかかる費用

    • ・テレアポ代行費用
    • ・求人データベースサービス利用料
    • ・広告運営費用

    求人開拓のやり方は以下の記事で解説しています。


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  • ポイント3
    人材紹介事業の利益率は高い?

    「人材紹介事業の利益率は高い」と言われることがありますが、実態はどうなっているのでしょうか。

    人材紹介事業の売上

    上記でお伝えしたように、人材紹介の売上は下記で決まります。


     人材紹介事業の売上=人材紹介成功者数×紹介手数料の平均額
     

    中途採用では紹介手数料は100万円を超えることがほとんどです。紹介手数料の高さゆえに「人材紹介会社の利益率は高い」と言われています。

    しかし、人材紹介事業ならではのリスクもあります。エージェントの多くは成果報酬型のため、採用決定が生まれなければ売上は0円のままです。しかし求職者集客や求人開拓に苦労する中小エージェントの中には、1か月で決定人数を1人も出せないこともあります。

    組織が拡大し、求職者と求人の数が安定するまで、人材紹介業の売上の波は激しくなりやすいです。

    人件費率(労働分配率)

    1人の決定を出すにも、求職者集客や求人開拓にはじまり、採用・就職までのサポートに至るまで多くの人的コストがかかっています。利益率を考える際には、人的コストを適切に見積もらなければいけません。

    人件費率(労働分配率)とは、売上高から売上原価を引いた粗利益(※)のうち、人件費が占める割合を指します。

    ※粗利益とは、売上総利益から原価を引いたもの。

    エージェント一人当たりの売り上げが大きくなればなるほど人件費率は下がります。大手人材紹介会社の人件費率は50~60%ほどと言われていますが、少数精鋭で経営している企業の中には50%以下を実現しているところもあります。

    利益率

    (営業)利益率とは、売上高から売上原価と販管費を引いた営業利益が売上高に占める割合です。利益率が高いほど、効率よく儲けを生むことができています。

    一般的な人材紹介業の利益率は20%前後と言われています。不動産業・物品賃貸業の利益率は10.29%、宿泊業・飲食サービス業は5.19%、製造業は3.85%と言われています。他事業と比較すると、人材紹介の利益率は高いと言えそうです。

    (引用元:中小企業庁|「『中小業実態調査 令和元年確報』3.売上高及び営業費用(1)産業別・従業者規模別表」

    人材紹介事業は高い利益率を生み出すことができる一方、安定した基盤がないと業績の波が大きくなりやすい事業です。

  • ポイント4
    人材紹介業で利益率を上げるには

    人材紹介業で利益率を高めるには「売上を上げる」「コストを下げる」二つの方法があります。下記でエージェントが利益率を高めるための具体的なアクションを紹介します。

    RA ・CAのスキルを高める

    人材紹介業は人件費やオフィス代などの固定費が一定金額かかることは避けられません。利益を出すためにも「安定的に成約を出し続ける体制づくり」を構築しましょう。

    RA・CAのスキルによって売上は大きく変わるため、成約を安定して得るにはスキルの高い人材を揃えることが近道です。
     


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    ナレッジを共有してスキルを平準化する

    RA・CA一人で対応できる求職者・求人の数には限りがあるため、組織の人数を増やしながら売上拡大を目指すのが一般的です。

    全ての業務が得意なプロフェッショナルを採用できれば利益率も高まりますが、実態としては新人を一人前のRA・CAに育てることの方が多いでしょう。人材育成への投資が、中長期的な業績拡大につながります。

    新人の立ち上がりを早めるためにも、ベテランが持つスキルを資料の形に落として展開したり、テンプレート化したりして、RA・CA業務それぞれでナレッジを共有する仕組みを作りましょう。

    システムを導入して進捗を可視化、PDCAサイクルを早める

    人材紹介業を組織化する際の課題の一つに、各人の進捗が見えづらくなることがあります。そんな場合には「PORTERS」などの人材紹介業務を管理するシステムを導入することで、可視化するとともに進捗をモニタリングし、PDCAサイクルを早めることができるでしょう。



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    PORTERSとは、ポーターズ株式会社が提供している人材紹介に特化したクラウド型管理システムです。

    求人開拓や求職者獲得、マッチングや企業への推薦などといった、人材紹介にまつわる業務の進捗管理を行うとともに、煩雑な人材紹介業務を効率化する機能を持っています。現在1,500社を超える人材紹介・派遣企業が利用しています。


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    システムによって提携業務を省力化する

    人材紹介業の課題の一つに業務量の多さがあります。対応する案件が増えるごとに、求職者・求人案件情報の入力や求職者への日程調整メールなどの定型業務が発生し、工数を圧迫してしまいます。

    PORTERSには、求職者と求人企業のマッチング業務の効率を高めるための機能が備わっています。オートマッチング機能を利用すると、新着求人からワンクリックでマッチする求職者を絞り込み、対象者にメールでお仕事の打診を行うことができます。求職者からのマッチングも同様に可能です。

    応募承諾をもらい次第、職務経歴書を添付し、すぐに企業に推薦できます。推薦までのマッチング精度を上げながら、早期の推薦を実現します。

    マッチング機能について

    求職者・レジュメ管理機能について

    定型業務の自動化・省力化で、メンバー一人ひとりの生産性を高めることが業績拡大につながります。

    単価の高いハイレイヤーの案件に絞って求人開拓

    取り扱う求人のターゲットをマネージャレベルや経営人材などの高年収層に絞り込むことで、入社決定者一人当たりの紹介手数料を高めることができます。

    しかし、高年収求人は求められる人材要件も高いため、決定難度が高くなりがちです。なかなか採用決定ができず売上が上がらない事態に陥る可能性もあるため注意しましょう。

    求職者集客費用を抑える

    他社のスカウトサービスや広告を活用する代わりに、自社で集客して集客費用を抑えることで利益率を高められます。自社で集客する方法として、

    • ・過去に自社のキャリア面談を受けてくれた人にメールする
    • ・知人で転職を検討している人を紹介してもらう(リファラル)
    • ・LinkedInやTwitterでDMを送る


    などの方法があります。
     

  • ポイント5
    まとめ

    人材紹介業の利益率を高めるためには、人材への積極投資を行うことが重要です。PORTERSなどのシステムを導入して情報を一元化し、定型業務の省力化を進めることでメンバーの生産性を高められます。

    人材紹介専門のマッチングシステムであるPORTERSのサービスサイトでは、PORTERSを導入した企業がどのように業務を効率化し、業績を拡大してきたかもご紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。



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    ▽執筆者

    ナウビレッジ株式会社
    代表取締役 今村邦之

    ▽経歴

    25歳で人材紹介会社、株式会社UZUZを創業。デジタルマーケティングを軸に会社を成長させ、2020年に退職。
    同年10月に、ナウビレッジ株式会社を設立。創業3年で200社超のマーケティング支援の実績。
    東京医科歯科大学 非常勤講師、筑波大学 ヒューマンバイオロジー学位プログラム講師、iU 情報経営イノベーション専門職大学 バーチャル研究室 客員教授。
     
    【事業概要】
    デジタルマーケティングの業務代行、内製化支援

    創業3年で80社以上の人材紹介会社様のマーケティング支援を実施。
    求職者募集で結果を出してきた手法やノウハウを惜しみなく提供しております。

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